印アグリテックNiqo Robotics、AIによる農薬スポット散布でサステナブル農業目指す
Techable / 2024年6月13日 20時0分
「特定の植物だけを効率よく育てる」ための農業において、農薬は必要不可欠である。
そうは言っても、過度の農薬散布は問題だ。撒きすぎると土壌・地下水汚染につながるし、「食の安全」もおびやかしかねない。農薬を無駄に消費すると、コストも増大してしまう。かといって少なすぎると効果が薄くなってしまう。
また、タンクを人間が背負って散布する方式は重労働。中毒やかぶれを防ぐためにも散布者は各種農薬に合わせた防護装備が必要となる。
これらの問題をAIカメラによる「スポット散布」で解決するのが、インドのテクノロジースタートアップNiqo Roboticsだ。
必要最少限の農薬をスポット散布Niqo Roboticsが独自開発したAI農業カメラ「Niqo Sense™」は、コンピュータービジョンとディープラーニングモデルを用いて作物を認識。必要な場所に必要な量だけの「スポット散布」によって、農薬の無駄な消費を防いでくれる。
現場でのシームレスなパフォーマンスを実現するため、リアルタイムAIがクラウドに依存せずデバイス上で稼働する。農薬だけでなく、殺虫剤や液体肥料などにも対応している。
さらに同社は、このカメラを搭載した農薬散布マシン「Niqo RoboSpray」も開発。下の画像の黄色いハシゴのような部分が散布マシンで、カメラが5基設置されている。
Niqo Senseが作物を認識したら、そこにNiqo RoboSprayが適量の農薬を散布。作物が見当たらない時は、もちろん散布しない。これにより、農薬を90%も節約できるとか。99.8%という精度を誇る散布の実際の様子は、同社のYouTubeアカウントで確認できる。
Niqo SenseはNiqo RoboSpray専用ではないため、トラクターなど既存の農機に後付けできる。まずはカメラだけ先に導入するといったことも可能だ。また、専用のアプリも用意されている。
Niqo Roboticsの製品が誇る農薬のスポット散布は農業用ドローンでも実行可能で、こちらの市場はMarkets and Marketsによると2023年から2028年までの間にCAGR31.5%という急成長が見込まれている。
農業用ドローンと同程度の潜在性が見込まれたのか、「四半期単位ではなく、数十年単位で考える」と公言するBidra Innovation Ventures主導がシリーズAラウンドを主導。現時点で50ユニットの出荷、10万エーカー分の散布実績を持つNiqo Roboticsは2024年5月にシリーズBラウンドでの1,300万ドルの資金調達を完了した。
数多くのアグリテックスタートアップに出資しているベンチャーキャピタルから見ても、Niqo Roboticsは有望なスタートアップということだろう。
そんなNiqo Roboticsが公式サイトで公開する「解放マニフェスト」は、次のような内容だ。
・農家を時間と労量の無駄・不要なコストから解放する
・農業従事者を単調でハードな反復作業から解放する
・農薬製造企業を誤用に基づく評価リスク・環境リスクから解放する
・農業機器メーカーを共同イノベーションにより解放する
・農業を非科学的で不健全な慣習から解放し、より科学的かつ持続可能で、回復力があり遂行可能で、魅力的な職業にする
ここには含まれていないが、消費者もまた農薬の不安から解放されるのではないだろうか。
Niqo Roboticsの技術によって農業の省力化やコストダウンが実現するだけでなく、農業サプライチェーンの全ステークホルダーがメリットを得られる。サステナブルな農業から始まる食と環境の良循環がどこまで広がっていくのか、今後も注目だ。
参考・引用元:
Niqo Robotics
(文・澤田 真一)
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