理研、春先に食べられる温州みかん「春しずか」の品種開発に成功。変異誘発技術を活用
Techable / 2021年12月15日 7時0分
理化学研究所が、温州みかんの新品種の作出に成功したことを12月8日に発表しました。
仁科加速器科学研究センターの理研リングサイクロトロンから発生する「重イオンビーム」による変異誘発技術を活用し、3月から4月の春先に良質の果実が出荷できるよう品種改良されています。
「重イオンビーム」を活用した品種改良飛程の長いさまざまなイオンビームを扱う理研仁科加速器科学研究センターと温州みかんの育種技術のノウハウを持つ静岡県との共同開発により成功した品種開発です。品種の名前は「春しずか」。
静けさの中でゆっくりと熟成され、春の暖かい陽ざしの中で目覚めを迎えるイメージから命名され、理研と静岡県は6月に農林水産省へ品種登録出願、11月には出願公開されています。
原子から電子をはぎ取って作られたイオンのなかでヘリウムイオンより重いイオンを「重イオン」と呼び、これに加速器を用いて大量に加速したものが「重イオンビーム」です。
この「重イオンビーム」を用いた変異誘発法は日本発の独自技術。みかんのほかにも「海水の30%程度の塩分濃度の塩害水田でも育成可能なイネ」や「強風でも倒伏しないソバ」などの品種改良に成功しており、食料問題や環境問題の解決に貢献する高機能変異体の創出が期待されています。
収穫時期をずらして農家の負担軽減「春しずか」により解決を狙う課題は、生産農家の負担軽減と果実の品質向上です。
静岡県は国内有数の温州みかんの産地ですが、その大半は「青島温州」という品種。収穫・出荷の作業は12月中旬に集中し、生産農家にとっては大きな負担となっています。また、地球温暖化に起因する果実の品質低下も近年問題視されてきたといいます。
これを受けて開発された「春しずか」は、果実の色付きが遅いのが特徴。青島温州より1ヶ月程度収穫時期が遅れる品種となっており、生産農家の収穫労力の分散につながります。また、味の低下や腐敗の原因となる浮皮の発生が少ないため貯蔵性が高く、長期貯蔵も可能。マーケットニーズのある3月から4月に良質な果実が出荷できるようになります。
理化学研究所
(文・川合裕之)
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