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宇宙ゴミを優しくパンチ。フランス発、“ボクシンググローブ”のようなデブリ除去システム

Techable / 2024年7月6日 18時0分

スペースデブリ、いわゆる「宇宙ゴミ」は地球全体の問題になっている。

スペースデブリにはサイズがあり、大きいものは放っておけば他のスペースデブリと衝突し、細かく小さくなってしまう。そうなると、回収はより困難になる。また、大きなスペースデブリが地上に落下したら大惨事が発生するかもしれない。あるいは、稼働中の人工衛星にスペースデブリが衝突する可能性も考えられる。

では、そのようなスペースデブリを人為的に動かしてしまおう。そのようなコンセプトの研究開発を行っているのが、フランス・パリに拠点を置くDarkである。

2021年に設立されたこのスタートアップが開発しているのは、 「巨大なボクシンググローブ」のような緊急デブリ除去(EDR)プラットフォームだ。

大型スペースデブリを押し出す「ボクシンググローブ」

スペースデブリは、1億個以上のゴミで構成されているという。そのうちの3万個は10cmを超える物体で、役目を終えた人工衛星や切り離されたロケットは5,000個に上る。

これは地球上に住む人類にとって、そして現在、軌道上で稼働中の人工衛星にとっても大変な脅威に他ならない。軌道上に迷い込んだスペースデブリの除去が急務となっている中、Darkは24時間以内に地球低軌道上のあらゆる地点にアクセスし、危険物の除去とスペースデブリの拡散を防ぐシステム「Interceptor」を開発している。

Interceptorは、専用の航空機から発射され、分離式のロケットの推進力を使って上空へ打ち上げられる。(参考)

その見た目は軍用機から発射されるミサイルのようだが、目標物をそのまま破壊するものではない。あくまでも「押し出す」のみである。

インターセプターはロケット分離後、目的のスペースデブリに到着する。位置合わせの後、先端のクッション部分でスペースデブリを押し出し、その軌道を変えてしまうのだ。

TechCrunchの報道では、この宇宙船について「ロケット推進のボクシンググローブ」と表現している。勢いよく衝突するものではなく、優しく圧力をかける仕組みのため、スペースデブリが破壊されてより細かい断片になる心配はないだろう。

2026年に初めての実証プロジェクトを予定

Darkは2026年に1回目のスペースデブリ除去プロジェクトを実施する予定だ。2027年には2回目の実証プロジェクトを行うとしている。

1回目の実証はコア技術の検証を行うものではあるが、目的は物体を軌道から外すことではなく、物体に触れることだけだ。実際にスペースデブリを押し出す作業は、2回目の実証プロジェクトで行うとされている。(参考)

なお、現時点でInterceptorは開発中のものである。しかし、すでに世界中から大きな期待と出資金が集まっている。

Long Journey Venturesも出資に加わる

今年4月、Darkは600万ドルの追加調達を実施した。2021年に獲得したそれと合わせると、総額は1,100万ドルである。

出資者の中には、Long Journey Venturesが加わっている。

このベンチャーキャピタルはFacebook創業者マーク・ザッカーバーグ氏の妹のアリエル・ザッカーバーグ氏がゼネラル・パートナーを務めていることで知られている。また、イーロン・マスク氏のSpaceXの有力出資者でもある。新興宇宙開発企業への出資に熱心なLong Journey Venturesが乗り出したことは、Darkにとっては極めて大きな後押しになるはずだ。

今この瞬間も人類を脅かしているスペースデブリ問題だが、その解決に向けた取り組みは着実に計画されている。

参考:Dark

(文・澤田 真一)

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