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イスラエルWanda Fish、“細胞培養クロマグロ”のトロ刺身を発表|本物のような霜降りを実現

Techable / 2024年5月31日 20時0分

近い将来、水産資源の枯渇による“食糧不足”が起こると危惧されており、世界中でその対策が急務となっている。

魚や甲殻類の細胞を人工的に培養して作られた「培養シーフード」は、こうした食糧問題の解決に役立つ食材として、近年注目を集めている。

世界各国で培養シーフード事業に乗り出す企業が増える中、イスラエルのWanda FIshは、今年5月に細胞培養クロマグロによる、トロ刺身のプロトタイプを発表した。

同社は、持続可能で環境に優しいクロマグロの供給を目指す企業だ。

イスラエル発スタートアップWanda Fish

Wanda Fishは、2021年に設立されたイスラエルのネス・ジオナに拠点を置くスタートアップ企業。

創設者兼CEOのDaphna Heffetz氏を筆頭に、R&D副社長のMalkiel Cohen氏、ビジネス開発副社長のYaron Sfadyah氏など、経験豊富なエキスパートをメンバーに揃えている。さらに、細胞農業の世界的な学術権威であるDavid Kaplan 博士との強力なサポート体制も構築している。

2023年10月には710万ドルのシードラウンドに成功し、総額1000万ドルの資金を獲得した。

環境に優しい、持続可能なトロ刺身を

トロは、マグロの腹部にある部位である。オメガ3脂肪酸を多く含んでいるため、柔らかくバターのような食感が生まれることが特徴だ。

Wanda Fishによる細胞培養クロマグロのトロ刺身も、タンパク質とオメガ3脂肪酸を豊富に含んでおり、本物のトロと同等の栄養価を備えている。

今回発表されたプロトタイプでは、本物のトロと同等の霜降りを実現すること、同様の食感・見た目を再現することを最重要視したと、CEOのDaphna Heffetz氏は述べている。

技術の秘訣は、脂肪形成法にあり

Wanda Fishはトロ刺身の開発において、クロマグロの細胞に脂肪を形成させるという特許出願中の技術と、全体を丸ごと切断する下流の製造プロセスを採用している。この脂肪により、培養クロマグロ全体に絹のような質感と、独特の豊かな風味をもたらすという。

低コストで迅速な製造方法であることに加えて、容易にスケールアップできる点もポイントだ。

培養クロマグロはビジネスとして理にかなった食品

マグロ類の頂点にいるとされる高級魚のクロマグロだが、以下の理由により価格が高騰している。

・高速で長距離を泳ぐほか、海の珍味として重宝されているため、飼育や捕獲が難しい
・乱獲や違法漁業の問題から、政府による厳しい漁業制限が設けられている

実際、トロの刺身は日本の高級レストランを中心に提供される贅沢品であり、キロ単価100ドル以上することもある贅沢品だ。

Yaron Sfadyah氏は、以下のように述べている。

「培養クロマグロは、ビジネスとして理にかなった稀な食品の一つ。野生の魚と味や食感が匹敵する代替品は限られており、培養クロマグロは理想的な価格帯と流通モデルであるため、需要が高い」

代替たんぱく質製品を提供する企業はたびたび、製造コストが高いという壁にぶつかる。なおかつ通常の動物性製品の価格は安いため、その点もビジネスとして難しい部分だ。

培養クロマグロなら、こうした課題をクリアできるというわけだ。

Wanda Fishは最初の製品にクロマグロのトロを選んだ理由として、技術的側面よりも市場のニーズに注目したからであるとし、今後は寿司や刺身を提供する和食を中心とした高級外食産業へ製品を提供する予定だ。

参考・引用元:
PR Newswire
Wanda Fish

(文・Mao Otsuka)

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