南アの“食”を支える新しいECプラットフォーム「Yebo Fresh」が目指す未来
Techable / 2024年4月18日 20時0分
Yebo Freshは2018年に起業したばかりのeコマース(EC)プラットフォームである。南アフリカにおいて、プラットフォームビジネスは2014年以降急速に普及しているが、同社も注目されるビジネスモデルの一つだ。
ただ一つ違うこと、それは彼らのビジネスが個人の「食」と、“タウンシップ”の経済活動を支えていくという点にある。
欧米の大企業が南アの“タウンシップ”へ参入する理由「タウンシップって知っていますか?」アメリカで友人に尋ねられたとき、わたしは単なる行政地区の事を指すものだと思っていた。「いまアフリカのタウンシップは勢いがすごいんですよ」と友人は続ける。
一般的に、欧米におけるタウンシップとは、アメリカやカナダなどで施行された公有地を分割する土地制度やそのエリアを指す。しかし、アフリカにおける「タウンシップ」は欧米におけるその意味とは大きくかけ離れている。
ヨハネスブルクに位置する南アフリカ最大のタウンシップ、ソウェトの人口はおよそ120万人(2019年時点:City of Johannesburg参考)だ。このエリアは旧「黒人居住区」と言われ、アパルトヘイト政策廃止後に都市での生活を求め、多数のアフリカ人が流れ込んだ地域となった。
現在は多くの人口を抱えた社会課題の巣窟という側面さえも持っている。こうしたエリアにおいては、現在もまだ教育やインフラ整備、食料の供給や雇用の問題などが山積となっているのだ。一方、近年こうしたタウンシップへの進出を果たす企業が少なくない。1日平均2ドルで生活する人が半数以上を占めているものの、彼らはこぞってコカ・コーラやネスレといった大手ブランドの商品を買う。
こうした低所得者層向けのビジネスがいま脚光を浴びている。ネスレは、2015年まで行っていた中間層市場の販売戦略を大幅に変え、現在は低所得者向けの商品開発、販売戦力を進めている。安価で栄養価の高い商品を販売することで、販売にひとつの活路を見出した。
そして2024年現在、低所得者向けの商品開発は世界各社の共通ミッションとなり、拡大し続けているようだ。
50万人の経営者とタウンシップの未来さて、話を再びYebo Freshに戻すとしよう。
彼らのミッションはタウンシップに生きる人の「食」の安定供給にある。スマートテクノロジーを通じて、タウンシップで生活をする約50万人の事業者やコミュニティと顧客を結び、サービスへのアクセスを簡素化し、商品を顧客へ安定して供給できるような仕組みを提供することを目指している。
なかでも、Yebo Freshが着目したのは「商品コストの上昇の原因となっているものは何か」という点だ。
交通インフラが整備されていないアフリカにおいて、食品や日用品の価格はすなわち、その製品が顧客の手に渡るまでの過程に関係している。これはパンデミック以降、物流の需要が急激に伸びたアフリカにおいては大きな課題となっている。
外資系の大型のスーパーやアウトレット店が低所得者向けビジネスに着目し多数進出したことにより、タウンシップでは多数の個人商店が姿を消していった。
しかしながら、こうした個人経営者やスモールコミュニティたちは長く南アフリカ経済のバックボーンに大きく貢献しているものの、存続をしていくためには価格競争に勝たなくてはいけないという根本的な問題があるということは言うまでもない。
このような社会問題を背景にジェシカ・ブーンストラ氏(創業者兼CEO)と英国人起業家のステファン・アレッシュ・テイラー氏はYebo Freshを設立したのである。
大型スーパーなどの小売店やアウトレット店は小売り技術においてのノウハウが卓越している。たとえば費用対効果の高い配送オプションでの製品提供を行う、またターゲット層への的確な商品訴求ができるなどの点では個人店に太刀打ちできるものは少ない。
巨大な購買力に適切に商品を供給するという仕組みができあがっている店舗と競合した場合、個人店は深刻な不利益を経験することだろう。こうした点を解決するために作られたのがYebo Freshのプラットフォームだ。
タウンシップのAmazonとして拡大路線を続けるのかYebo FreshはECモールのような体裁ではなく、Yebo Freshという大きな仮想空間の商店の中に、個人経営者が商品を棚に置いている、いわゆる「道の駅」のような構造を採用している。
たとえば顧客は食品を手に入れようとしたとき、住んでいるローカルエリアで24時間以内に配達が可能な製品を確実にカートへ入れることができるアルゴリズムを構築している。
Yebo Freshが重要視するのは「供給」という部分である。したがって、このプラットフォームが重視するのは「購入者」だけではなく「製品提供者」も同じようにさまざまなツールの提供を受け、サポートを得られる点が画一的である。
2024年現在、Yebo Freshは25のタウンシップエリアにおいて8000業種の製品の供給をサポートしている。消費者はYebo Freshに登録すればいつでも商品を簡単に購入でき、また事業者はYebo Freshを通じてサプライヤーからの資金提供を受けることも、あらゆるロジスティックに関するサポートを受けることもできる。
こうして培った膨大なデータをもとに、より適切な商品の訴求、また顧客の購買動向を察知し、仕入れや販売に生かしていくという部分は従来の大型スーパーやECと変わらないが、店舗間のネットワーク効果を生かし、個人経営者にそのデータソースを還元するという点が、大きく異なっていると言えるだろう。
Yebo Freshは、マッピング・デジタル化・強力な配送インフラの3本柱をより強固なものに構築していくことを見込んでいるようだ。タウンシップのあらゆる物理的なゲートウェイを担うプラットフォームとなる日もそう遠くはないのかもしれない。
参考・引用元:Yebo Fresh
(文・獏 弥生)
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