【特集】“日本海側の地震”の特徴とは 専門家が示す「能登半島地震」と「中越地震」の“似たような傾向” 今後は 《新潟》
TeNYテレビ新潟 / 2025年1月1日 12時31分
2024年に話題となった出来事や関心を集めたニュースについてお伝えしています。2024年は1月に能登半島地震が発生、そして10月で中越地震から丸20年となりました。今回は11月に放送した地震についての特集です。
中越地震では余震が多かったという特徴がありますが、これは断層の位置や数が関係していることが分かっています。2024年1月に発生した能登半島地震にも似たような傾向があり、専門家は断層から地震の特徴を把握することで、できる備えが変わってくると呼びかけています。(内容は取材当時のものです)
震央に建てた目印
中林道泰さん
「これが20年前に発生した中越地震の震央の場所を示す標柱です。生活圏、人が生活していて、(人が)来られる場所に震央があるのは珍しいと聞いております」
長岡市の旧川口町、コメづくりが盛んな町が地震の震源地となりました。
中越地震で大きな被害
2004年10月23日に発生した中越地震で震源となった旧川口町では最大震度7を観測。
606棟の建物が全壊、住民6人が犠牲になりました。
震央は旧川口町の田んぼ
地震発生から1年後。
大きなクイを先頭にして歩くのは、旧川口町の住民たち。
「もうちょっと上か。失敗したな、まあいいか、もうちょっと先行きます」
探していたのは震央。震源の真上にあたる地点です。
GPSを頼りに歩いた結果、たどり着いたのが田んぼの中でした。
中林道泰さんは、地震の記憶を次に伝えるために、メモリアル施設の管理をしています。
当時は旧川口町の道の駅で働いていました。
中林道泰さん
「余震が多かったイメージがありますね。常に揺れていた。1回でも(揺れを)経験すると揺れているんだか揺れていないんだが分からないですが常に揺れていたイメージがあります」
20年前…旧川口町の地下で何が起きていたのでしょうか。
余震の多かった中越地震
中越地震の特徴としてあげられるのが余震の多さです。
こちらのグラフは、発生から5日間でマグニチュード4以上の地震が何回発生したかを表しています。
赤い折れ線で示された中越地震の回数が他の地震より多くなっていることが分かります。
それには、地震を引き起こした断層の数が関係しているといいます。
余震ではなく“別の地震”
こちらは中越地震の震源地となったエリアの地下を模式化したもので、色がついているのが断層です。
新潟大学災害・復興科学研究所 卜部厚志教授
「赤いところが一つの断層面で地下の断層だと考えると青い星のところが地震ということになります」
卜部教授によりますと、本震は「赤い断層」で発生しましたが、その後は「オレンジの断層」や「緑の断層」でも地震が発生していたということです。
新潟大学災害・復興科学研究所 卜部厚志教授
「普通だと一つの断層が動いて本震で断層ができて、そこで余震が起こっていくことも多いが、中越地震の場合はちょっと離れたところで完全に違う断層がもう一回割れているので、総じては全部余震と言いますが、ちょっと小さめの別の地震が起こっている」
被災者の記憶に刻まれた余震。実は本震の断層とは離れた別の断層が割れて地震が起きていたというのです。
複数の断層の活動によって余震が多くなる現象は、能登半島地震でも起こっていた可能性があります。
複数断層で余震…能登半島地震でも
東京大学地震研究所観測開発研究センター 篠原雅尚教授
「余震分布のかたちが私たちがつくった、日本海プロジェクトの“断層モデル”と非常によく一致することが分かりました」
東京大学の篠原雅尚教授は、東日本大震災のあとに、日本海側の地震や津波のリスクを知る必要があると、活断層を調査するプロジェクトを進めてきました。
密集する断層
その結果を示すのがこの図で、NT2やNT3などは断層を表しています。
能登半島付近に断層が密集していることがわかります。
断層に沿って地震が
東京大学地震研究所観測開発研究センター 篠原雅尚教授
「これ(黄色線)が、日本海の断層モデルNT2、3、4、5、6ですね。地震が起こった3週間から1か月ほどの余震を全部決めてプロットした図なので、これをみると(余震が)断層に沿っているということ(が分かります)」
このことから篠原教授は断層モデルの正確性が確認できたと考えていて、ほかの地域での地震を想定するのに役立つと指摘しています。
新潟県沖では断層が近い
この断層モデルは新潟県沖にも。
篠原教授によると、断層の位置が近いことから津波がすぐに来る可能性があるといいます。そして、複数の断層が連動して揺れが大きくなる可能性があるということです。
東京大学地震研究所観測開発研究センター 篠原雅尚教授
「中越地震、中越沖地震、能登半島地震って仲間というか。断層そのものが非常にたくさん存在していて。なおかつ非常に複雑な壊れ方をするというのが日本海側の、ある意味、地震の特徴かと思います」
今後動く可能性がある断層は
新潟大学の卜部教授です。やって来たのは新潟市西区。
新潟大学災害・復興科学研究所 卜部厚志教授
「長岡平野西縁断層というのが地下にある場所です。いろんな活断層、ほかにいっぱい新潟県内にありますけれども、その中からみると次は動くならこれだよねというように思っています」
ここには長岡平野西縁断層帯があり、断層から見て角田山や弥彦山がある方角には断層活動の隆起によってできた地形があるということです。
長岡平野西縁断層帯
また、この断層帯は、小千谷市付近から新潟市の沖合まで伸びていて、すべてが一緒に動いた場合広い範囲に被害が及ぶことが想定されています。
新潟大学災害・復興科学研究所 卜部厚志教授
「地震の周期は難しくて規則正しく何年で動いているというわけではないが、(前回が)1200年前で(周期が)1500年から2000年ということで、我々の生活からすれば明日とか明後日という感じではないが、科学的にみるとすぐという評価になっています」
30年以内に地震が発生 推定2%以下
県によると、30年以内に地震が発生する確率は2パーセント以下と推定されています。
卜部教授は広い範囲で被害が出た場合、支援物資が円滑に届かない可能性もあるとして、食料など備蓄の必要性を強調しています。
新潟大学災害・復興科学研究所 卜部厚志教授
「新潟市にとって能登半島地震も大変だったがもっと大変なものは実はすぐそばにあるということを改めて思っていただけると備えていただけるといいのかなと思います」
最大震度7の中越地震から20年。1年前の元日に能登半島地震も起きました。
またいつ起きるかわからない大地震。被害を減らすためにはその特徴を知り備えていく必要がありそうです。
(2024年11月14日「夕方ワイド新潟一番」放送)
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