国内最大級のリンクインバイオサービス「lit.link」 なぜ今海外進出するか
Techable / 2022年10月25日 12時0分
無料のリンクインバイオ(SNSやブログなど、複数のURLを1つにまとめるWebサービス)サービスである、プロフィール作成ツール「lit.link」を運営するTieUpsは2022年9月にlit.linkの英語版を公開しました。
今後の海外向けプロモーション等、海外展開について小原史啓CEO兼CDOにお話を伺いました。
lit.linkがZ世代女子に人気の理由——lit.linkのサービス内容を教えてください。
小原:lit.linkは、プロフィールを一つのページにまとめることができるサービスです。ボリュームゾーンは、Z世代と呼ばれる18歳前後の女性が中心で、lit.linkを通して集まったクリエイターとファンがつながるコミュニティプラットフォームをリリースしています。
——lit.linkは、どのような発想から誕生したのですか?
小原:当初はクリエイターに対するサービスを開発しようと思っていて、他社をリサーチしたところ「技術力よりも誰がそこに参加しているかが大事」ということが分かりました。であれば「まずはクリエーターが集まる場所を作ろう」ということになり、現在のような展開に至っています。
——lit.linkが日本で135万人のユーザーに利用され、その多くが若年層の女性だということですが、それはなぜでしょうか。
小原:lit.linkは、エディターとビューが一体型になったツールを使用して作成していて、公開画面をそのまま編集できます。若い世代のほとんどがスマートフォン上でアプリを操作することに慣れているので、その直感的な使いやすさを追求した結果だと思います。
また日本の若い女性は、小さな器の中に細かなものが入っている状態を「かわいい」と認識する傾向があります。缶の中にクッキーが詰まっているようなイメージでデザインした画面も、その世代の心に刺さったのだと思います。
SNSを集約するハブとして支持される——すでに多くのSNSが存在し、そこで自己表現ができると思いますが、ユーザーがあえてlit.linkを使う理由をどのように分析していますか。
小原:SNSが増えすぎたことで、情報整理ができなくなっています。SNSを一元化できるlit.linkは、SNSのハブのように利用されています。もう一つは、既存のSNSではタイムラインで情報が流れ去ることが挙げられます。lit.linkでは「多くの人に見てもらいたい内容は固定化しておきたい」というニーズに対応しているため、支持されているのでしょう。
——国内にリンクインバイオを提供する競合会社はどれくらいあるのですか。
小原:日本にリンクインバイオを提供する企業は約20社ありますが、中でも当社が提供するlit.linkは海外企業のサービスを抑えて単独首位を誇っています。
——なぜ他社を抑えてここまで成長できたのですか。
小原:確実な理由はありませんが、新規機能を最短2日後にリリースするといった、“ユーザーのニーズをプロダクトに反映する速度”が評価されていると考えています。
日本文化を象徴するコンテンツが外国人の関心を引いた——lit.linkの閲覧数のうち10%は海外によるものということですが、日本語版しか存在しない中で、なぜ海外からのアクセスが多いのでしょうか。
小原:これは私たちが仕掛けたわけではありません。日本のアニメやVTuberなどが海外で注目を集め、コンテンツを発信する中でlit.linkが活用されたことにより、外国人の登録者数が増えたのです。それを受けて「日本語版だけでこれだけニーズがあるのならば英語版も作ってみよう」という流れになりました。
——どの国からのアクセスが多いのですか?
小原:インドネシア、台湾が多く、あとはマレーシア、タイ、韓国などのアジア圏、そのあとにアメリカが続きます。
エンタメ大国・韓国に進出——今後、どの地域にフォーカスしようと考えていますか?
小原:アジア圏のトップクリエイターが集まっている韓国で展開していこうと考えています。
——韓国のクリエイターにユーザーになってもらうことで認知度を上げる戦略でしょうか。
小原:lit.linkは、ユーザーがページを公開すると、ファンや共感した人が集まり、さらにそれを見た人によってコミュニティが生まれる仕組みです。エンタメが盛んな韓国は、それが見込みやすいと考えています。
——マーケティング施策として、今後は何を実施する予定ですか。
小原:今回リリースする英語版は、英語圏だけでなく韓国ユーザーも内包しています。なぜ韓国に重点を置くかというと、韓国には「ファンダム」と呼ばれる特徴があるからです。
通常、アーティストがトップにいて、それに憧れるファンがいるわけですが、韓国にはファンがアーティストを育てる文化があります。広告媒体にアクションを起こすことよりも、ファンダムに沿った機能を開発することがマーケティングにつながると考えています。
韓国では、アーティストのクラウドファンディングが盛り上がっています。例えば日本だとCDを出す際にレコード会社が製作費を用意しなくてはなりませんが、韓国の場合は、ファンが製作費を集めて目標額に達成したらCDの制作に取り掛かるという流れがあります。
すでにアーティストを応援するプラットフォームやカルチャーがあるので、お金が集まることを促進する連携機能や、ファンとアーティストとクリエイターを繋げる機能を作っていくことがマーケティングに繋がると思っています。
初めての海外展開でゼロから構築していくのはリスクが伴うので、すでに基盤のある会社と私たちのネットワークを繋げていくことを戦略としています。
——韓国の次にターゲットにしている国はありますか。
小原:重点的に攻めたいのは人口が多いインドです。ただしクリエイターの属性の違いなどをリサーチしきれていないので、次の国については具体的な計画はありません。
——lit.linkはローカライゼーションの影響を受けずに海外進出ができそうだと思っていましたが、クリエイターを巻き込むことを重視しているので、ローカライゼーションや、ローカルパートナーと組むことが重要になるのでしょうか。
小原:ほかのサービスに比べると、現地法人を立てなくてはならないといった障壁はありませんが、アーティストとファンの関わりが国によって違うので、最適化は必要です。
「lit.link」における英語版と日本語版の違い——lit.linkの日本語版と英語版ではどのような機能の違いを設けていますか。
小原:グローバル目線で海外にニーズがありそうな機能を開発して英語版に取り入れました。今後は海外で評価された機能が日本語版に追加される流れになるでしょう。
——日本語仕様と異なる英語版をリリースすることで、これまでのファンが離れていく心配はありませんか。
小原:それはあるかもしれません。しかし、日本語を使うのは世界で3%程度なので、失うものよりもグローバル化で得られることの方が大きいと考えています。
——日本ではZ世代の女性ユーザーが中心ですが、海外でもその傾向は続くと思いますか。
小原:lit.linkは、日本ユーザーだけでなく海外ユーザーの目にも「かわいい」と映るように作り込まれています。今後もその路線で仕掛けていくことになるので、日本と同じ展開になると思います。
——流行のサイクルが早いZ世代のトレンドを、どのようにリサーチしているのでしょうか。
小原:彼女たちが好きなものを点で捉えるのではなく、「誰から情報を得ているのか」という情報の経路を押さえることでブレを最小限に留めることができます。
エンドユーザーは、カルチャーの最終消費に回っている人たちなので、それを追ってもすぐ消えてしまいます。日本のトップインフルエンサーが興味をもっていることは、海外のムーブメントが中心なので、情報を先読みして開発し終わった頃に日本でブームが起こる調査態勢を組んでいます。
<著者プロフィール>
小原史啓
TieUps株式会社 CEO兼CDO
1984年生まれ。横浜美術短期大学(現横浜美術大学)卒業。㈱ノジマに入社し、同子会社の責任者や店舗開発・アプリ開発などを担当し、㈱マクロミルでのリサーチとマーケティング経験を経て、株式会社SnSnap(現GENEROSITY)の1号社員として立ち上げと事業開発を行う。広告代理店とメディア事業で独立後、2020年にプロフィール作成ツール「lit.link」、カスタマイズSNS「WeClip」を開発・運営するTieUps株式会社を創業。
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