純銅鋳物製造における熟練者の“暗黙知”を学習したAI、検証で実用化に期待できる結果を残す
Techable / 2022年3月14日 21時0分
三菱総研DCS株式会社(以下、DCS)と中島合金株式会社(以下、中島合金)は、2021年4月と12月の2度にわたり、純銅鋳造製造における熟練者の“暗黙知”を学習したAIによる実証実験を行いました。
そしてこのたび、AI予測値の妥当性や実業務への適合性などついて検証結果を公開しています。
技術の標準化が難しい純銅鋳造純銅鋳物にはCAC100番台のJIS規格が定められており、品質を一定水準にそろえなければなりません。一方で、原材料の状態や環境条件などすべてを制御するのは難しく、製造条件にばらつきが発生してしまうといいます。
中島合金は、この“製造条件のばらつき”を測定し、その値に応じて調整用の添加剤を適切量投入することで製品の最終品質を均一化する熟練技能を保有。しかし、この技術を継承するには、人伝いによる多くの手間と長い時間がかかるという課題がありました。
そこで両社は、「製造時のばらつき状態」と「添加剤の投入量」の関係を学習することで熟練者による添加剤投入量の判断を再現するAIを開発。実証実験に臨みました。
AI予測の採用率は93%同実験の第1回目(21年4月)では、純銅鋳造10回のなかでDCSがAIの予測処理を実施し、その妥当性を検証(熟練者による操作なし)。
第2回目(12月)では、純銅鋳造4回を対象にAIと熟練者が導出した添加剤投入量を比較し、熟練者がAI予測に問題なしと判断した場合にAIの予測値通りの添加剤を投入しました。
結果、AIの予測値は全14回の製造中13回で採用。いずれの回もJIS規格を達成するとともに、導電率の実現値と理想値の絶対誤差も熟練者と同等水準の結果になり、AI予測値の妥当性が確認されました。
また、予測処理の操作性と予測処理時間を主な検証ポイントとした“業務への適合性”に関しても、期待できる結果が出たようです。
AIの効果的な活用で技術継承を支援DCSは、「難しいAI操作を難しく感じさせない」をコンセプトに製品を開発中。
AIのオートチューニングアルゴリズムとUXデザインを駆使して、データサイエンスの知識がない現場技術者でも簡単に利用できる製品を目指しています。
今回は、純銅鋳造における添加剤投入量の調整を検証しましたが、「状態・状況に応じた製造条件の調整」が必要な製造過程はまだまだあるでしょう。今後は、さまざまな利用シーンに適用して事例を蓄積することで、製造業における技術継承を支援していく構えです。
PR TIMES
三菱総研DCS株式会社
(文・Higuchi)
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