エグゼクティブ採用だからこそやってほしい、3つの情報「フィーリング」チェック/追跡!エグゼクティブ採用のいま&これから【第三回】
Techable / 2022年12月15日 17時0分
エグゼクティブ採用において、応募者は当然のことながら自社のコーポレートサイトや関連企業情報をご覧になられていると考えている方もいるはず。しかし、本当にそうでしょうか?
「見た」と言っても事業・商品・サービス紹介をチェックするほどで、応募者に確認・把握・すり合わせしてほしい情報については、案外、上の空でスルーされてしまっていることが多いです。
株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEOの井上和幸氏に、いま活況のエグゼクティブ採用について解説いただく連載「追跡!エグゼクティブ採用のいま&これから」。
第三回は、エグゼクティブ採用において確認すべき3つの「フィーリング」チェックについてご寄稿いただきました。
第一回はこちら
第二回はこちら
かつてに比べて、昨今、「ミッション(企業理念)」や「ビジョン(将来像)」、「バリュー(価値基準)」(MVV)について明確に定め、発信されている企業はかなり多くなりました。最近では「パーパス(自社の存在意義)」を定めている企業もあると思います。
特に注目の成長ベンチャーや、事業や商品・サービスに独自性を持つ既存企業などは、概ねこれらが非常にはっきりしています。せっかく定められているMVV、応募者はこれをどう思っているのでしょうか?
面接時にぜひとも必ず聞くようにしていただきたいのは、応募者自身が
◎理屈を超えて、直感的、感覚的に「いいな!」と思えるメッセージやキーフレーズ
があるか?どれがそれに当たるか?についてです。
本音で「とても共鳴する」「この感覚、好きだな」「まさに自分がこだわっていることと重なっている」というような感情を持てるものを応募者が持っているか否か。ここで一次選考通過の可否を決めてもよいくらい、大事な部分だと私は考えています。
転職時の意思決定においても、さらには入社後、色々と困難なことに直面した際に、これがあるかないかで、その人が頑張れるか、それとも折れてしまうかが決まると言っても過言ではないでしょう。
ポイント②応募者は、貴社の商品・サービスを愛せる人か?次に確認いただきたいのは、事業・商品・サービスについてです。
応募者は貴社の事業・商品・サービスページについてご覧になった上で選考に臨むでしょう。相応の志望度があるならば、他にも貴社が他のメディアやサイト上で紹介された関連情報にも目を通しているはずです。
ここでエグゼクティブ採用をする企業側としてヒアリングをお勧めするのが
◎入社する人間としてではなく、B2C企業ならユーザーとして、B2B企業なら取引先や関係者としての目線でご覧になって、当社が扱っているモノ・コトに触れ続ける自分を気持ちよく思い続けられそうかどうか
です。
自社の事業や商品・サービスが、「自分が好きで愛せるものが望ましい」派と、「必ずしも自分が好きで愛せるものである必要はない。そうでないほうがよい」派と、両派がいらっしゃいます。これはある面、哲学論争になるお題で、それぞれの派が持論を主張すれば平行線をたどるしかないテーマです。
しかし、エグゼクティブサーチに長らく携わってきて、エグゼクティブ各位の活躍・失敗を拝見してきた身としては、やはり自社の事業や商品・サービスを愛せなければ経営やマネジメントにコミットし切ることは難しく、成功させるための試行錯誤もアイデアも湧きにくいのが現実だと私は感じています。
ちなみにですが、貴社のコーポレートサイトの雰囲気、事業として運営しているサービスサイトや情報サイト、あるいは発信しているネット情報などを応募者が見て
◎サイトのデザインや構成などのテイストが、センス的に自分の好みや心地よさと合致しているか?
というのも、私は案外馬鹿にならない大事な要素だと思っています。
そもそも自分のセンスやフィーリングに合わないものに囲まれて仕事をするのは、気が乗らないですよね…。ただ、この部分は採用企業側として、応募者がどう感じているかはなかなか正しくつかみにくい部分ではあります。
それでも面接中に、率直にどう感じているかは聞いてみていただきたいと思います。
ポイント③応募者は、貴社のコミュニティの輪に溶け込めそうか?応募者の方々は、応募先企業の社長、経営陣のプロフィールについては興味津々でチェックされるものです。学歴、経歴、部署歴や関連メッセージ。「なるほど、こんなご出身か」「こんな組織体制なのだな」、皆さん、<会社情報>として彼らの掲載情報をご覧になられています。
面接では、これらに加えて社員紹介についても見たか、応募者に聞いてみましょう。企業によっては社員紹介は新卒採用情報のほうにだけ出されているところも少なくありませんが、それも見ているかで応募者の貴社に対するすり合わせ意欲が確認できます。
いわゆるカルチャーマッチ、組織風土への馴染み具合、人物タイプのしっくり度合いは、面接者の方々は無意識的にもおおよそ察するところがあると思います。
ここでぜひ、応募者自身に、
◎生理的に当社とフィーリングが合いそうだと感じますか?
と聞いてみてほしいのです。
応募者がこれまで身を置いてきたグループや組織と当社は、同質の集団だと感じるのか。あるいは全く異なるタイプの人たちだと感じるのか。
どう思うかもポイントですが、それ以上にこの質問に対してその応募者が語る言葉、説明の仕方で、その人が貴社にカルチャーマッチする人なのか、異なるのか、かなり明らかになることでしょう。
お互い出社したら日中顔を合わせるわけですから(例えリモートだったとしても、逆に、であればなおさら)、生理的にフィットするかどうかは応募者当人の業務生産性を数十%は左右する要因となり、さらには彼、彼女がエグゼクティブであることから、その方に管轄いただく組織の活力・生産性にも多大なる影響を与えることになります。
何をやるかと同じ程度に、誰とやるかは大事。「気の合う仲間」となりうる人材か否か、しっかり感じ、ご判断ください。
* * *
今回は貴社のコアな部分に対して応募者が感覚的、直感的にどう感じているか・貴社サイドはどう感じるかを確認いただきました。
せっかく採用した幹部が気持ちよく150%、200%の力を貴社で発揮してくれるために、こうしたセンスの部分での合致度、違和感のなさが非常に重要であることを認識いただき、その観点からもエグゼクティブ採用を進めていただければ幸いです。
<著者プロフィール>
井上和幸
株式会社 経営者JP
代表取締役社長・CEO
早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年より現・リクルートエグゼクティブエージェントに転職、マネージングディレクターに就任。2010年2月に株式会社 経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援など提供している。業界MVPを多数受賞。著書は『30代最後の転職を成功させる方法』他。「日本経済新聞」「プレジデント」「週刊ダイヤモンド」他メディア出演多数。
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