回収・再利用可能な小型ロケットのPLD Space、2026年に商業打ち上げ開始予定
Techable / 2024年7月8日 10時30分
「宇宙ロケット」と聞くと、数十階建てのビルくらいの大きさをイメージする人も多いかもしれない。しかし、近年では低コストな小型ロケットビジネスが活況を呈している。莫大な市場規模が見込まれる宇宙ビジネスに、少ない予算で参入できる点が魅力だ。
そのうえで、多段式ロケットの各構成部分を極力再利用しようという取り組みも進められている。再利用の利く小型ロケットは、結果として人工衛星打ち上げのコストを大幅に削減できるのである。
スペインの宇宙開発スタートアップPLD Spaceは、そうしたコンセプトの次世代型ロケットMiuraシリーズを開発している。「Miura」とは、「ランボルギーニ・ミウラ」と同じく著名な闘牛牧場にちなんだ名称だ。
回収・再利用可能な小型ロケットMiura 1の実証打ち上げPLD Spaceは2023年10月、欧州で初めての民間ロケット打ち上げプロジェクトとして小型ロケット「Miura 1」の打ち上げを実施した。
全長12.7メールの単段式ロケットMiura1は最大100kgのペイロードを積載可能で、最高弾道飛行速度は150キロ。初めての打ち上げでは高度46キロメートル到達に留まったものの、実証自体は成功とされた。
Miura 1の最大の特徴は、パラシュートを搭載した回収システムにより海上に着水後に機体を回収できる点だろう。従来の使い捨て多段式ロケット7では、切り離した一段目を海底に投棄していた。
再利用可能なMiura 1であれば、3~4分の微小重力環境を経た積み荷を打ち上げから4時間後には回収できる。積み荷を宇宙空間に打ち上げたのち地上に無傷で帰還させることで、小重力環境下での科学研究と技術開発の推進に貢献する。
そもそも小型サイズで低コストなロケットが回収・再利用できることで、打ち上げコストが大きく抑えられる。Miura 1は年4回の打ち上げが可能だ。
多段式ロケット「Miura 5」は2025、2026に打ち上げ予定「地球環境に極力負荷をかけないロケット」と同時並行して、PLD Space社はより大型の多段式ロケット「Miura 5」の開発も進めている。
Miura 5は全長34メートル、最大積載量500キログラム、2段式の小型衛星運搬型ロケット。ちなみに、日本のH3ロケットの全長はショートフェアリングの場合でも57メートルである(JAXA公式サイト)。
1段目のロケットは役目を終えるとパラシュート降下で海洋に着水する設計で、回収後に整備と調整を経てMiura 1同様に再利用可能だ。
現時点ではMiura 5の打ち上げ実績はないが、2025年にフランス領ギアナから発射される計画だという。1段目ロケットの着水テストは実施済みで、この様子はYouTubeでも配信されている。浮力のある機体を作業船のクレーンで回収する様子が確認できる。
そんなPLD Spaceは、今年4月に7800万ユーロの資金調達を実施したことを発表。この資金で年内に従業員数を約200人から300人までに増やすほか、上述のフランス領ギアナでのロケット発射台建設も進める予定だ。
さかのぼって2024年2月には、PLD Spaceは欧州宇宙機関(ESA)の商用宇宙開発支援プログラム「Boost!」と契約を締結、130万ユーロの共同資金を交付されている。2023年10月のMiura 1の実証発射が実績として認められた証と言えるだろう。
PLD Spaceは、2026年には商業発射を開始する見込み。地球環境に配慮しながら高頻度の打ち上げを両立させる次世代型小型ロケットMiuraは、計画実現まであと数歩のところまで来ているようだ。
参考:
PLD Space
(文・澤田 真一)
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