「攻め型」と「守り型」で違う!企業の「NO.2」採用で考えるべきこと/追跡!エグゼクティブ採用のいま&これから【第五回】
Techable / 2023年2月20日 17時30分
企業にとってNO.2の存在は非常に重要です。その存在が会社を大きく左右することも、しばしば。ではいったい、どのような人をNO.2として採用すべきなのでしょうか?
株式会社 経営者JP代表取締役社長・CEO井上和幸氏に、いま活況のエグゼクティブ採用について、日々の現場で起きていることから幹部人材市場での大きなトレンドまでを解説していただきます。
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第五回は「No.2の存在を採用するときのポイント・採用時に気を付けたいこと」についてご寄稿いただきました。
NO.2には「番頭、参謀型」タイプ(「守り型」NO.2)と「事業を統括・執行する幹部」タイプ(「攻め型」NO.2)があります。それぞれについての採用ポイント、採用時に気を付けたいことを見ていきましょう。
「守り型」NO.2の場合 NO.2の必須要件は「正しく“忖度(そんたく)”できる」コミュニケーション力正しく「忖度」できる力。
「番頭、参謀型」タイプのNO.2の要件はと聞かれて、私が真っ先に挙げたいのがこれです。
忖度というと、安倍政権時代のモリカケ問題(学校法人「森友学園」と「加計学園」をめぐる問題)の一件に端を発して以来、どうも「気を利かせて、先回りで対応や手配をすること」のような意味で多くの人たちの頭にパッと浮かぶようになってしまったように思えます。
下手をすると、会社のために改ざん・粉飾をするというような意味にも捉えられるようになりました。
しかし、 忖度の正しい意味は、「相手の心情を推し量る、慮ること」です。決して「何かおかしなことを配慮して行う」ことではありません。
優秀な「番頭、参謀型」は、現場、幹部、社長、それぞれに対して常に的確な忖度をします。そのことにより、トップにも現場にも適切な配慮を行って会話をし、あるときには上の意を下に、また、他のあるときには下の状況や思いを上に伝える通訳者の役割を果たします。
コミュニケーションの潤滑剤の要となるのが、NO.2という役割です。これをしっかり果たせる方が、NO.2として下からも上からも信頼され、番頭・参謀としての存在感、輝きを放ちます。こういうNO.2こそを、採用したいものです。
憎まれない「直言力」と、No.2に徹する性分、自覚、覚悟。優秀なNO.2は、ズバズバものを言います。しかし憎めないキャラ、これが重要です。
明朗快活、陰口を叩かない、裏表がない。何よりも、心の奥にはトップや他の社員たちに対して愛がある。
トップに対して、言いにくいことを、相手が受け止めやすいかたちで、ストレートに言える力。すなわち直言力も必須要件です。ただし、社長、オーナーが素直に聴けるセットアップができることが大前提でもあります。
NO.2には、2つのタイプが存在します。
自分は黒子・参謀が性分であるので、今後もずっとNO.2でよいのだというタイプ。一方で自分は本来はトップの器だ、いま、NO.2でいるのは、いずれ現トップに代わって自分が上に立つときのためだというタイプ。
どちらのタイプもありですし、それぞれのタイプで古今東西ご活躍されたNO.2は多く存在します。
しかし、中長期的にNO.2である自分自身と、トップがお互い良好な関係が続くのは、前者のタイプのみです。
後者のタイプは、タッグを組んだ当初は機能することもあるのですが、早晩、お互いの我がぶつかり、表面化するか否かは置いておいても、経営チームとしては充分に機能しなくなります。
上のメッセージが「ツー・ボイス」になってしまったり、経営陣同士が陰で「アイツは」などという話を幹部や現場にしたりするようになります。
こういうNO.2を自分の参謀に据えてしまった社長は、思うような経営はできません。パフォーマンスが低いまま任期を終えるか、在任中にパフォーマンスを落として失脚します。
そこで、蹴落とした側のNO.2が「しめしめ」となるかと言いますとそうはなりません。なぜなら、この手のNO.2は実体としては人望がないからです。そのため、蹴落とした側のNO.2がトップの椅子に座ったとして、あいにくと充分に機能することが少ないのです。
優れたNO.2は、「自分は生涯、参謀・黒子でよい。」と本音で思っていること。ここはNO.2採用においては、選考プロセス中、時間を掛けてじっくり本音を確認したいところです。
「攻め型」のNO.2の場合 夢・ビジョンのCEOと現実・合理のCOO、はホントか?まず「番頭、参謀型」タイプのNO.2について着目してみました。こちらは「守り型」のNO.2でした。対してここからは、トップの下で事業を統括・執行する「攻め型」NO.2について紐解いてみたいと思います。
トップの下で事業を統括・執行するNO.2としては、COO、事業部長、あるいはこれらを兼ねる副社長・専務・取締役などが考えられます。
CFOは一般的には管理部門を統括する「守り型」ですが、主幹が戦略や資金調達、M&Aなどの「攻め型」タイプも存在しますので、この攻め型CFOについても見てみます。
そもそも、CEOとCOOの違いは何か?CEOは「構想を描く人」とCOOは「執行を統括する人」。概ねこんな回答が一般的で、それが正解と思われているかと思います。
ではCEOは執行しないのかと言われれば、現実的にはCEOこそが意気揚々となって執行しているという企業は少なくありません。COOが本来の機能を果たしていないということかもしれませんが…。
「CEO」「COO」という執行役職が日本企業にも多く使われるようになり始めた頃(90年代に入ってでしょうか)は、それまで「社長」「副社長」だったものが「社長 兼 CEO」と「副社長 兼 COO」などと肩書き変更や追加されました。その結果、社長と副社長の役割が明確化された感がありました。
その後、複数事業のグループ会社を多数抱える企業がホールディングス化することが増えるのと並行して、「会長 兼 CEO」「社長 兼 COO」というフォーメーションが多く見られるようになりました。
私は個人的には、こちらの「会長 兼 CEO」+「社長 兼 COO」の組み合わせのほうが、実質的な役割分担のしっくり具合いを感じます。
「会長 兼 CEO」がグループ全体の方向付け・戦略責任を負い、「社長 兼 COO」は中核の事業本社の統括・執行責任を担う。「会長 兼 CEO」が新規事業やグローバルを管轄し、「社長 兼 COO」は国内現行事業を推進する。そのような役割分担が、当社クライアントなどを見ても、多く見られます。
CEOとCOOの機能を分けるとすれば、本質的には「時間軸」だと私は捉えています。
「明日の、未来の我が社のあるべき姿を構想し、そのための布石を打つ」というのがCEOで、「現行の事業を成功に導き、収益を上げ、事業成長させる」というのがCOOとなります。
この「時間軸的視野の違い」が、結果として「いまの当社事業」をどの「広さ」で捉え動かすかの差にもつながります。社長やオーナーが、時折No.2以下の社員からしたら突拍子もないことを言い出したり行ったりするのは、見ている時間軸が異なるからなのです。
つまり、社長やオーナーが、突拍子なことを行ったり、言い出したりするのは、いまは現行のことをやっていればよいが、先々を考えると、こんな布石を打っておいたほうがよいと、トップならではの嗅覚で考え、行動しているからなのです。
先々を見る、妄想もするのがCEOで、今日の現実にロックインしているのがCOOです。だからCEOは夢・ビジョンドリブンで、COOは現実・合理主義者だと言われるのでしょう。これはある面、役割がしっかり機能していることの表れでもあるのです。
社長と事業部長は、何が違うのか?このことから、社長と事業部長の違いも、自ずと明らかになります。
事業部長も「事業単位の一国一城」です。となれば、事業部においては社長・CEOなのではないか?と考えることができます。
しかし、上記に照らし合わせて、CEOとCOOの役割分担を見れば、事業部長も「事業部のいま」にロックインし現行の事業を執行し成功・成長させることがミッションだということになります。
ここで皆さんは、カンパニー制、ホールディングス化の意味を、合点がいくかたちで理解されるのではないかと思います。
もし「事業部長に、中長期的な観点から事業執行して欲しい」と考え、その役割を事業部長に負わせたいなら、カンパニー制、あるいはホールディングス傘下で事業単位で分社化し、事業部長をCEOにするべきなのです。
逆に、社長(CEO)が、「当社はCEOである自分の構想の元、描かれた方向性に基づき、各事業はそれぞれ現行の執行をしっかりやって欲しい」となれば、カンパニー制や分社化・ホールディングス化にするべきではなく、ワンカンパニー内に事業部を設置するかたちを堅持するべきでしょう。
このようなかたちでCEO、COO、事業部長の役割を明確化した上での、全社・事業部の運営のされ方を見た上で、貴社はどのようなフォーメーションとなっているでしょうか?
あるいは現在、転職を検討されている方がこの記事を読んでいらっしゃる場合は、転職候補先の企業の経営体制・事業の置かれ方はどのようになっていますか?
それは、あなたが望む経営役割のかたちと合致しているでしょうか?
攻め型CFOはありなのか?「攻め型」タイプのCFOは、主幹が戦略や資金調達、M&Aなどに強みを持つので、「経営に物言う」方が多いです。
CEOが描き、決め、実行に移すべき経営の大局的なところについて、攻め型CFO自身も発案し実行したいという欲求を持ちます。
場合によってはCEOとの抗争・禍根の種が撒かれます。それをCFOもCEOも自覚していないことも少なくないですが、職務の領空侵犯となるのです。
このときは、CEOが、ある面のCEO的役割を攻め型CFOに渡す・依存するという前提をしっかり持てているか否かが非常に大事です。そうでないと、お互い優秀な経営陣でありながら、自分の思い通りにしたい二人が内部で争い合う構図になる訳です。
攻め型CFOだけでなく、COOや事業部長においても一緒でしょう。
機能・役割としては、これまで述べてきた通りですが、だからCOOや事業部長はいまのことだけ考え執行していればよいという訳ではありません。逆に概ねの社長、CEOは、自社のCOOや事業部長にも「CEOと同じ」未来のスコープを期待していることが多いでしょう。
ですから、役割定義としては今回見てきたような振り分けとなるけれども、我が社はそれでOKなのか。あるいは違う役割・ミッションをお互いに定義付けたいのか。これをはっきりさせることが、非常に大事です。
「現行の事業を伸ばす、極める」ことと「見えていない未来を見て、他の誰も取れないリスクを取る」ことの二つが、成長して永続する経営には必須です。
CEOがやるべきこと、COO、CFOがなすべきことが、一般的な職務定義的に、あるいは自社特有のスタイルかで、明確になっており役割分担されているか?
理想は、本来機能のCEO/COO/CFO/事業部長キャラ分けと役割分担がされることですが、それ以上に大事なことは、経営チームとして必要なCEO/COO/CFO/事業部長機能が、肩書きとはズレていても、誰かが幾つかを兼ねていても、全カバーされていることです。
マネジメントチームの話ではありませんが、例えば野球チームも、9名の揃え方はそれぞれですよね。
4番でピッチャーが主軸のチームもあれば、守備は下手だが打撃力で打ち勝つチーム、打点は少ないが鉄壁の守備で守りきるチーム、手本のように1番から9番までのキャラクターが揃っているチーム。それぞれの個性に合わせて選手がラインナップされます。
そういう意味では、御社のマネジメントチームにおいては、誰が何番打者で守備位置はどこタイプなのか?
経営メンバーそれぞれが、お互いのスタイル確認をしておくことが、自分が自分らしく経営参画できる決め手となります。そしてNO.2採用、あるいはそれ以外の取締役・執行役員の採用における、採用成功の鍵となるのです。
ちなみに、創業経営者は、やはり「4番でピッチャー、監督兼任」が多いですね(笑)。
もしあなたが、そのような会社に在籍されている、あるいはこれから参画するとしたら、自分のポジションはどこになるでしょうか?オーナー会社で幹部が上手くやるための、必須の確認事項です。
いずれにしても、自社がどのような役割分担を経営陣においてしているのか、しっかり棚卸しとコンセンサス作りをした上で経営幹部採用に望むことが肝要です。
<著者プロフィール>
井上和幸
株式会社 経営者JP
代表取締役社長・CEO
早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年より現・リクルートエグゼクティブエージェントに転職、マネージングディレクターに就任。2010年2月に株式会社 経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援など提供している。業界MVPを多数受賞。著書は『30代最後の転職を成功させる方法』他。「日本経済新聞」「プレジデント」「週刊ダイヤモンド」他メディア出演多数。
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