インドネシアのエビ養殖スタートアップJALA Tech、シリーズA投資ラウンドで資金調達
Techable / 2024年4月17日 8時0分
インドネシアは日本と地理条件が類似する島嶼国家で、水産物が食卓に上がる機会も頻繁にある。定番のエビ料理も多く、現地ではエビの養殖事業も盛んだ。
しかし、すべての業者が効率的なエビ養殖を成功させているというわけではない。農閑期のサイドビジネスとして農家がエビ養殖を行っている場合もあるため、品質が必ずしも保証されていないのが現実だ。
この問題を解決するサービスを提供し、インドネシア国外からも大いに注目されるようになったのが、エビ養殖のスタートアップJALA Tech(以下JALA)である。
エビ養殖堀の状態をスマホアプリに表示Techableで2021年にJALAの紹介記事を配信した当時、同社は日本のリアルテックホールディングス株式会社が運営するリアルテックグローバルファンドから出資を得たばかりだった。
JALAが開発したデバイスは、エビの養殖掘の中を常時モニタリングする。専用のスマホアプリに堀の水質やエビの様子を表示し、経験の浅い業者でも高品質の食用エビを生産できるようにするシステムだ。
エビを含む水産物養殖は、餌の量が肝心。少なすぎるとエビが死んでしまい、多過ぎると余計な餌代がかかる上に水質汚染も引き起こす。一方で、休耕地を活用した水産物養殖事業は農村部に新しい産業をもたらす。「農閑期に行えるつなぎのビジネス」があれば、若者が都市部へ出稼ぎに行く必要がなくなる。
JALAの養殖掘管理デバイスと連携のスマホアプリで、誰しもが簡単に養殖ビジネスを始められる環境が構築されようとしている。
仲買人が生産者の収益を奪う現状インドネシアのアグリテックスタートアップは、必ずと言っていいほどマーケットプレイス運営も同時並行で行っている。仲買人の介入を回避するためである。
仲買人はインドネシア語で「tengkulak」という。たとえば現地メディアNU Online Lampungの記事のタイトルは「ランプン州知事、仲買人に農作物を売らないよう農家に要請」である。ランプン州知事アリナル・ジュナイディ氏が、稲の収穫を控えた農家に対して仲買人を避けるよう自ら呼びかけたのだ。なお、アリナル氏はランプン大学で農業学を専攻し、学士号を取得した人物である。
仲買人による中間マージン搾取はインドネシアの社会問題で、これがある限り生産者は不当に安い売却価格を強要される。中間業者が何重にも介入するため収穫物が小売店に届く頃には価格が高騰。消費者にとっても苦々しい状況になってしまう。
同じ現象は水産物生産においても起きている。アグリテックスタートアップは、悪質な仲買人を寄せ付けないために独自のマーケットプレイスを企画する必要があるのだ。
1000万ドル以上の資金調達に成功JALAは昨202311月、現地ベンチャーキャピタルIntudo Venturesが主導するシリーズA投資ラウンドで総額1310万ドルの資金調達に成功した。
この資金はスマトラ島、スラウェシ島、ヌサ・トゥンガラ地域での事業拡大に活用されるという。ここで注目すべきはヌサ・トゥンガラ地域。バリ島以東の西ヌサ・トゥンガラ州、東ヌサ・トゥンガラ州は火山群島から成る細長い州で、豊かとは決して言えない土地だ。特に東ヌサ・トゥンガラ州はジャワ島やバリ島よりも遥かに降水量が少なく、大規模農業に適した平地も極めて少ない。
そのような地域にこそ、JALAが提供するようなスマート養殖システムが求められるはずだ。
一次産業こそ有望株JALA、そしてスマート養殖給餌器を提供することで急成長を遂げたeFisheryはインドネシア政府が巨大な期待を寄せる企業である。
地域間の経済格差問題、仲買人問題、国内出稼ぎ問題、そして食料自給率問題まで一気に解決してくれる可能性のあるアグリテックスタートアップは、今やインドネシアの花形分野となりつつある。それは「農業や漁業は辛いだけで儲からない、格好悪い」というイメージから「一次産業こそ有望株」というイメージへの大転換をも意味する現象だ。
今後もインドネシアのアグリテック分野から目を離すことはできない。
参照:
JALA Tech
NU Online Lampung
(文・澤田 真一)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
BAP認証ロゴ付き国内流通商品が100商品を突破
PR TIMES / 2024年11月21日 16時45分
-
ROY株式会社主催、日本文化交流イベントに元フジコーズ・松尾実李果さんが登場
@Press / 2024年11月6日 11時30分
-
中小企業デットファイナンスの新潮流 第32回 農業融資
マイナビニュース / 2024年11月1日 8時0分
-
脱炭素ベンチャー オーシャン株式会社、インドネシア埋立地の廃棄物を利用したバイオ燃料生産、カーボンクレジット創出プロジェクトに向け現地企業envmission社とMOU締結
PR TIMES / 2024年10月31日 18時45分
-
【アフリカスタートアップ投資の注目業界:Vol.10】日系アグリテックも現地で躍動、バリューチェーン横断×デジタル活用
Techable / 2024年10月25日 13時11分
ランキング
-
1昨年上回る規模の経済対策、石破色は一体どこに?【播摩卓士の経済コラム】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月23日 14時0分
-
2【独自】所得減税、富裕層の適用制限案 「103万円の壁」引き上げで
共同通信 / 2024年11月23日 18時57分
-
3農協へコネ入社の元プー太郎が高知山奥「道の駅」で年商5億…地元へのふるさと納税額を600万→8億にできた訳
プレジデントオンライン / 2024年11月23日 10時15分
-
4スシロー「パペットスンスン」コラボに言及「追加販売を検討」 発売当日に一部完売したグッズも
ORICON NEWS / 2024年11月22日 17時45分
-
5《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン / 2024年11月23日 16時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください