飲食業界向けオールインワンDXのRestaurant365、1億7500万ドルの大型資金を調達
Techable / 2024年7月12日 10時0分
飲食業界向けにオールインワン型の業務管理プラットフォームを提供する米国カリフォルニア州のRestaurant365(以下、R365)は今年5月、1億7500万ドルの大型資金調達を発表した。
この資金調達は12四半期連続で販売目標を上回ったという成果に続くものだ。R365は昨年5月に実施された1億3500万ドルの資金調達以来、評価額10億ドル以上のユニコーン企業として認められている。
「従業員トレーニング」「タスク管理」を新たに発表今年5月、R365はシカゴのマコーミックプレイスで開催された全米レストラン協会(NRA)ショーのブースで、新製品と新機能を発表した。
このうち「従業員トレーニング」は、R365が買収したレストラン向けトレーニングプラットフォーム「ExpandShare」によるもので、AI駆動の教材作成とナレッジベースによって従業員の効果的なスキルアップを支援する。「タスク管理」は従業員のコミュニケーションのハブになることで、組織全体の生産性向上を支援するというものだ。
飲食店のバックヤード業務向けプラットフォームを提供していたR365は、このように自社開発、買収およびパートナーとの提携によって、いまや顧客体験をつかさどるフロントエンド業務までを統合したオールインワンDXとして発展してきた。
規模を問わずR365のオールインワン型プラットフォームの導入によって、一気通貫の飲食店DXが完成する。米国の飲食業界向けDXは、いまや「DXオートメーション」の様相をみせているのだ。
Toastとのアプリ統合により飛躍をとげたR365今回の資金調達は、R365の長期パートナーであるICONIQ Growthが主導し、KKRやL Cattertonなどが参加して行われた。R365は今回の発表において業績は昨年度より向上したとしか述べていない。しかし昨年5月には、R365がすでに4万店以上の飲食店にソリューションを提供しており、収益は1億ドルを超えたことを明かしている(参考)。
R365は積極的なソリューションの拡張を進めているが、昨今の飛躍は戦略的パートナーであるToastとのアプリケーション統合によるものだろう。
顧客体験をつかさどるフロントエンド業務は、API連携したToastのプラットフォームが管理する。
Toastが2021年に実施したIPO(新規公開株式)は、その年の最大規模となった。ToastはPOSソリューションを提供するが、それは単に製品としてのPOSの提供に留まらない。R365とToastのソリューションには似ている部分があるが、この統合においてToastは、飲食店のフロントエンド業務全般を担っている。
組込型金融と組込型会計で顧客体験を革新するR365とToastのいずれも組込型金融と組込型会計を統合することによって、さらに顧客体験を革新している。この統合によるR365のオールインワン型プラットフォームの機能拡充は著しい。
組込型金融とは、API連携によって非金融事業者のサービスに銀行サービスを組み込むことだ。組込型会計とは、同様にAPI連携によって簿記や会計機能が呼び出せることだ。これによって、銀行サービスに切り替えて呼び出す必要がなくなる。また簿記会計ツールを別途、用意してデータを入力しなおす手間を省くことができる。
R365やToastなどのプラットフォームアプリ内でシームレスにデータを管理することで、業務横断的なデータ分析ができるというメリットも大きい。
API連携とマイクロサービス化で進む飲食業界向けDXR365のようなオールインワン型を目指すアプローチからポイントソリューションまで、米国の飲食業界にはR365の競合がひしめいている。
しかし米国の飲食業界においては、競合になるよりもむしろ協業を促す強力なバイアスが働いている。理由は単純に、1社のソリューションで網羅するには飲食業界は広すぎるからだ。オールインワン型の雄であるR365ですら、もともとはバックエンド業務に強みを持っていた。多様な強みをもったベンダー群のエコシステムによって、米国飲食業界のDXは発展を続けると思われる。
それをテクノロジーの面で支えるのがAPI連携とマイクロサービス化だ。R365やToastに限らず、現代のクラウドネイティブアプリケーションは、マイクロサービスと呼ぶサービスのモジュール化とAPI連携が大前提だ。
米国飲食業界向けDXは、API連携とマイクロサービス化によって、オートメーションDXとして発展を続けるだろう。
参考・引用元:Restaurant365
(文・五条むい)
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