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米の気候テックがカナダ海上に大型CDRプラント設置、海のCO2吸収力を活用

Techable / 2024年7月3日 18時30分

脱炭素の取り組みが世界規模で進められる中、大気から直接CO2を回収するDAC(Direct Air Capture)技術に温暖化対策の切り札として注目が集まっている。

米スタートアップEquaticは6月18日、カナダのCO2除去(CDR)プロジェクトデベロッパーのDeep Skyとタッグを組んで、カナダ北東部ケベック州海上にCDR大型プラントを設置すると発表した。早ければ2026年の稼働が見込まれるこのプラントは、年に11万トン近くのCO2を回収、3600トンのグリーン水素を生成するという。

UCLAサミュエリ工学部から生まれた気候テック

2021年設立のEquaticは、CO2除去とグリーン水素生成を組み合わせて業界をリードする気候テック。UCLAサミュエリ工学部炭素管理研究所からスピンオフで誕生した。同研究所で開発された技術および特許取得済みの海水電気分解プロセスを用いて、海の持つ大量の炭素を吸収・蓄える能力を活性化・増幅する。

Equaticは2月末にもシンガポールでのCDRプラント設置計画「Equatic-1」を発表したばかり。シンガポール国立水道局とUCLAとの独占プロジェクトで、技術とコスト削減の実証を目指す。今回新たに発表されたケベック州海上プラントはEquatic-1を上回る規模だ。海洋ベースのCDRプラントとしては世界最大、そして北米初の商業規模プラントになるという。

5月末には、米国エネルギー省主催のプログラム「CDR Purchase Pilot Prize」で準決勝ステージに残り、実力を証明した。今回が初開催の同プログラムは、高品質の炭素除去を実現するCDR企業の認定・評価ならびにカーボンクレジットの調達経路確立を目指したもの。

海上プラントながらDOCではなく、電気分解を利用したDAC

大気中のCO2を回収するDAC(Direct Air Capture)技術は日本企業も後発ながら開発に着手しているが、欧米では海水中のCO2を直接回収するDOC(Direct Ocean Capture)技術も研究が進んでいる*。また、海洋生物が吸収・貯留する炭素(ブルーカーボン)も話題だ。

しかし、Equaticの海上CDRはあくまで海水を利用した「DAC」プラントで、「DOC」ソリューションではない。同社が着目・活用したのは、海水の電気分解プロセスによるCDR。海にはそもそも、CO2年間排出量の30%を吸収する能力がある。CFOのTodd Kirschner氏は、自社技術について「自然界と同じ化学反応です。ただし、速度は自然の99,000倍」と話している。

電気分解した海水に大気中の空気を通す(DAC)ことで、CO2 は海水中に自然に存在する溶解物質や個体鉱物として半永久的に封じ込められる。最終的には岩石を利用して処理済みの海水を中和、海の構造を維持するという。

また、同社プラントのCDR過程ではグリーン水素が生成される。CO2を出さない次世代エネルギーとして注目を集める水素だが、なかでもEquaticのグリーン水素はCO2除去の副産物である点が特徴だ。同社プラントが生成する・生成予定のカーボンクレジットとグリーン水素は、米航空大手ボーイングに先行販売されている。

1トンのCO2除去コスト100ドル以下が目標

DACに限らず、CDR技術の課題はコストがかかることだ。World Economic Forumの記事によると、DAC技術が普及するためには、1トンのCO2除去コストを現在の600~1000ドルから200ドルに下げる必要があるという。Equaticはこのコストを2030年までに100ドル以下にすることを目指している。

同社の取締役会長Edward Muller氏は「利用しやすく、費用対効果の高い恒久的なCDRソリューションの必要性について、世界中の行政機関が声を大にしている。当社の商業規模施設はこうしたニーズに直接応えるものだ」と述べた。

環境問題への取り組みが政府・企業に求められる時代にあって、Equaticのプロジェクトには世界中から注目されることになりそうだ。海に囲まれた日本としても、DOC技術はもちろん同社の技術を参考にできるのではないだろうか。

※DOC技術によるCO2循環システムを実現させた米企業Capturaは2021年にカリフォルニア工科大学で設立されたスタートアップ

参考・引用元:Equatic
Deep Sky
GlobeNewswire

(文・Mizoguchi)

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