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時代は「読み・書き・タイピング」?キーボード市場堅調、最先端は分割型エルゴや磁気スイッチ

Techable / 2024年9月10日 18時0分

若者の“パソコン離れ”が取り沙汰され、日本では10年ほど前から「新入社員がPCを使えない、キーボード入力に慣れていない」といった話が聞かれてきたが、今後は逆の現象が始まるかもしれない。小中学校で従来の「読み・書き」と同じように「タイピングスキル」も重視されはじめたのだ。

「読み・書き・タイピング」で小中学生の入力スキル向上中

日本では2020年から小学校でプログラミング教育が必修化。文部科学省のGIGAスクール構想推進により、小中学校で1人1台の学習用情報端末が整備された。文科省の指針では、小学6年生までに10分間でローマ字200文字程度の入力ができるようになることが目安とされている。

クラウド型デジタルAI教材「らっこたん」を使用した「第4回全国統一タイピングスキル調査」の結果(3月公開)からは、特に小学6年生のタイピングスキル向上が顕著だったことが分かる。

また、同教材を使用した全国実証プロジェクトの参加者数が目標の100万人に到達したことも7月に発表された。131の自治体および2184校から参加申し込みがあったという。

「プログラミング教育 HALLO」も、「夏休みの朝活」として小中学生向けタイピングキャンプ2024を開催。さらに、2学期直前の8月27日にも全国の小中学生を対象としてタイピングコンテストの開催を発表したばかり。こうした動きは徐々に広がっており、“タイピングスキル”の注目度を感じさせる。

成長セグメントはゲーミング、メカニカル、エルゴノミクス

音声入力も徐々に浸透しているが、精度はまだ改善が必要な状況という指摘も。キーボードを使ったタイピング入力は、当分の間は最も一般的な入力方式であり続けるだろう。

ところでキーボード全体でみても、市場規模の拡大は堅調だ。需要増のゲーミングキーボードやメカニカルキーボードはそれぞれ7%や11%の成長率が予測されている。

メカニカルキーボードは、初期費用は高いものの耐久性やカスタマイズ性も高く、プログラマーやゲーマー、タイピングマニアなどに愛用されることが多い製品だ。

ちなみにクラファンサイトのキーボードはメカニカル方式がほとんどで、Kickstarterで見つかるメカニカルキーボードのプロジェクトは138件、メンブレンとパンタグラフは0件だった(一般的なデスクトップPC付属のキーボードは、大半がコストの低いメンブレン方式)。

また、エルゴノミクスキーボードは2025年までにキーボード市場の17.6%を占めると予測されている。人間工学に基づく設計で疲れにくいため、従業員の健康と作業効率の観点から関心と需要が高まっているのだ。Kickstarterの検索では57件がヒットする(執筆時点)。

今後エルゴノミクスキーボードの普及が進めば、オフィスワーカーもメンブレン方式以外の製品を使える機会が増えるかもしれない。

キーボード市場の未来予測も兼ねて、クラファンサイトで注目を集めるキーボード製品をチェックしてみた。

猫背や肩こり解消が見込める分割型は中央の空きスペースも魅力

まず、もはや「ボード」ではない分割型キーボードから、昨年末の人気プロジェクトNocFree Liteを紹介。90年代初頭から進化を続ける分割型は人間工学に基づく設計で、エルゴノミクスキーボードの1種である。

肩を開いた状態で入力ができ、猫背や巻き肩、肩こりの予防・軽減につながるのが最大のメリットだ。慢性的な肩こりに悩む多くのオフィスワーカーにとって魅力的ではないだろうか。

肩関節の構造上、人間の両腕の自然な位置は体の真横かやや後ろ寄り。現代人は両腕を体の前に置くことが多いが、これはじつは不自然な姿勢なのだ。姿勢を改善するには肩を後ろに引いて胸を開く必要がある。分割型キーボードなら、入力中もより自然に近い姿勢を維持できそうだ。

また、開発元の香港企業NocFreeは、真ん中にできるスペースがノートやコーヒーカップの置き場所、猫の居場所になると訴求している。創業者のSolar Zou氏が起業中に椎間板ヘルニアに苦しみ、そこから分割型のエルゴノミクスキーボード開発につながったそうだ。

近年注目の磁気スイッチ式「K2 HE」は1億3,000万円獲得の大人気

NocFreeのオプション・パームレストが高級感のあるウォルナット製であるように、クラファンでは一部に木材を使ったキーボード製品が人気を博すケースが散見される。

中でもKeychron社の「K2 HE」は、終了まで残り6日の時点で約5,000人の支援者から1億3,000万円近い資金を獲得している大人気プロジェクトだ。Keychronのベストセラー商品であるメカニカルキーボード「K2」をアップグレードしたもので、フレームの両サイドにローズウッドを取り入れたルックスにまず目を引かれる。

だがじつは、K2 HE最大のアップグレードポイントは見た目ではない。HE (Hall Effect)*磁気スイッチを採用した「マグネティックキーボード」という点だ(※ホール効果。電流磁気効果の一種)。

磁気スイッチは、キー(スイッチ)の底部に磁石が取り付けられたもの。キーが押下されると基板上の磁力が強くなるので、本体側に搭載されたホールセンサーが磁界の変化を検出、文字が入力される仕組みだ。

磁気スイッチは、アクチュエーションポイント(入力判定される深さ)を自由に設定できるのが最大の特徴。K2 HEでは0.1ミリ単位という精度で設定可能だ。

磁気スイッチ自体は新しいものではないが、オランダのスタートアップWootingが「Lekker」スイッチを2019年に発表、2020年に同スイッチを搭載したキーボードを販売して以来、注目度が高まっている。K2 HEのプロジェクトページでは「磁気スイッチがニュースタンダード」と書かれているほどである。

LED画面付きの変わり種キーボードもプロジェクト成功

ウッドパーツ以外には、なぜかLED画面付きという共通点のあるキーボードもそれぞれ成功を収めている。

メカニカルキーボード「AM RGB 65」は、開発者たちの思い出が詰まったNintendoの「Game Boy」をキーボードの姿で蘇らせたものだとか。LED部分にはユーザーそれぞれ自作したアニメーションを表示可能。

爽やかなカラーリングの「DynaTab 75X」もメカニカルキーボードでLED画面付き。高いパーソナライゼーションとカスタマイゼーションを売りとする製品なので、LED画面の表示も当然カスタム可能だ。

Kickstarterでは今後も、パーツに分かれたモジュラータイプや、キーキャップがセラミック(陶器)製といった、ユニークなプロジェクトがローンチを控えている。

キーボードのプロジェクト全体では香港メーカーが目立つこと、独特なデザインの製品は日本のアニメやゲームファンが愛をこめて作ったものだったりする(香港企業KBDcraftの商品名はすべて『エヴァ』の使徒にちなんだもの)など、クラファンウォッチングはいろいろな知見が得られて興味深い。

参照:
NocFree社LinkedIn
PR TIMES

(文・Techable編集部)

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