まるで人間?会話に合わせて表情を作る、ChatGPT搭載のヒューマノイド「Mark X」が切り開く“ロボットの新時代”
Techable / 2024年3月13日 20時0分
ロボットが人間に代わってデータ入力や社内のヘルプデスクをしてくれたり、週末のショッピングモールや博物館では顧客を誘導・案内してくれたり…そんな時代が近づきつつある。カナダを拠点とするMark Roboticsは、AI搭載の多用途ロボット「Mark X」をクラウドファンディングサイトのKickstarterにて発表した。
同ロボットは音声会話機能を備えており、会話の内容に反応してさまざまな表情を示すことが可能。ショッピングモール、博物館、相談センター、教育、ビジネス活動、製品紹介など、さまざまな用途に合わせて特定の指示やコンテンツを直接入力できる。
表情豊かな“会話できる”人型ロボットMark Xは豊かな表情に加え、文字入力なしのシームレスな音声会話やコーディングなどのさまざまな機能を搭載したロボットである。平面的なデバイスとは異なり、本物の人間そっくりの立体的なデザインが施されたヒューマノイドであり、対話中に多様な表情を見せるといった、“人間的”な一面を備えているのが大きな特徴だ。
表情はAIによって作られており、ユーザーは音声で表情やコマンドをコントロール(騒がしい環境では胸部のタッチスクリーンから直接コマンドを発行)するほか、独自の表現を作成することが可能。
また、ChatGPTに接続できるため、幅広いトピックに関する会話を可能とし、ユーザーにさまざまなインスピレーションをもたらしてくれる。
たとえばMark Xにジョークを言ったり、物語を共有したり、科学をはじめ特定のトピックについて話し合ったり…といった体験ができる。ユーザーはロボットと日常会話を楽しみながら知識を得たり、日常の難問を解決したりできるだろう。
現在、Mark Xでは英語、北京語、広東語の3つの言語オプションを用意。開発が進むにつれて、今後さらに多くの言語が組み込まれる予定だという。
※AI機能を利用するには、国際インターネットに接続できる必要がある
多様な用途に合わせて、特定の指示を入力可能先述のとおり、Mark Xは用途に合わせた特定の指示やコンテンツを直接入力できるのだ。
この「コーディングプログラム」はJavaScript、Python、Blockyなどのさまざまなプログラミング言語とシームレスに連携する包括的なソフトウェア。ユーザーはコーディングプログラムを通じて、独自のロボットを開発するのに役立つさまざまなプラグインが利用できる。
フロント業務のルーティンタスクを自動化それでは、Mark Xの活用例をいくつか紹介していこう。
1つ目は企業やホテル、施設のフロント業務だ。Mark Xはコンテンツやブリーフィング(簡単な説明)をカスタマイズし、毎日繰り返される問い合わせに対応。“ルーティンタスクの自動化”によりフロントスタッフの作業負担を軽減し、フロントサービスの効率を高める。
データ入力をサポートするため、担当者が手動でテキスト入力する作業は不要に。さらに、Mark Xが直接顧客と関わることで、顧客はロボットと触れ合う楽しさを体験でき、企業・顧客双方にメリットがある。
たとえばショッピングモールでは商品やプロモーション、サービスの詳細を提供。博物館では開館時間、チケット価格、今後のイベントに関する情報を提供することで、来場者をサポートする。
さらに、言語処理機能によって来場者と多言語でコミュニケーションをとれるため、国籍を問わずさまざまな人が施設を利用しやすくなるだろう。
高齢者の「孤独感」「孤立感」を和らげる2つ目の活用例には、高齢者支援があげられる。
Mark Xは会話をしたり、物語を語ったり、ゲームをしたりすることでコンパニオンシップ(交友、親交)を提供することが可能。これが高齢者に多いとされる「孤独感」「孤立感」を和らげるのに役立つという。
さらに、語学の家庭教師として機能したり、高齢者の精力的な活動を維持するための教育コンテンツを提供したりすることも可能。個人の特定のニーズや好みに合わせてパーソナライズすることまで可能だ。
ロボット開発のきっかけは、日本の漫画Mark Xの開発者は、香港のロボットアーティスト兼デザイナーのRicky Ma氏。彼は日本の漫画「プラレス3四郎」に触発され、ロボットを作るという夢を志すようになったという。
Ricky Ma氏は幼少期から両親に同行し、香港の工業生産ラインに足を運び、手作業からコンピュータによる機械生産への移行を目の当たりにした。この経験は、彼にさまざまな制作技術やスキルの概念を植え付けるものとなる。
その後、Ricky Ma氏は「ロボットが人とコミュニケーションをとり、日常生活を補助する姿を見たい」という子どもの頃からの夢をかなえるべく、ロボットの研究をしながらデザインの仕事と勉強を並行して行った。
そして2016年に、18か月の歳月をかけて女性型のロボット「Mark 1 Robot」を完成させ、世界中のさまざまな報道機関から注目を集めた。2023年には新たな制作手順で構造や衣装などを改良し「Mark 2」を完成させ、今年には新モデルとなるMark Xを発表した。
ビジネス・個人ユーザー向けのヒューマノイド一般的にシミュレートされたヒューマノイドは、企業や大学、または民間機関が所有しており、何年にもわたって数億ドルを超える投資が行われている。コストが高いため、一般ユーザーがこの分野に参入する余裕はなさそうだ。
一方、Mark Roboticsはビジネス市場と個人市場の両方でバランスを取ることを目指している。Mark Xを導入することで、企業も個人も簡単に探索・学習できるようになり、収益性の高い市場開拓への道が開かれるだろう。
デジタルな存在であるAIが物理的なロボットへと移行する“新時代”の備えとなりえるMark X。今後も目が離せない。
参考・引用元:Kickstarter
(文・Haruka Isobe)
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