イスラエル発「MyOr」、AIアルゴリズム活用で乳幼児の食物アレルギーを早期予防
Techable / 2024年4月5日 20時0分
食物アレルギーへの関心は世界中で年々高まっている。米国の市場調査レポートプロバイダーFuture Market Insights社(FMI)によると、食物アレルギー関連の世界市場は2023年に398億3000万ドルと評価された。今後CAGR5.2%で成長し、2033年には661億5000万ドルに達すると予測されている。
FMIによると食物アレルギー有症率は成人で4%であるのに対し、5歳未満の幼児では8%。この傾向は日本でも同様で、厚生労働省によると全年齢で1~2%の食物アレルギー有症率が乳児に限定すると10%にまで到達するという。こうした数値からも、乳幼児の時点でのリスク早期発見が肝であり、またビジネスチャンスでもあることは明らかだろう。
食物アレルギー関連市場の拡大に伴って、業界に参入する新興企業も増加。その中の1社が、イスラエルのスタートアップ「MyOr」だ。乳幼児の食物アレルギー“治療”ではなく、アレルギーの発症そのものを未然に防ぐことを目指すサービスを展開する。
乳幼児のアレルギー発生防止を目指すサービス「MyorCare」MyOr社によると、アレルギー発症は皮膚から始まるという。体の保護膜である皮膚にアレルゲンが侵入すると、表皮常在菌のバランスが崩れ免疫システムが損なわれる。その結果、赤ちゃんは食物アレルギーを発症してしまうのだ。
現代の医療においては、アレルギー症状を治療・抑制することはできても、完治はできない。そこで、MyOrは独自のテクノロジーを用いて乳幼児のアレルギー発生を未然に防ぐソリューションにたどりついた。それが、同社の開発した「MyorCare」だ。
MyorCareは、世界で初めて有効性が臨床的に認められた食物アレルギー予測アルゴリズム。先天的な皮膚機能不全を測定し、ユーザーが入力したデータと合わせて、AIアルゴリズムを用いてアレルギーリスクのある新生児を特定する。また、保護者に対しては食事療法士から正確で分かりやすい情報とガイドラインを提示し、皮膚バリア回復製品やアレルゲンを適切に把握した食品情報を提供する。これが、MyorCare独自の「プロテクションプラン」である。
利用法は簡単、安全性も国際基準MyorCareの利用方法はいたって簡単で、公式サイトでは3ステップで紹介されている。
まず保護者は、無料の簡単なアンケートにウェブで回答して子供の状況に関する情報を伝える。すると、同社のアルゴリズムがその乳幼児に食物アレルギー発症リスクがあるかどうか特定。リスクがあった場合、結果について相談の場を持てるようにユーザーと専門家を結び付ける。赤ちゃんそれぞれにカスタマイズされたリスクレポートが作成され、子供の健康維持や緩和対策に役立てることができるという仕組みだ。
MyorCareはFDAやTGA(オーストラリア保健省薬品・医薬品行政局)などの認証があるほか、GDPR(EU一般データ保護規則)にも準拠しているため、健康面でも情報セキュリティの面でも安全なサービスが受けられるようになっている。
MyOrのミッション「受動的から能動的ヘルスケアへ」MyOr社は、2018年にイスラエル・テルアビブで設立されたデジタルヘルステック企業。科学的根拠を第一とする同社は、AIテクノロジーのほか人体生理学、疾病病因学、医療機器、大規模疫学、臨床栄養学の専門家で構成された学際的なチームを誇る。これによって、病気リスクを効果的に軽減するための実用的な洞察が可能となるのだ。
CEO兼共同設立者のAriel Katz医師は同社の公式YouTubeチャンネル動画で起業背景についてこう語っている。「現状のヘルスケアシステムは疾病の“対処”に集中しすぎで、予防について注意関心を向けるのが非常に困難です」
また、CTO兼共同設立者のMichael Brandwein博士によると、「現代の子供たちは25%がアレルギーまたは皮膚炎を発症する。この数字は過去数十年間で三倍になりました」とのこと。今後、同社のソリューションをヨーロッパ各地およびアメリカで展開することで、人口全体のアレルギー有症率がすぐにでも低下するとしている。
リアクティブ(受動的)ヘルスケアからプロアクティブ(能動的)ヘルスケアに移行することで、ヘルスケア革命をリードし、発症の大幅な減少をミッションとして掲げるMyOr社。高度なAIテクノロジーを駆使して疾病を予測し、予測から発症までのギャップを効果的に埋める。そして、高精度の栄養学的介入により健康状態を最適化し、個人が積極的に健康を管理し、より健康的な生活を送れることを目指すという。
同社によると、子供のアレルギーはほとんどの場合家庭で起こるという。我が子の健やかな成長を願う親にとっては、間違いなく回避したい事態だろう。「食物アレルギー発症を未然に防ぐ」という新たな切り口でヘルスケア業界を改革する先駆者MyOrの取り組みに今後も要注目だ。
引用元:MyOr
(文・Mika Ito)
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