電動フォークリフト、倉庫内作業向けロボットアームなどが集結。深圳国際物流展「LogiMAT China 2024」
Techable / 2024年5月16日 16時0分
倉庫、物流の自動化は長い歴史のあるテーマだ。倉庫は各国に建てる必要があり、そこで働くのもローカルの人間であり、連携するのもローカルの輸送業者なので、現地でのインテグレーションが重要になる。
膨大な人口と市場を抱える中国は世界最大の物流大国だ。アリババやJD.COMといった通販大手は一回のセールで5兆円以上を売り上げており、日常の買い物もほぼ通販で賄われている。
2024年5月8日~10日の3日間、中国・深センで開かれた深圳国際内部物流展「LogiMAT China 2024」(以下、LogiMAT)も、日本や西欧であまり見かけない企業が多く出展していた。
深セン市福田区のコンベンションセンターで行われた同イベント。B2Bの展示会なので規模は小さく、使用は8番ホールのみ。総展示数は100以下といったところだ。
BYDも純電動フォークリフトを出展会場で目を引いていたのは、中国のEVを代表する会社の一つであるBYDの“電動フォークリフト”だ。
電動フォークリフトは筐体を小さくすることができ、排ガスを出さないので屋内でも利用がしやすく、事業用の電源を引いていれば充電スタンドの問題もいらない。EVブーム以前から、屋内の搬送車は多くが電動だったが、EVブームでそれに拍車がかかったように見える。なおBYDの電動フォークリフトは日本での導入事例も多い。
さまざまな国内企業が電動フォークリフトを開発BYDだけでなく、さまざまな中国国内メーカーがフォークリフトを出展していた。
1978年創業の老舗、浙江省のUN forkliftは、ほぼ同じサイズで電動とガソリンの両方の筐体を展示。同社はドイツ製フォークリフトの販社からビジネスを始め、その約10年後に国産化したフォークリフトを販売開始。現在は海外にもシェアを広げている。
安徽省合肥のMiMAは重さ5トンまで持ち上げられる大型の作業機械含め、さまざまな倉庫内機械を展示。フォークリフトだけでなく、友人・無人のさまざまな倉庫内作業機械をアピールしていた。
浙江省、安徽省共に上海の周辺に位置していて、中国の物流の中心地と言える。「世界の工場」である広東省では工作機械メーカーが目立つ中、物流サービスを支える企業が上海周辺から出てくるのは自然な流れと言える。
倉庫内作業の自動化AGV・AMR倉庫内作業を自働化・半自動化するためのプロダクトも各社が開発している。会場にはフォークリフトよりも、自動搬送機械の展示のほうが多い。
床に引かれたラインに沿って動くなど決まった動作中心のAGV(Automatic Guided Vehicle)に加えて、ルートを自分で判断して目的地まで配送してくれるAMR(Autonomous Mobile Robotの略だが、歴史のあるAGVという名称のほうが有名なので、AGVと称しているAMRも多い)が最近のトレンドだ。
JATENは自律型ロボットがコア技術で、主力商品はAGV/AMRだ。会場でもフォークリフトぐらいのサイズのロボットが荷物パレットを運ぶデモを展示。同社は同じ技術で遊園地などの遊覧ロボも作っている。
自動搬送機界は人間が乗らないぶん小型化や変わったレイアウトができるため、同社はペイロード500kgから10トンを超えるものまで多様なAGVを開発している。
倉庫システムを構成する企業たち倉庫は建築物でもあるし、大量の箱や棚など家具や什器も必要となる。LogiMATには全分野から出展者が集まっていた。
Universal Robotsは協働ロボット分野を代表する企業の一つで、中国でも大きなシェアを持っている。同社のロボットは数kg~数十kg程度のペイロードのものが多く、人間がやっていた積替えなどの作業を高度な自律性で代替することを目的にしている。
中国からも多くのロボットアームメーカーがLogiMATに出展している。深圳のWarsonco Technologyは荷物の積み込み、段ボール箱の組み立てなど、倉庫内作業に特化したさまざまなソリューションを提供している企業だ。ローカルの企業はこうした具体的な作業の中身まで立ち入ってソリューションを提供できるところに強みがある。
また、荷積みされるパレットや、機材・荷物棚などの設置に使われるキャスター、足具など、現場合わせが重要な部品を供給する会社もLogiMATに多く出展され、倉庫ソリューションの関係企業がすべて把握できるようになっていた。
倉庫ソリューション全体を設計するHai Robotics深圳のHai Roboticsは専用のロボットを使い、倉庫ソリューション全体を設計する会社だ。
これまで紹介したフォークリフトや協働ロボットは、もともと人間が手作業でやっていた仕事の自働化だが、自働化を前提に倉庫全体を再設計するアプローチの企業もある。今回のLogiMATでは、深圳のHai Roboticsが出展していた。
Hai Roboticsはロボットだけでなく、倉庫の管理システムや棚の配置、それぞれの荷物を管理するバーコードリーダーとバーコードの印刷まで、倉庫システム全体の設計を行う。
荷物の大きさやオペレーションをある程度、規格化する必要があるが、新しい倉庫が立ち上がることが多い中国ではこうした全自動倉庫のニーズも高い。作業が均質化され、安定して運用できることも魅力だ。
Hai Roboticsはこのソリューションを日本をはじめ海外に輸出している。
中国ローカルで伸びた産業が海外へ今年のLogiMAT展示会はヨーロッパで展示会を運営するEuroexpoとMesse Stuttgartが、そして提携会社のMesse Nanjingが主催している。しかし、出展者の多くは中国各地から集まってきたローカル企業だ。Universal Robotsなど欧州の製品もソリューションに組み込まれているが、個別の小さい部品から統合的なサービスまで中国企業の存在感が目立った。
LogiMATは今後タイ、ドイツとイベントを海外展開していく。将来的には中国の物流ソリューションを海外展開する役割を担っていきそうだ。
(文・高須正和)
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