ファーウェイ、“通話の丸聞こえ”を防ぐイヤホン内蔵型スマートウォッチなど新製品3種発表
Techable / 2023年5月30日 15時0分
中国メーカーのファーウェイが、スマートウォッチ3機種を一挙に発表しました。5月26日に発売されたのが最上位モデルの「HUAWEI WATCH Ultimate」。また、6月14日には管理医療機器として認証を取得した血圧測定機能内蔵の「HUAWEI WATCH D ウェアラブル血圧計」も登場します。
この2機種に加え、同社ではクラウドファンディングで先行発売していたイヤホン内蔵型のスマートウォッチ「HUAWEI WATCH Buds」の一般販売を5月24日に開始しました。
HUAWEI WATCH Ultimateは、同社のラインナップの最上位モデルに位置づけられるスマートウォッチ。一言で言えば、「Apple Watch Ultra」に対抗した高耐久モデルです。
防水仕様は、水深約100メートルに対応しており、スイミングだけでなく、ダイビング時の記録測定が可能。ボディには、摩擦や腐食に強いジルコニウムベースのリキッドメタルが採用されており、高級感があります。
いわゆるダイバーズウォッチのスマートウォッチ版と言えるHUAWEI WATCH Ultimateですが、同社製品の特長である長時間駆動などは健在。通常使用であれば、約14日間駆動するため、毎日のように充電する必要がありません。
しかも、急速充電に対応しており、充電はわずか60分で完了します。iPhone、Androidに両対応しており、それぞれの端末の通知も受けられます。価格は13万5080円と高価ですが、それに見合うだけの性能があるモデルと言えるでしょう。
2つ目に挙げてHUAWEI WATCH Dは、その名の通り、血圧計として利用できるスマートウォッチ。バンド部分に腕を圧迫するためのカフが搭載されています。
見た目は普通のスマートウォッチと変わらず、一般的な血圧計と比べるとかなりのコンパクトサイズなため、血圧が正確に測れるのか……という疑問もあるかもしれませんが、同モデルは安定性を補うためにAIを使用。安定したデータを取れるよう、姿勢をサポートするような機能も搭載されています。
スマートウォッチで測定できるデータの中には、正確性が担保されておらず、あくまで参考値にしかならないものもありますが、HUAWEI WATCH Dは冒頭で述べたように、管理医療機器に認定されているため、その点も安心です。
普段使いでき、持ち運びも容易な血圧計としては優れた端末と言えるでしょう。カフがあるためバンドはやや太めですが、デザインは一般的なスマートウォッチと比べてもそん色がありません。
3機種目のHUAWEI WATCH Budsは、スマートウォッチの文字盤の下にワイヤレスイヤホンを収納している変わり種のモデル。
シンプルにギミックとしておもしろいだけでなく、スマートウォッチとワイヤレスイヤホンを別々に管理する必要がなくなるため、忘れ物の心配が減るのがメリットです。充電をまとめてできるのも、一体にしたからこその利便性と言えるでしょう。
また、スマートフォンにかかってきた着信をHUAWEI WATCH Budsで受け、そのまま本体を開きイヤホンを装着すれば、電話に出ることができます。
Bluetoothでの通話はスマートウォッチの一般的な機能ですが、スピーカーフォンになってしまうため、周囲に通話の内容が丸聞こえになってしまうのが難点でした。
HUAWEI WATCH Budsは、イヤホンを内蔵することで、こうした課題を解決したモデル。単にインパクトがあるギミックなだけでなく、ユースケースもきちんと考えて抜かれている点が評価できます。
ファーウェイは、「オールシナリオ」を戦略に掲げ、旅行、ビジネス、健康管理、エンターテイメント、スマートホームといったジャンルをカバーできる製品群を多数投入しています。こうした製品を開発するための研究開発拠点も設立。
例えばスポーツ&ヘルスケアの分野では、39億円を投資し、「HUAWEI Health lab」を建設したうえで、100を超える医療機関との共同研究を行っています。
サウンドについても同様で、日本には音響技術を研究するための拠点である「東京オーディオラボ」が設立されています。
元々は通信技術に優れ、4Gや5Gなどのインフラなどを展開してきたファーウェイですが、その分野を大きく広げつつあると言えるでしょう。研究に膨大な投資を行い、その結果としての製品を展開するという意味で、その技術戦略は一貫しています。
一方で、同社のコンシューマー向け事業が主力にしていたスマートフォンは、日本で見る機会がほぼなくなってしまいました。19年に米国からの対イラン制裁が発動し、それが依然として解除されていないからです。
Androidの要であるグーグルのサービスが使用できなくなったことに加え、半導体の輸出制限もかかり、5Gへの対応も難しくなってしまいました。
ファーウェイも対抗策として、独自のOSやプラットフォームを立ち上げていますが、やはりグーグルのサービスが利用できないとなると、販売は簡単ではありません。結果として、中国以外の国や地域では苦戦を強いられ、スマートフォン市場では同社のシェアが急落しています。
こうした中、生き残りの一手として、ファーウェイはスマートウォッチやワイヤレスイヤホン、Wi-Fiルーターなどの製品を拡充しています。リソースをスマートフォンから周辺分野に振り分けなおしたというわけです。
日本市場でも、その成果は徐々に出ています。調査会社MM総研が5月に発表したスマートウォッチの市場調査では、22年度(22年4月から23年3月)にファーウェイは2位につけています。
これは、アップルに次ぐ2位のポジション。廉価なリストバンド型の製品も含まれた結果ではありますが、スマートウォッチのメーカーとしてもユーザーにもしっかり受け入れられていることがうかがえます。
新製品の発表会では業務管理などを行う法人市場にも乗り出すことが表明されており、この分野での存在感はさらに高くなりそうです。
(文・石野純也)
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