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企業とクリエイターの距離を縮めるオンライン経理「Slice」、日本から出資も

Techable / 2024年5月21日 17時0分

インフルエンサーに自社の商品を宣伝してもらう。今や特段珍しい宣伝手法ではないが、ここにひとつ問題がある。

それは個人事業主でもあるインフルエンサーへの報酬支払いだ。当然ながらインフルエンサーたちは依頼した企業の従業員ではないため、通常は投稿1回・配信1本ごとに報酬を支払うことになる。利用するインフルエンサーの人数や、発注頻度によっては、企業経理部に大きな負担がかかってしまうのが実情だ。

この問題を解決しようとするインドネシアのオンライン経理プラットフォーム「Slice」に、日本の投資家からも注目が集まっている。

個人への報酬支払いにおける事務負担

インドネシアの人口は約2億7000万人。Z世代はその中で最も多い割合を占めている。

中央統計庁によると、2020年におけるインドネシアの総人口のうち、Z世代は27.94%、その上のミレニアル世代は25.87%だ。この両世代だけで人口の半分を優に超えてしまうのだから、インドネシアという国の“若さ”がよく伝わる。

そんなインドネシアでは、インフルエンサーが極めて強い影響力を発揮している。各業界の企業は、高額のギャラを払ってでもインフルエンサーを広告動画に登場させたいと考えている。一方で、“ギャラを払う”ために請求書の受理・確認・処理、所得税の源泉徴収、支払明細書などの発行作業が発生することへの作業負担もある。

煩雑ともいえる事務作業のすえ、ギャラもすぐには入金されないとなれば、インフルエンサー側としても現在の支払サイクルに多少の不満があるかもしれない。

Sliceのプラットフォームは、クリエイターやインフルエンサーに対する正確かつ迅速な報酬支払を可能にするもの。YouTubeやInstagram、TikTokでいつ・どんな配信を行ったのかといったデータを、各SNS・動画サイトとのAPI連携で取得し、記録に反映させる仕組みだ。

クリエイターの「お品書き機能」も

このデータとクリエイターに対する報酬額を組み合わせると、税金や源泉徴収の額が自動的に算出される。この金額はクリエイターにもすぐに共有できる。つまり、支払い・税金・契約などの煩雑な作業が合理化されるのだ。

クリエイター側にとっての使い勝手も考慮されている。各SNSでのフォロワー数をSliceのプラットフォームに表示するだけでなく、視聴者の男女比や年齢比、エンゲージメント率などもAPI連携で共有できる。

これらのデータを企業側が確認して、出演してほしい動画や宣伝してほしい製品を話し合うことももちろんある。各インフルエンサーの得意分野や実績について企業側が把握する手段としてデータを活用すれば、適材適所が実現するだろう。

さらに、クリエイターが料金表を設定できる機能も。「YouTubeの動画制作1本○○ルピア」や「企業の宣伝動画に特別出演の場合は1本○○ルピア」といった「お品書き」を作成し、企業に共有できるのだ。

Sliceは「企業とクリエイターの距離をより縮めるプラットフォーム」と表現することもできる。

初の国外資金調達は日本のベンチャーキャピタルから


Sliceのローンチは2022年だが、東南アジアのテック情報に特化したメディアBackscoopによると、2023年7月の時点でSliceは現地のオンライン・マーケットプレイスShopee、P2PレンディングサービスKoinWorks、日本でも有名な化粧品メーカーNIVEAなどと契約している。

2024年4月には、インドネシア国外から初となる支援も受けている。日本のベンチャーキャピタルW inc.のブランドW fundが、インドネシア投資の第1号案件としてSliceへの投資を実行したのだ。プレスリリースでは、エクステンションラウンドによってこのラウンドの資金調達総額は84万5000米ドルになったとしている。

企業にとってもクリエイターにとっても使いやすい経理プラットフォームの登場により、「インフルエンサーを活用した広告」がますます活気を帯びるかもしれない。

参照:
Slice

(文・澤田 真一)

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