ガーナの「中間業者問題」解決に取り組むサプライチェーン改良スタートアップAgrocenta
Techable / 2024年4月8日 18時0分
西アフリカは世界有数の農業地帯である。しかし、それは必ずしも現地の農家が“豊か”であることを意味しない。
日本でもよく知られているガーナ産カカオは、近年ではフェアトレード化が進行しているとはいえ「中間業者問題」を完全解決しているとはまだまだ言い切れない状態だ。
この問題に取り組む「Agrocenta」という企業が、世界的に知られるようになっている。
Agrocentaの取り組みを一言で表せば、「流通の改善」だ。
生産農家を圧迫し価格を吊り上げる中間業者まず、「中間業者問題」とは何か。
たとえば中間業者Aが生産者から野菜1キログラムを10ドルで買う。それを中間業者Bに13ドルで売却すると、Aには3ドルの利益が発生する。Bは中間業者Cに同じ野菜を18ドルで売却して5ドルの利益を出す。さらにCがDに…という具合に、ただひたすら同じ商品をスライドさせて無理やり利益を発生させるのだ。
最初の中間業者Aはあらゆる手を使って生産者から野菜を買い叩こうとする。一次産業従事者は不当な薄利を押し付けられるうえに、野菜が販売店に到着する頃には商品価格が高騰してしまう。
この問題へ切り込むAgrocenta社は、商品が小売店に届くまでの中間業者の数を最小限に抑えるサプライチェーンサービスを提供するアグリテック企業なのである。
アプリを使って小売業者から生産者へ直接オファー同社のサプライチェーンサービスは、農作物を仕入れたい業者と農作物を売りたい生産者をオンラインでマッチングし、輸送はAgrocentaと契約する業者が担当するというもの。小売店からのオファーが専用アプリ「Velocity」を通して直接生産者に送られる仕組みだ。
オファーの許諾はスマホのタップひとつ。あとはAgrocentaと契約するトラックがやって来て、商品を積み込む。生産物の実際の適正価格といった情報も同社が提供する。
金融インフラが脆弱だからこそさらに、同社自らが生産者に対する金融サービスを提供することにより、銀行口座を持っていない生産者の生活基盤を構築する効果も生み出している。
日本は明治政府が「全国各地に近代的な銀行を設立する」という施策を実行したため、極めて盤石な金融インフラを有している。日本の地方銀行や信用金庫は、それ自体が各分野のコミュニティ会場もしくはギルドのような存在だ。業界の動向は外回りの行員の口から事業者に伝えられ、それ故に「自分の作っている作物の適正価格を知らない」、「同業他者の動向を把握していない」といったことはまず起こり得ない。
一方、それが世界水準ではないという事実もまた存在する。世界銀行によると、特にアフリカ地域の銀行口座・モバイル口座保有率は多くの国で50%を下回るという。そうしたインフラに恵まれていなかったガーナで、デジタル金融サービスを農村部の人々に提供するのがAgrocentaなのだ。
かつてはデジタル金融エコシステムから隔絶されていた農村部の小規模農家たちが、Velocitiのプラットフォームによって少額ローンや貯蓄、年金といった金融サービスにアクセスできるようになっている。
農家にとって重要な天候情報も配信こうした農業分野のサプライチェーン改善を目標にする企業は世界中で続々と登場しているが、Agrocentaも含めて共通するのは「農業関連情報も提供する」という点だ。
農作物の適正価格のほか、天候情報もサービスの一環として配信しなければならない。「天気予報くらいテレビでやらないのか?」という疑問の声もありそうだが、日本はアメダスや地上配置型気象レーダーのほか、気象観測衛星まで自前で打ち上げている世界でも稀有な国ということをここで思い出す必要がある。
発展途上国や新興国では、テレビのニュース番組ですら天気予報を取り扱わない場合も珍しくない。そのような国では、スマホで手軽に閲覧できる天候情報に高い需要があるのだ。
ガーナやコートジボワールがあるサハラ以南の「アフリカ大陸の脇の下」は、降水量に恵まれさまざまな農作物を生産できる条件が整っている。あとは、生産者に対して適正な報酬が与えられる仕組みを確立できれば、西アフリカ地域は「世界の食糧庫」になる可能性もあるだろう。
引用元:Agrocenta
(文・澤田 真一)
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