Bose元従業員が創業したOzlo社、睡眠用イヤホン「Ozlo Sleepbuds」のクラファン成功で注目
Techable / 2024年2月29日 18時0分
かつて音響機器メーカーBoseから販売され人気を博した睡眠用イヤホン「Sleepbuds」。Sleepbuds IIの販売終了以来、後継機の登場を心待ちにしていた世界中のファンに昨年朗報が届いた。3人の元Bose社員が設立したスタートアップOzlo社が「Ozlo Sleepbuds」を開発したのだ。
Ozlo社のSleepbudsは商標取得済み(BoseのSleepbudsはTMマーク)で、Bose社から買収・ライセンス供与された睡眠関連技術を活用したもの。Ozlo Sleepbudsは実質Sleepbuds IIIということになる。昨年Kickstarterで実施されたクラウドファンディングプロジェクトは1か月で5,747人の支援者と2億円以上の資金獲得という大成功を収め、「Project We Love」のバッジを獲得している。
従来のSleepbudsの機能がさらに洗練された次世代睡眠用イヤホンBose時代からすでにイノベーションの結晶だったこの製品に、Ozloは三大機能「自由な音声ストリーム・バイオメトリックセンサー・スマートケース」を追加し、さらなる進化を果たした。
Ozlo Sleepbudsには当然ノイズマスキング技術を搭載。波の音などの眠りを誘うさまざまなマスキング音が用意されていて、科学的根拠に基づき熟睡を確約してくれる。イヤホン先端には従来どおりアンブレラ形状を採用。物理的に雑音をブロックしつつマスキング音を流すことで、隣で眠る誰かのいびきや救急車のサイレン、爆音バイクといった睡眠の妨げとなる騒音をシャットアウトして朝まで安眠できる。
以前のSleepbudsとは異なり、マスキング音以外に“なんでも”好きな音声を流せるのがうれしいところ。音楽、映画、ポッドキャスト、オーディオブック、ASMRなど好きに選べる。しかも、こうした音声が朝まで流れっぱなしということもない。バイオメトリックセンサーが入眠を感知すると、ストリーミング中の音声を停止するか、サウンドマスキングモードに移行するのだ。ポッドキャストやオーディオブックなどのコンテンツを眠る前にどこまで聞いたか確認する必要もない。
イヤホンのバッテリーはマスキング音を一晩中流した場合で10時間持続。専用ケースで4回分充電できるので、電源がない場所でも数泊なら使用可能だ。
この充電ケースは、周囲の環境を検知する“スマートケース”へと進化したものである。充電中にセンサーが部屋の騒音や明るさ、温度を検知。これらの情報をもとに、睡眠に関するレポートとフィードバックが翌朝アプリで提供される。さらに、起床時間になると自分だけに聞こえるアラームが鳴るため、隣で誰かまだ寝ていても起こさずに済む。
Ozlo Sleepbudsは一般的なイヤホンとは違い、耳にしっかりとフィットして寝返りをうっても外れない設計になっている。一晩中付けていたら耳が痛くならないか不安に思う人もいるかもしれないが、同製品は「快適さ」が鍵で細部にもこだわったもの。柔らかいシリコン製で耳への圧迫感もない。
紆余曲折あったニッチ製品を元Bose社員がスタートアップで復活させるSleepbudsはBose時代からいろいろあった製品だ。2018年に日本で販売開始された初代モデルは、電源周りのトラブルが多発。解決できないまま約1年後の2019年10月に販売終了および購入者への全額返金が発表されるという悲しい結末を迎えた。
翌2020年には音響・電子回路の設計を見直し、ノイズマスキング性能を向上させた後継機「Sleepbuds II」が発売される。熱心なファンを獲得したが、約2年という短期間で他のニッチ製品(Bose Framesなど)とともに販売終了となってしまう。世界中のファンが「Sleepbuds III」を待ち望むなか、BoseではなくOzlo社が後継機を開発したという流れである。
Ozloの創業者3人は全員が元Bose社員で、Sleepbudsの開発に携わっていた張本人たちだ。担当製品が廃版になってしまったので、やりたいことを続けるために大企業を出て起業したのだろうと予想できる。同社の使命は、医薬品の介入やそれに伴う副作用なく充実した睡眠を実現し、目覚めの良さと精神的・肉体的健康を目指すこと。オーディオを通じて、より良い睡眠を実現するための製品開発に情熱を燃やしている。
CEOのN.B. Patil氏は、2000年にファームウェアエンジニアとしてBose社に入社。在職中は初のBluetoothステレオヘッドホンBose Connect AppやBose Framesなど数多くの製品を市場に送り出し、38件以上の特許を取得した。CPOのCharles Taylor氏は、Bose社で新規事業ライセンシングの責任者を務めた人物。複数のソフトウェア製品の開発・発売を成功に導き、コンセプト作りから市場への導入までを監督した。ソフトウェア開発戦略の専門家であると同時に、経験豊富な起業家でもある。
COOのBrian Mulcahey氏は30年以上の経験を持つベテラン経営者。IPO前のスタートアップからフォーチュン100企業まで、世界的なテクノロジー企業で成長と実績を上げてきた。 Bose社の「Bose Health」部門を立ち上げ、睡眠関連事業を拡大成長させた中心人物として睡眠技術の分野での5件を含む多数の特許を取得している。
日本でもBose時代のファンから注目を集めているOzlo Sleepbuds。INDIEGOGOでは現在も3万5千円ほどから購入可能だが、残念ながら配送先はアメリカ・イギリス・オーストラリア・ヨーロッパに限られている。日本を含むアジア圏で入手可能となるのはいつになるのか、今後の展開に期待したい。
(文・根岸志乃)
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