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害虫の「天敵」を放して駆除。化学薬品不使用で作物収穫を支援するBioBee社のサステナブルな取り組み

Techable / 2024年2月24日 14時0分

農作物の栽培で生産者を悩ませているのが“害虫”だ。とくにハダニ類やアブラムシ類などは、多くの作物に被害をもたらす存在として知られている。

害虫対策の代表的な方法として化学薬品の散布があげられるが、環境汚染問題や人体への悪影響といった懸念点も。

そこで昨今、農業関連の産業では、化学薬品に頼るこれまでの手法に代わる“自然で持続可能な農業”に向けた動きが加速している。たとえば、害虫の天敵を放して、害虫を捕食してもらうといった方法だ。

こうした機運のなか、イスラエル発のアグリテック企業BioBeeは、生物学的害虫駆除のための環境に優しいソリューションを提供。過酷な化学薬品の使用を削減し、農家が化学残留物のない高品質の果物、野菜、花を栽培できるように支援している。

昆虫研究からアグリテック企業へ

BioBeeは1983年、有機農業への取り組みで知られるイスラエル北部のキブツ・スデ・エリヤフで設立された企業。

イスラエルの有機農業の創始者である故Mario Levy氏の「農業の問題の解決策は自然のなかにある」との考えにもとづき、独学で昆虫学を学んだYaakov Nakash氏が防空壕で昆虫を研究をはじめ、Akiva Falk氏とともに会社の設立に乗り出した。

わずか5人の従業員でスタートした同社は、現在では300人以上の従業員を抱えるまでに成長。

BioBeeは現在、生物学的根拠にもとづく総合的害虫管理、自然受粉、メバエ駆除の分野で世界有数の国際企業として知られる。

農薬不使用。「益虫」による害虫駆除

BioBeeの主な事業は「生物学的害虫駆除」と「自然受粉」などだ。

生物学的害虫駆除は、自然で化学薬品を使用せずに、害虫を捕食する「益虫」を活用したソリューション。捕食性ダニ、寄生蜂、捕食性昆虫などの幅広い益虫を生産者へ提供し、害虫の繁殖を防ぐという。

同ソリューションによって、生産者は化学残留物のない高品質な果物、野菜、花を多く収量できるほか、利益をアップさせることが可能だ。

駆除の対象となる害虫はアブラムシやダニ、ゾウムシなどさまざま。

なかでもヨーロッパ、中東、アフリカに生息する「地中海ミバエ」は、何百もの熱帯の果物や野菜に寄生し、深刻な劣化と経済的損失を引き起こす存在として、多くの農家を悩ませている。

そこでBioBeeは、滅菌昆虫技術(SIT)を使用して不妊雄の繁殖を実施。不妊の雄と生殖能力のある雌の間で交配しても生存可能な子孫は生まれないため、徐々に地中海ミバエの個体数を抑制できるという。

優れた“花粉媒介者”のマルハナバチを飼育

一方、自然受粉の事業は、トマト、ピーマン、ナス、カボチャ、イチゴなどの温室野菜 やリンゴ、ナシ、サクランボ、ブルーベリーなどの露地農園を含む多数の農作物の受粉用に「セイヨウオオマルハナバチ」を飼育するという施策だ。

マルハナバチはミツバチのように蜂蜜を蓄えないため、毎日採集する習性がある。雨や曇り、寒さのなかでもミツバチの4倍の速さで活動し、より多くの花を訪れるという。さらにミツバチの2倍大きく、毛羽立っているため、花を訪れるたびに効果的な受粉を起こせる。

マルハナバチを活用することで、生産者は農産物の品質向上、 収量の増加 、通年の受粉、密閉された場所と開いた場所での受粉などが期待できる。

“持続可能な農業”の高まる需要で存在感を発揮

BioBeeの顧客は主に、害虫管理と受粉に対する持続可能で効果的なソリューションを求める農家や農業関連企業だ。現在、同社の製品は世界50か国以上で使用されている。

今後、国際社会が従来の農法が環境に与える影響について認識を深めるにつれ、持続可能な有機農業ソリューションへの需要が高まることが予想される。

またイスラエルは食糧不足の中で農業の革新を培ってきた国だ。2022年4月に発表されているイスラエル大使館の情報によれば、先進的な研究、起業家精神にあふれた農家や技術者、そして政府の支援により同国のアグリテック部門が生まれ、今ではグローバル志向の企業が500社以上も存在しているという。

BioBeeは単なるアグリテック企業にとどまらず、持続可能な農業のパイオニアとして今後も重要な役目を果たしていくのではないだろうか。

参考・引用元:BioBee 公式サイト

(文・HAYASAKA)

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