Netflixがゲームに参入! その意図と狙いを読み解く
Techable / 2021年12月1日 8時0分
映画やドラマのストリーミングサービス「Netflix」が、11月からゲームの世界に参入を始め話題を集めています。近年、Netflixは『全裸監督』や『イカゲーム』などのヒットを飛ばし、ビデオストリーミングサービスとしてのポジションをより強固にしている矢先の出来事です。
5本のモバイルタイトルでゲームに参入Netflixはアメリカのカリフォリニアに本社を置く、ビデオストリーミングサービスの会社です。世界190以上の国でサービスを展開しており、日本では2015年からサービスを展開。最近では、テレビのリモコンにNetflixのボタンが装備されるなど、国内でも認知度・利用者ともに拡大している状況です。
そんななか、Netflixが11月にゲームに参入しました。参入時点のゲームラインナップは、
ストレンジャー・シングス: 1984
ストレンジャー・シングス3: ザ・ゲーム
シューティング フープス
カードブラスト
ティーター
の5本。前者2タイトルは、文字どおりNetflixの人気ドラマ『ストレンジャー・シングス』をテーマにしたゲームで、後者3本はカジュアルゲームにジャンル分けされるゲームです。
対応プラットフォームはスマートフォンおよびタブレット。参入直後はAndroidのみ対応でしたが、11月11日にiPhoneやiPadのiOSデバイスへの対応を開始し、ほとんどのスマホやタブレットでプレイできる状態に。ゲーム自体はApp StoreやGoogle Playからダウンロード可能ですが、各ゲームをプレイするためにはNetflixのアカウントが必要となります。
ゲーム起動時にNetflixユーザーかどうかの認証を済ませさえすれば、いずれのゲームも無料で楽しめ、広告などの表示やゲーム内課金要素(アプリ内購入)もありません(いわゆるFree to Play形式)。
スマホゲームに詳しい方なら、「広告なしゲーム内課金なしだと収益確保ができないのでは?」と疑問を持つ方もいるでしょう。現在のスマホゲームは、こういった要素でゲーム運営側が収益を確保することで、基本プレイ無料を実現しているからです。
こうした展開を見ると、Netflixはゲームでの収益確保を考えていないように思えます。では、いったいゲームに参入する狙いはどこにあるのでしょうか?
いかにNetflixに居続けてもらうか?冒頭でも紹介したとおり、Netflixはオンラインビデオストリーミングサービスとして成長してきた会社。同社の発表によると、2021年第1四半期には400万人の新規加入者を獲得、総加入者数が2億760万人になったとしています。
新型コロナウイルスの影響でステイホームが全世界で一般化し、2020年同時期では1,577万人の純新規加入者数を獲得するなど好調が続いていましたが、同社が予測していた加入者数2億1,000万人には届きませんでした(2021年第3四半期にて2億1,356万人を達成)。
また、Disney+やAmazon Primeビデオなど、ビデオストリーミングサービスには強力なライバルが存在することも事実です。各社加入者獲得に向けてさまざまな工夫をしていますが、そのプラットフォームでしか見ることができないコンテンツがキーの1つであることは間違いありません。『全裸監督』や『イカゲーム』などのヒットを飛ばしてはいますが、新型コロナウイルスの影響で思うように撮影が進められないといった側面も。
そこで目をつけたのがゲームではないかと推測できます。ご存じのとおり、Netflixはサブスクリプション型のサービスです。ということは、いかに継続してもらうかが鍵となります。とはいえ、現在は映像に限らず、コンテンツがインターネット上に溢れかえっている状態で、いかにしてユーザーにNetflix上で時間を消費してもらうかを考えなくてはなりません。
全世界で人気を得ているコンテンツとゲームを掛け合わせることで、「Netflixにいる時間」を伸ばそうと考えるのは、ある種正しい発想なのかもしれません。現在は5タイトルにとどまってますが、今後『イカゲーム』をテーマにしたゲームなどが配信された場合、ゲームプレイはもちろん、「ドラマではどういう展開だったっけ?」とリピート視聴する人や、ゲームからドラマへ流れる層も期待できます。
これらのゲームが追加料金・ゲーム内課金なしでプレイできるのもプレイ参入のハードルを下げるための施策と見ていいでしょう。そういう意味では、今後はカジュアルゲームより強力なIPを活用したオリジナルゲームが増えてくることが予想されます。
ビデオストリーミングサービスの巨人Netflixがゲームへの舵切りを行ったことによって、ライバルたちの参入も続くのでしょうか? ゲーマーにとっては魅力的なタイトルが増えることは喜ばしいですが、どこでどのゲームをするのか? といううれしい悲鳴が聞こえてきそうです。
(文・辻英之)
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