2.6億円調達の「SmartESG」運営企業CEOが語るESG情報開示支援ビジネスの可能性。企業の負担はどう軽減できるのか
Techable / 2023年3月8日 18時30分
本記事は、シェルパ・アンド・カンパニー株式会社(以下、シェルパ・アンド・カンパニー)代表取締役CEOである杉本淳氏による寄稿記事です。
グローバル・ブレインら5VCから資金調達を実施私たち、シェルパ・アンド・カンパニーは、2022年5月にESG情報開示支援クラウド「SmartESG」の提供を開始し、シードラウンドで6,000万円の資金調達を実施して以降、日本におけるESG情報開示支援クラウドのフロントランナーとして事業を拡大してきました。
同年11月の正式版リリース以降、導入企業の時価総額合計は約15兆円を超え、急激な成長を続けています。
その中で得られた確かな市場ニーズの取り込みと、新たな挑戦を行うべく、本ラウンドにおいて総額2.6億円を調達しました。今回の調達により累計調達額は3.2億円に到達しています。
引受先は、グローバル・ブレイン、グローバル・ブレインが運営する農林中金イノベーション投資事業有限責任組合、ジェネシア・ベンチャーズ、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタルの5社となります。
今後は、人事系のデータなどこれまで収集が難しかった非財務情報を集計・分析する機能や、AI・機械学習を用いたESG評価を向上させる技術開発への投資を加速するとともに、サービス拡大のための人材採用を強化していきます。
ESG情報開示が必要になっている背景では、なぜここまでESGというのが注目されているのでしょうか。ここではESGが必要になっている背景について説明したいと思います。
現在、未曾有の危機に瀕する地球環境や、COVID-19が浮き彫りにした格差・人権問題は、今日の企業・ステークホルダー・個々人のあり方に大きな影響を与えています。
これらの地球規模の問題を解決し、社会経済システムを持続可能にするために、サステナビリティの推進が共通命題となり、具体的な17の目標としてSDGsが定められました。
SDGsは世界全体の目標であり、主体は国連や国家、企業から各個人まで広範に及びますが、その中でも投資家や企業を主体としたSDGs達成の取り組みの一つとしてESGが存在します。
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を合わせた言葉で、2006年に国連が発表した責任投資原則(PRI)により広まりました。
ESGには「環境や社会、企業統治に注力する企業ほど中長期的に企業価値が向上する。」という考えが根底にあります。
このような言葉が生まれた背景として、企業や投資家が中長期的な価値向上を目指すにあたって、事業が環境や社会に与える影響や、環境や社会の変化により事業が影響を受ける可能性を無視できなくなっていることが挙げられます。
「ESG経営」へのシフトはグローバルで急速に進んでおり、日本企業にも変化が期待されています。
株主を中心とする主要なステークホルダーにESG情報を開示し、中長期目線で経済的・社会的価値の統合・実証に取り組むことで、企業はESG経営のメリットを最大限享受することが可能になります。
ESGへ取り組む企業の現状と課題ESG経営へのシフトを推進するために、多くの企業でサステナビリティ部門の新設などの取り組みが進んでいます。
企業はこれまで決算書などの書類を通じて財務情報の開示を行ってきましたが、ESG・非財務情報は統合報告書やサステナビリティレポート上での開示が必要とされています。
これらの情報開示を適切に行うにあたって、社内に蓄積されたESG・非財務情報を正確に把握・分析し、効果的な施策と改善を行うことが求められています。
しかし、環境データや人事データ、ガバナンスに関連する非財務情報は様々な部署に散在しており、またESG評価機関への対応の負担やスコアリングのブラックボックス化により、ESG情報開示やESGスコア向上のための取り組み全般に対して負担を感じている企業が多く存在します。
当社は、ESG情報開示支援クラウド「SmartESG」によって、企業のESG経営のベストプラクティスの確立を目指し、経済価値・社会価値の創造とサステナブルなビジネスの両立を実現します。
「SmartESG」でESGデータを効率的に管理・改善「SmartESG」は、社内のESGデータを一元化し、企業のサステナビリティ活動の分析と改善を可能にするクラウドサービスです。
「SmartESGワークフロー」によって外部評価機関や取引先から寄せられる情報開示依頼やアンケート回答作業を大幅に効率化し、社内に点在するESGデータを「SmartESGデータベース」に集約します。
また、集約したESGデータを「SmartESGマトリクス」により、各評価機関・開示基準が求めるESG主要項目毎にマッピングし、共通度合いや重要度を明らかにします。
その上で、「SmartESGベンチマーク」によりベンチマーク企業の独自スコアリングと開示ベストプラクティスの特定を行い、導入企業様の市場からのESG評価の向上を促します。
SmartESG導入企業からは、
「ESG情報開示の作業全体にかかる工数の50%程度の削減効果が見込まれています。またAIベンチマーク機能により、他社が市場から評価されているESG情報開示のベストプラクティスを瞬時に把握することができるので、自社の情報開示の向上に非常に役立っていると感じます。」
といった声が集まっています。
VCの当社への期待は?VCは当社のようなビジネスに対してどのような期待を抱いているのでしょうか。SmartESGについて、グローバル・ブレイン ジェネラルパートナーの立岡恵介氏は、以下のようにコメントしています。
「企業経営におけるESGの重要性が急速に高まる中、複雑化・サイロ化する企業の対応を助けるテクノロジーが不足しています。今後も世界が持続可能な社会の実現を目指す限り、信頼できるESGデータとテクノロジーを必要とする企業がますます増えることは容易に想像のつくことでしょう。
SmartESGは、最適化されたワークフロー、一元化されたESGデータ、AIを用いた洞察の提供を通じて、ESG経営を通じた企業の価値創出を支援することができます。未来の企業経営に不可欠なサービスとなって、持続可能な社会を支えるインフラの一つになることを期待しています。」
今後は技術投資に加え、「ESG AI Labo」の立ち上げによるR&Dも強化今後は、人事系のデータなど各子会社や地域ごとに異なるデータベースに散在していて収集が難しかったESGデータを子会社や地域などのバウンダリ毎に集計する機能や、ESG情報の分析を可能にするダッシュボードの開発を行っていきます。
これらの開発を通して、上場企業のサステナビリティ部門に留まらない全社ベースでの利用や、日本法人の海外支社、また現地法人における活用を目指します。
また当社では中長期的なR&D強化にも着手しており、このたび「SmartESG AI Labo」の立ち上げも発表しました。
より専門性・技術力の高いAIエンジニアやESGコンサルタントが集うAIラボで、AI・機械学習をベースとしたより高度な技術開発を行い、その中で得たESGインサイトを「SmartESG」を通じて提供していく予定です。
<著者プロフィール>
杉本淳
シェルパ・アンド・カンパニー株式会社
代表取締役 CEO
慶応義塾大学卒業後、証券会社の投資銀行部門で国内外の大型M&A・資金調達案件や、IR・コーポレートガバナンス周りでのアドバイザリー業務に従事。2019年9月にシェルパ・アンド・カンパニーを創業。
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