【インタビュー】韓国発の自律走行ロボNeubieが年内に日本でも稼働か、小型サイズが魅力
Techable / 2024年5月29日 15時0分
4月27日から東京都が開催しているSusHi Tech Tokyo 2024。5月15・16日の2日間にはグローバルスタートアッププログラムが東京ビッグサイトで行われ、世界各国から400社近いスタートアップが集まった。展示ブースの一覧を見る限り、そのうち日本のスタートアップが154社と約4割を占め、海外勢としては台湾企業46社が最多だった。
韓国からは45社が参加。そのうちNeubilityは、韓国の自動走行ロボット分野でトップのシェアを誇るパイオニア的スタートアップだ。
配送および警備用ロボットで知られる同社は現在シリーズAラウンド。2023年1月開催のCESにてNVIDIA Inceptionプログラム対象企業に選ばれ、2024年4月にはSamsungから242万ドルの支援を獲得するなど、国内外から注目を集めている。4月に調達した資金で欧米や日本で事業を拡大するというNeubility社のブースで、広報マネージャーのYuna Seo氏に話をうかがった。
――今回はロボット実物の展示はないんですね。
Seo:はい、残念ながらミニチュアだけなんです。当社が展開するのはカメラベースだけで自律走行を行うNeubieというロボットで、配送と警備の2つのモデルがあります。ロボット本体とロボット管理のためのプラットフォームNeubiego、配達の注文ができるアプリNeubie orderを含めたトータルソリューションを提供しています。
――フードデリバリーに使われるんですよね。
Seo:はい、Uber Eeatsのようなアプリからも注文できるようになっています。ロボット本体内部で保温・保冷できるので、暖かい料理も冷たい飲み物も配達可能です。重さ約60キロのロボットで、最大40キロ程度の荷物を運搬可能です。
韓国でのパートナーはSamsungなどの投資企業、および提携を結んでいる各種企業ですね。スターバックスやセブンイレブンなどと提携しています。セブンイレブンの場合は、コンビニで買ったものをロボットによって配達します。
ちなみに同社サイトによると、セブンイレブンの導入事例では配送業者を利用した場合の配達料を削減したほか配達にかかる時間も短縮され、顧客満足度が上昇したという。
韓国政府から初めて公道での安全認証取得――韓国では今どれくらい稼働しているんですか。
Seo:韓国では現在、15か所の都市で合計70台くらい稼働中です。都心部やゴルフ場などのレジャー施設やリゾート地、大学キャンパスやマンションの居住区など、敷地面積の広い施設で配送に使われています。また、キャンパスや公園ではパトロールロボットも走っています。
――車両扱いではなくて、このロボットは歩道を走るんですね。
Seo:韓国の法律上では基本的に歩行者と同じ扱いなので、歩道を移動します。速度は大体人が早歩きする程度で、車のように速くないので車道は走行できません。
弊社のモデルは小型(幅約56センチ×奥行き約67センチ×高さ約70センチ)のロボットなので、エレベーターに乗ったり、狭い場所にも出入りできるのが特徴です。日本の屋外用ロボットは大型が多くて、このサイズの小型ロボットはあまり見かけません。日本企業の方にお声がけした際に、いちばん関心を持っていただけるのがロボットのサイズですね。
日本での運用開始は今年8月目標日本では2019年の官民協議会立ち上げ以来、宅配ロボットの実証実験が多数行われてきた。「ロボットデリバリー元年」とされる2022年には、一般社団法人ロボットデリバリー協会(RDA)が発足。2023年4月には「道路交通法の一部を改正する法律」の施行によって、「遠隔操作型小型車」として定義されるロボットの行動での自律走行が可能になっている。
――日本でももうすぐ歩道を走る姿を見られそうでしょうか。
Seo:日本で走り出すとしたら…現在、いろいろなパートナーさんと話を進めていまして、今年の下旬8月くらいを目標に準備をしているところです。日本のRDAさんが、自動配送ロボットの安全基準適合審査を実施されているので、当社も日本の認証に向けて準備に取り組んでいます。
韓国では、弊社のモデルは韓国の道路交通法に従って「屋外移動ロボット」と定義されるもので、韓国政府から運行安全認証を受けています。この認証の条件のひとつが遠隔操作が可能であること。弊社のロボットは遠隔操作が可能ですが、遠隔操作はあくまで緊急時に行うもので、普段は自律走行で街中を走っています。
――見た目が可愛いですけど、攻撃されたり、蹴られたりといったことはないでしょうか?
Seo:これまでに蹴られたことはないんですけど、子供たちにすごく人気なので、囲まれちゃったりということはあります(笑)。
Neubilityは、延世大学の同級生だったAndrew Less氏とKeehyuk Kang氏によって2017年に設立されたスタートアップだ。ソウル大・高麗大と並ぶ韓国最難関大学でLee氏は天文宇宙学、Kang氏は電気電子工学科をそれぞれ専攻した。
ロボット工学と宇宙工学分野での経験とスキルを誇るCEOのLee氏は、2021年にForbes誌の「30 UNDER 30」の1人にも選ばれている。Neubilityの社員数は100人を超えたところで平均年齢は31.1歳。社員の約65%をエンジニアが占めているとのことだ。
2022年と2023年には「KOREA AI STARTUP」の100社に2年連続で選ばれたほか、2023年1月のCESではInnovation Awardに輝くなど、国内外で技術力が認められてきた同社。2024年4月にSouth Florida Security (SFS) Groupと共同でフロリダでの概念実証プロジェクトを開始している。
企業ミッションとして「都市の歩道のオートメーション」を掲げているが、ゴルフ場やキャンプ場での運用例を考えると、地方のシチュエーションでも活躍しそうだ。身近でNeubieに遭遇できる日を楽しみに待ちたい。
参考・引用:Neubility
(取材/文・Techable編集部)
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