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アフリカ企業と顧客の“言語の壁”を打ち破る、Botlhale AIの多言語チャットボット

Techable / 2024年4月24日 8時0分

昨今、OpenAI社のChatGPTをはじめとしたLLM(Large Language Model:大規模言語モデル)とその応用である生成系AIがより身近な存在として、世界中で活用されている。使ってみた人の中には、自分の質問に自然に答え、かつ翻訳、要約とさまざまな処理を瞬時に行えるAIサービスに衝撃を受けた人も多いのではないだろうか。

AIサービスを便利に使うことができるのは、そのサービスがあらかじめ我々が使う言語や理解できる言語をサポートしていたからだろう。たとえば、筆者が2024年3月19日に、ChatGPT4に対して「専門分野で自信を持ってサポートできる言語の数は?」と質問をしたところ、次のような返答があった。

User
Could you please count the number of languages you can confidently support in professional areas ?

ChatGPT
For professional or technical content, I'm most confident in supporting a smaller set of languages due to the availability of training data and the frequency of use in professional contexts. These languages include:

1. English
2. Spanish
3. French
4. German
5. Chinese (Simplified)
6. Japanese
7. Korean
8. Russian
9. Italian
10. Portuguese (primarily Brazilian Portuguese)
11. Dutch
12. Arabic

それでは、上記の言語を使わない、他の国の言葉を使用している人はどうすればこれらのサービスを利用できるようになるだろうか。

アメリカで使用されている多数の言語と日本語

まず、世界でいくつの言語が存在し、そのうちのいくつがアフリカで使用されているかをおさらいしたい。

少数言語の研究団体SILによると、2023年時点で世界には7168の言語があるという。またハーバード大学によれば、世界に存在する言語の約1/3にあたる1000~2000の言語がアフリカで使用されており、そのうち100万人以上の話者がいる言語は少なくとも75あるそうだ。

ちなみにこうした言語の多様性を見るに、日本人は言語という意味で恵まれた地位にあるというのが筆者の考えである。人口減少問題が叫ばれているため意外に聞こえるかもしれないが、厚生労働省によれば日本の人口は2020年に1億2615万人、2040年に1億1284万人、2070年には8700万人に減少すると予測されているものの、日本語という同じ言語を使う人口として上記の100万人と比べてみると、圧倒的に多いように見えてくる。

ちなみに、先にChatGPTが上げた言語のなかで、たとえばDutch(オランダ語)の現在の使用者の数はWorld Population Reviewによると推定2800万人程度である。

そのため、ChatGPTのような最新技術において、日本語が全くサポートされないという未来は心配しなくていいというのが筆者の見解である。一方、アフリカには自分たちの言語が最新技術でサポートされない状況と、それでも最新技術を利用してサービスを生み出したいという確かなニーズが存在することがみえてくる。

アフリカ言語のデジタルアクセスを実現するBotlhale AI

これまでの話を踏まえたうえで、2019年設立のアフリカ発AIスタートアップであるBotlhale AIの公式ホームページを見ると、同社のビジョン、ミッションが設定された理由が読み取れる。

Botlhale AIのビジョン
アフリカ大陸の人々が彼らの独自の言語を使って、学び、成長し、世界とつながれるような未来を作る。

Botlhale AIのミッション
アフリカの人々の言語が使えないことが、さまざまなサービス利用の阻害要因であることを認識し、その阻害要因の解決に真正面から取り組む。

このBotlhale AIのビジョン、ミッションからもアフリカ大陸には最先端技術のサポートが追い付かないような言語を使っている人々が確かに存在し、同社がその問題を解決しようとしていることが分かる。

調達した資金額の合計は19万3600ドル

CrunchbaseによればBotlhale AIの最新の資金調達は2022年10月1日であり、調達した資金額の合計は19万3600ドルで、1ドル150円換算で約3000万円の資金を集めている。現状、公開されている投資家はCreative Destruction Lab(CDL) 1社のみだ。

Connecting Africaによれば、2023年11月にBolthale AIはAfrica Tech Festival Awardsにおいて、その年に活躍したスタートアップに贈られる「スタートアップ・オブ・ザ・イヤー」に選出されている。

Botlhale AIの会話型AIツール&分析ツール

Botlhale AIの公式ホームページによると、同社の提供するサービスは以下の通りである。

Natural Language Processing(NLP:自然言語処理)を実現する「Bua」

高次元のチャットボットの作成、外部API(Application Programming Interface)との連携でより高度な処理を実現する。

話されている言語に関係なく通話を100%監視する、コールセンター向けの分析API「Vela」

話し言葉の検出、複数言語の文字起こし、解析などを実行可能する。

文字からスピーチ(音声)への変換、スピーチ(音声)から文字への変換を実現する「Speech APIs」

アフリカ言語で音声対応ソリューションを作成できる。

Botlhale AIの可能性と課題・懸念

Botlhale AIが注目される理由は、技術の進歩に貢献するスタートアップとしての表彰歴があるだけでなく、デジタル上でサービスを展開する多くの企業が関心を抱く「顧客体験の向上」「顧客の獲得」などの領域をターゲットにするという現実的な戦略を立てているためだろう。

2023年4月に公開されたNewzroom AfrikaのYouTube動画で、Botlhale AIのCEO兼共同創業者であるThapelo Nthite氏は営業戦略を聞かれた際に「当社のテクノロジー最大の原動力はカスタマーケアだ」と答え、ターゲットとなる顧客層を明らかにした。

実際に、公式ホームページのUse Casesには各サービスごとの想定顧客が公開されており、たとえばVeraは「営業」「マーケティング」「カスタマーサポート」などでの使用を想定している。

一方で、課題もあると筆者は考える。ChatGPTや新たに追加されたカスタマイズ機能「GPTs」が騒がれているなかで、すでに多くの人間がOpenAI社や他社の提供するAPIの情報を無料で入手し、さまざまなアプリケーションを開発している。

筆者も(あくまで自分の趣味に毛が生えたレベルではあるが)、OpenAI社の「Whisper API(音声認識モデル“Whisper”のAPI)」を使用して趣味用の自動化プログラムを書いて楽しんでいる。試しにBolthale AIのAPIの情報を入手しようと調べたところ、簡単にアクセスはできないようだ。

一例までに、Googleのサーチエンジンにて「bolthale ai, api info」と検索すると同社のページが表示されるように見えるが、こららのリンクに行こうとすると404エラーとなり、詳細情報は入手できなかった。

もちろん、クローズド戦略を取るのは立派な戦略なのでそれらを否定をするつもりは全くない。一方でLLMベースの生成AIが大きな盛り上がりを見せているなか、場合によっては重なる領域と見られかねないBolthale AIから、LLMや生成系AIへの対応のコメントやリリースなどのコメントが見つからないのはやや違和感を覚える。

また、オープンソース系のLLMや生成系AI環境も多数出てきているなかで同社はそれらを上手く使っていくのか、それとも競合関係になりえるのかが、はっきりしていないように見える。

LLM、生成AI、チャット、テキスト、音声認識は言うまでもなく注目度の高い領域であり、アメリカのマグニフィセント・セブン(AppeleやAmazonを含む大手テック企業7社)をはじめとする大手が、リストラをしながらでも生成系AIの人材を獲得しようとしている現在において、同社がどのようなポジショニングを取り成長につなげていくのかは投資家やユーザーを含む多くの人が気になる部分ではないだろうか。

たとえばBolthale AIは独自にLLMの開発はしておらず、むしろ強みはすでにアフリカの顧客の多数のデータやデータを使用したLLMのトレーニングと使いこなしであるような場合は、この強みを利用して大手と提携していくといった、さまざまな打ち手が考えられるのではないだろうか。

いずれにしても今後のBolthale AIの動向から目が離せない。

文・Gocha
アメリカ在住、エンジニア兼コンサルタント。アメリカ生活に関わることやその他記事に対する所感などをブログ・YouTubeで公開中。

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