米ウォルマートが出資するアグリテック企業Ninjacart、インドの大手B2B生鮮食品サプライチェーンへ成長
Techable / 2024年5月15日 8時0分
新興国の農業は、その流通過程が複雑ということがよくある。
仲買人が乱立していることにも原因があるが、そもそも流通業者が買取価格の変動を見越して敢えて安い価格を生産者に提示したり、生産者自身が適正の買取価格を知らなかったりということも要因だろう。そうした現象を是正しつつ、流通経路をもっと単純かつ効率的にする仕組みをインドで展開しているのが「Ninjacart」だ。Ninjaは日本の忍者が由来なのだそう。
ユニークな名称のこのスタートアップは、今やインドの農産物流通業者の大手に成長している。
価格予測にAIを活用Ninjacartは、あの米国大手スーパーマーケットチェーンのウォルマートが出資したスタートアップとしても知られている。この出資についての詳細は後述するが、インドの流通関連スタートアップは今や小売業界の巨人も大いに注目していることをここで強調したい。
80万の農家、10万の小売業者、インド全国120の都市に進出するNinjacartのネットワークは、迅速な農作物の出荷・配送を実現する。Ninjacartは自前の集荷所を有し、そこで農作物の品質をチェックし計量する。この際、農家の前で梱包用の箱に移し、透明性を確保するという。
そして買取価格は、Ninjacartのマーケット調査班が複数の市場での設定価格を参考に予測・決定し、農家に通知する。そこからトラックを向かわせて作物の出荷という流れだが、この出荷から小売市場へ届くまでを12時間以内で行うとしている。
現地メディアAnalytics India MagazineがNinjacartのCEOティルクマラン・ナガラジャン氏にインタビューしたところによると、価格予測作業にはAIを活用しているという。「Ninjacartは仲買人を排し、代わりにAIと機械学習を導入している」とナガラジャン氏は語る。
「食の安全」を担保する流通プラットフォーム作物を入れる箱にはRFIDタグを付けており、小売市場に届くまでの作物の足跡を追跡できる仕組みになっている。これは作物の産地を明確にする効果も生み出すという(参考)。
仲買人が乱立するサプライチェーンでは産地が曖昧になるという現象が発生しがちだ。しかし、都市住民の中には「食の安全」を求め、産地に関して強く意識する人もいるだろう。
そこでNinjacartは迅速かつ公平なサプライチェーンを構築すると同時に、「誰が作り、どこで集荷し、誰が運び、誰が小売を担ったか」ということが全て記録されるシステムを確立させたのだ。十分な価格で取引できるため、生産者に対する報酬は高くなる。
国外の同業スタートアップに出資そんなNinjacartは、国外の同業スタートアップへの出資も行っている。
先日報じたフィリピンの農産物流通スタートアップMayaniへの出資がその一例だ。このMayaniはラスト・ワンマイルに至る迅速な配送を実施し、さらに形の歪なB級野菜を積極的に販売する姿勢で国際的にも評価されている。
出資額は公開されていないものの、アジア地域のアグリテックスタートアップにとっては極めて大きな話題であることに違いはないだろう。それまで不透明だった農業サプライチェーンが、RFIDタグやAI、そしてスマホアプリにより透明化を実現しようとしている。
参考・引用元:
Ninjacart
Analytics India Magazine
(文・澤田 真一)
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