【CEOインタビュー】ミスト吸引でトークン獲得、シンガポールMetacarbon|ローエンド開発の断念から一転、ブロックチェーンとの相性に着目
Techable / 2024年9月3日 16時30分
“アジア最大規模”をうたうWeb3グローバルカンファレンス「WebX 2024」が、8月28・29日の2日間にわたってザ・プリンス パークタワー東京にて開催された。
トレンドは「〇〇 to Earn」、各種DePINに注目会場では、「〇〇 to Earn」をうたうサービスが複数出展されており、DePIN(分散型物理インフラストラクチャネットワーク=Decentralized Physical Infrastructure Networks)の流行を示していた。
DePINとは、ブロックチェーン技術を活用して現実世界のインフラストラクチャを分散化・トークン化するという近年注目の概念。新しいインフラ構築のかたちとして発展しているDePINは、いまや企業の事業開発における注目のキーワードとなっているだけでなく、ユーザー側からみても“身近な活動で報酬を獲得できる”というインセンティブ性から話題となっている。
同イベント会場では、すでに人気を確立している「SNPIT(スナップイット)」も出展。これは写真を撮るだけでトークンを獲得できる“Game-Fi”*プラットフォームとして注目を集める「Snap to Earn」プロジェクトである。
その他、同じくゴールドスポンサーとして出展したGOLFINは、コースを回ったりゴルフゲームをプレイしたりしてトークンを獲得するDePIN。また、スクワット運動でトークンを獲得できるアプリ「Wellxy: Jetpack Squat」は「Workout and Earn」という印象的なキャッチコピーを掲げて出展しており、別途取材をおこなった。
こうした“健康的”なDePINに混ざって、「Smoke to Earn」というコピーを掲げていたシンガポール企業Metacarbonが目を引いた。企業サイトに飛んでみると、喫煙可能な年齢かどうかを確認され、電子タバコ市場の成長性が訴求されている。
筆者は事前調査の段階で、「電子タバコを吸ってトークンを稼ぐ」というやや“非健康的”なプロジェクトが時代に逆行するのではと気になっていた。ところが会場で実際にブースを訪れてみると、ポスターの文言は「Smoke to Earn」ではなく「Breathe to Earn」となっている。
展示製品も電子タバコ用の喫煙器具ではなく、ニコチンを含まないミスト吸引具のベイプだった(そもそも会場は全面禁煙だった)。
ベイプでミスト吸引してトークンを獲得する「Metacarbon」受け取ったリーフレットを見ると、Metacarbon社の製品は21歳以上が対象ではあるものの、電子タバコではなく「天然植物エッセンスから抽出された健康ネブライザー」とのこと。ペパーミントグレープなどの爽やかなフレーバーが中心で、二日酔いの防止や肝臓の保護といった効能をうたっている。
電子タバコではなくミストであり、「Smoke to Earn」ではなく「Breathe to Earn」にはなっているが、基本的な所作に変わりはない。Metacarbon社のチップを搭載したベイプを購入して専用のDAppと同期すれば、ベイプでミストを吸引することでトークン「$MIST」を獲得できる。
実際にマイニングする様子を見せてもらったところ、ベイプで吸引すると同時にアプリ画面に霧が現れ、中央の数字が増えていく様子が確認できた。
なおベイプの端末自体は、Metacarbon社製とは限らない。同社は多数のメーカーとパートナーシップを提携することで他社製品にチップを搭載しており、チップさえ搭載されていればユーザーはメーカーを気にせず端末を購入して$MISTをマイニングすることができる。
ブースに展示されていたベイプ端末はパステルカラーと丸みのあるフォルムで女性の人気も高く、多くの来場者の注目を集めていた。その対応に追われる慌ただしい合間を縫って、設立者兼CEOであるMichael Meng氏が取材に答えてくれた。
50以上の消費者製品を試した結果たどりついたベイプ――DePINの中でも「Breathe to Earn」というのは珍しいと思いましたが、このプロジェクトが誕生するきっかけは何でしたか。
Meng:私自身がコンピューターサイエンスを専攻したということもあり、当社チームはブロックチェーン技術について知った2015年にこの分野に参入しました。以来ローエンド技術の開発に取り組んできましたが、2年前に以前のプロジェクトを諦めたんです。
そして、ブロックチェーン技術に基づくアプリを作ろうということで新たな取り組みを始めました。チームの考え方は非常にシンプルです。ブロックチェーンは確かに価値のあるツールですよね。しかし、「優れた道具」は、現実に確かに存在するビジネスの強化に使われるべきでしょう? 重要なのは、その技術や道具をいかに事業の運営に適用するかです。
そこで私たちは、さまざまな消費者製品を検討しました。私の記憶が確かなら、50以上の製品を試したと思います。いろいろ見た結果として最終的に、フレーバーミストのベイプに注力することに決めました。
――たくさん検討した末にベイプにたどりついたんですね。決め手は何だったんでしょう?
Meng:ベイプを選んだ理由は、価格が手ごろで人気が高く、広く普及していることです。ベイプの持つ多くの条件が、ブロックチェーン技術と相性抜群でした。
そこでこちらの製品とプロジェクトを立ち上げました。ベイプにウォレットを統合したんです。私がシステムマネジメントを担当しています。ここにあるマイナーやベイプは、すべて当社のシステム管理下にあるものです。
当社が行ったのはただひとつ、「従来型ベイプのデジタル化」なのです。ベイプというオフラインの道具をデジタル市場に持ち込み、セキュリティトークン化したのです。クローズドサイクルのロジックですね。
2022年の第一四半期にこのプロジェクトを立ち上げて、現在までに製品を第5世代まで開発しました。今回会場で展示しているのは、第1世代マイナーと第2世代マイナーになります。第3~第5の新しい世代の製品は、来年のこのイベントには持ってこられると思います。
ベータ版アプリを6月にリリース、日本語対応はすぐにでも――アプリの正式ローンチはいつ頃の予定でしょうか。
Meng:今の計画では、10月あるいは年末を目指しています。3か月内にはローンチしたいですね。トークンはまだリリースしていません。当社はアーリーステージですので。今年6月に市場参入したばかりです。
アプリは現在マレーシアと香港のみのベータ公開で、ユーザー数は1万人ほどです。当社製品が日本の消費者の皆さんに気に入っていただけるなら、日本語版をぜひリリースしたいですね。
とくに今回のイベント参加で、日本市場の状況についての知見や、日本の消費者の皆さんからのフィードバックが得られるので、それらをふまえて日本語対応の時期を決めたいと思っています。言語対応そのものには大きな困難はないので、取り掛かればすぐ実現するでしょう。
今後は、シンガポール開催のTOKEN2049や、10月にドバイで開催されるFuture Blockchain Summitに参加予定です。また、11月や年末にはアメリカやドイツでのイベント参加など、一連の計画があります。
――資金調達の状況は?
Meng:現在、暗号通貨取引所へのリスティング前段階としては最終ラウンドに入っています。先ほど、Solanaのトップの方と投資機会と潜在的な戦略的パートナシップについてお話ししたところです。より深く掘り下げてお話しするために、香港での対面ミーティングの予定を組むことができました。
この最終ラウンドは、リスティング前の投資家獲得の最後のチャンスなので、当社にとって非常に重要です。将来的なパートナーシップの可能性にワクワクしています。
参考:Metacarbon
(取材/文・Techable編集部)
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