【特集】「産んだ直後はずっと自分が泣いてた」 新たな産前産後ケア施設がオープン 母親を優しく包む“ゆりかご”に 《新潟》
TeNYテレビ新潟 / 2024年7月15日 17時55分
「47人」これは、おととし、産後1年以内に自ら命を絶ってしまった女性の数です。
産後うつに悩む母親は少なくありません。
そうした中、新発田市に、産前産後のケアをする施設がオープンしました。
母親たちの心のよりどころとなっています。
■新たにできた“お母さん”を救う場所
ここは新発田市の産前産後ケア施設「ゆりかご」。
ひとり親家庭などを支援する「フードバンクしばた」が新発田市内の古民家を借りて、ことし5月に立ち上げました。
週に3日、1日6組まで沐浴(もくよく)や昼食などの支援を受けることができ、出産前後の母親と、1歳未満の乳児は無料で何回でも利用できます。
沐浴を手伝うスタッフ 中山恭子さん
「だんだん首太くなってきて、こういうところもムチムチになるから、くびれのところよく洗ってね」
昼食をつくるスタッフ 本間きみ子さん
「なるべく野菜をたっぷりタンパク質も3分の1とれるように」
栄養満点の温かい食事も大好評です。
生後8か月の母親(45)
「家だと立ちながら冷たいご飯をおんぶしながら食べたりとか、そういうことがあるんですけど、ここに来るとおいしいご飯が食べられるのでそれだけで幸せ」
生後8か月の母親(40)
「パパじゃダメだったりするので、ベテランの方とかに見てもらうと安心して休めるんじゃないかなと思う」
■元助産師や看護師など 子育てのベテランたちが母を支える
施設を支えるスタッフは総勢23人のボランティア。
ほとんどが助産師や看護師、保育士などを経験した子育てのベテランたちです。
保育士や幼稚園教諭を49年務めた鈴木京子さん。スタッフのまとめ役です。
鈴木京子さん
「赤ちゃんは、私たちがしっかりお世話するので心配しないでしっかり休んでくださいっていうそういう試みです」
環境の変化や慣れない育児で精神的に不安定な状態になる「産後うつ」。
国のまとめによると、おととしは47人が産後1年以内に自ら命を絶ってしまったといいます。
■泣きだす我が子……でも、お母さんだって1年生
新発田市に住む児島咲さん(28)です。去年、第1子の倫(みち)ちゃんを出産しました。
夫の大元(ひろゆき)さんの休みは日曜日。平日は朝5時ごろに仕事に向かいます。
近くに住む大元さんの実家に行くこともありますが基本は倫ちゃんと2人きり…
倫ちゃんが1人で遊んでいる間に夕食の準備をしますが……。
「(倫ちゃんの泣き声)」
すぐにおんぷをして泣き止ませながらごはんを作ります。
児島咲さん(28)
「肩腰が本当にやばいです、シップだらけ」
24時間休みのない子育て……けれど、お母さんもまだ1年目。自分の精神を保つのがやっとの時もあったといいます。
児島咲さん(28)
「産んだ直後は本当にずっと泣いてて、きょうもこの子の命を守れたなと思って」
■「大切なのは自分たちも楽しむこと」ボランティアが集まる理由
産後のサポートをするため国は3年前、「産後ケア事業」を市区町村の努力義務としました。
支援施設の利用費の一部は自治体が負担し、通所型の場合、新潟市では1日2000円(初回のみ無料)、新発田市では1000円から1万円で利用できますが、子どもの年齢の上限が短く回数に制限があるケースも。
そうした中、より手厚いサポートができるようにと立ち上がったのが新発田市の産前産後ケア施設「ゆりかご」です。
オープンを直前に控えた4月、スタッフが準備に追われていました。
スタッフで会議
「一応優先順位は一番が救急セットですので、そのあとちょっと余裕があったらお風呂・バス製品でいいですか?」
運営を支えるのは支援者から寄せられる寄付金。この日は必要な備品の買い出しへ……予算は3万円です。
やってきたのは、買い物好きのスタッフ5人組。カゴの中には救急セットではなくついついこんな物まで……
買い物中のスタッフ
「これなに?ボウルが入ってるんだけど」
「なんでボウルが入ってんの?」
「これ食事つくるときにいるんだね」
「いるんです、説明したから大丈夫(笑)」
「わかったよ~」
「バスマットはいりません」
「バスマットはいらないよ、もう」
そんなに買って大丈夫?予算内に収まったのでしょうか。
買い物中のスタッフ
「2万1千円、これです」
「よかったですね、収まって」
「よかった~」
「救急道具を入れる箱は買わなかったの?」
「あ、そうだ救急箱買わなかった、そういえば(笑)」
おちゃめなところもありますが、この仲の良さが、ボランティアでスタッフが集まる理由の一つ。大切なのは、自分たちも楽しむことだといいます。
渋谷まさ子さん(助産師歴37年)
「わたくしもう、83歳。最後の仕事と思って参加させていただいてます」
中山恭子さん(助産師歴52年)
「ボランティアでどうでもいいってことではなくて、自分の空いた時間をお母さんに注ぎたい、赤ちゃんをかわいがってあげたいって思いで集まってきた人たち」
■母親たちの母性も育ててあげたい
こうしてできた「ゆりかご」。浴槽は母親が足をのばして入れるようにリフォーム。
2階にはゆっくり眠れるようベッドも備えました。
安心して過ごすことができる、母親たちの心のよりどころとなっています。
生後2か月の母親(26)
「子どもと2人きりでずっと部屋にいるとしんどくなっちゃって、育児が大変とかじゃないんだけど、気持ち的に社会と離されてる感じがしてしんどくなっちゃって」
生後9か月の母親(33)
「よくわからないのに涙が出たりとかはありました。ゆりかごは第2の実家みたいな感じでよくしてもらってる」
去年、第1子を出産した児島咲さん(28)。この日も、7か月の倫ちゃんを連れてゆりかごを訪れていました。
児島咲さん(28)
「1回ゆりかごの予約がとれなかったんですけど、それでも泣きながら電話したときもあって、そしたら“何も持たなくていいから赤ちゃんと2人ですぐ来なさい”って言ってくれて。家でいつも1人なのでずっと一緒にいると気が滅入る……だからこういうところがあると、本当にいいなと思う」
母親にとっても子育ては“初めて”だらけです。
いろいろな人との関わりの中で気づく我が子の成長。それが愛おしさとなり母親の母性を育てることにもつながるといいます。
「ゆりかご」スタッフ
「わたし2人目つくろうと思いますって言われて。その言葉って想像してなかったけど、うれしかった。“なんで2人目作ろうって思ったの?”って聞いたら“ゆりかごがあるから”って」
1人で悩むことがないように。「ゆりかご」の温かさが優しく母親たちを包んでいます。
(2024年7月10日(水)「夕方ワイド新潟一番」県内ニュース放送より)
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