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「タンパク質危機」をカイコで解決なるか、信大発スタートアップMorusが研究開発を加速

Techable / 2023年5月29日 6時0分

近い将来、タンパク質の需要と供給のバランスが崩れる日がくるかもしれない―。世界的な社会課題ともいえる「タンパク質危機」の解決に挑戦するスタートアップが研究開発を加速させています。

信州大学発のスタートアップ企業Morus株式会社(以下、Morus)は、日本の経済的発展を支えてきたカイコのバイオ原料の供給と研究開発を行うベンチャー企業。同社は今年5月、PreAラウンドで約2億円の資金調達を実施。出資したのは、既存投資家のANRI株式会社を含む7社です。

新規投資家として、株式会社 DG Daiwa Ventures、SMBCベンチャーキャピタル株式会社、八十二キャピタル株式会社、信金キャピタル株式会社および株式会社グロービスが参画。これら6社を引受先とした第三者割当増資と、日本政策金融公庫を借入先としたデットファイナンス(借り入れによる資金調達)が行われました。

カイコの品種改良・量産で「タンパク質危機」の解決へ

Morusによれば、カイコは他の昆虫にない豊富な栄養成分を多く持ち、原料としての可能性に満ちているといいます。同社ではそんなカイコを品種改良し、量産することによって複数産業へ原料として供給。これにより「タンパク質危機」などの世界的課題を解決することを目的に創業されました。

なお今回調達した資金は、事業の本格的なグローバル展開およびチーム体制の拡大のほか、分子生物学・栄養学の研究開発の深化、量産プラント開発に投じられるそうです。

数少ない完全家畜化された昆虫「カイコ」の魅力

同社によれば、カイコは人類の長い歴史を通じ家畜化された昆虫であり、逃げない・共食いをしないなど量産に適した性質を備えているといいます。同時に、昆虫のなかでも長く研究が行われてきたため、今後も研究開発を円滑に進めやすく、日本発の素材で世界的な健康課題も解決しうる、可能性に満ちた昆虫だと伝えています。

パウダー化して機能性成分や食用などの原材料に加工

Morusでは、量産したカイコをパウダー化し、機能性成分や食用など各用途に向けた原材料に加工します。カイコは飼育が容易かつ、桑の葉だけで成長することから、低コストかつ低環境負荷での大量生産が可能であることを見込んでいます。

ゲノム編集技術を使ったカイコ開発も実施

また同社では、近未来に向けた基礎研究として、ゲノム編集技術(※)などを活用した新規系統カイコの研究開発も実施。この技術を活用し、宇宙空間での育成に適したカイコなど、各産業別に利用目的に応じた形質を備えた新規系統のカイコを作出することを目標としています。

同社は信州大学とタッグを組み、食品・飼料・宇宙など各産業界とも連携をしていくとのこと。今後ますます、日本発の素材であるカイコが世界のタンパク質危機の解決に向けて実用化されることに期待が高まります。

※ゲノム編集技術は、狙った遺伝子を意図的に変化させることにより、品種改良のスピードを速め、従来では困難であった品種を開発できるものとして期待されている育種技術の一つです。
出典:農林水産省Webサイト・農林水産技術会議(https://www.affrc.maff.go.jp/docs/anzenka/genom_editting.htm)

参考元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000091970.html

公式サイト:https://morus.jp/jp

(文・S.Inosita)

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