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「日本ラグビーに何かしろ」 そう言う前に海を渡った堀江翔太の決め事「まず自分が成長せんと」

THE ANSWER / 2024年5月28日 8時43分

26日の決勝直後、ファンの声援に応える埼玉の堀江翔太【写真:矢口亨】

■引退・堀江翔太の国内最終戦

 ラスボスは最後まで存在感を発揮した。26日のラグビー・リーグワンプレーオフ決勝(東京・国立競技場)。レギュラーシーズン1位・埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉)は同2位・東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)に20-24で敗戦。2季ぶり7度目の優勝に届かなかった。今季限りで現役を引退する元日本代表HOの38歳・堀江翔太は後半から出場。個の成長を大切にして海外挑戦し、日本ラグビーに多くの財産を残した28年間だった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 ◇ ◇ ◇

 思うようにいかない。一本のパスが歩んできたラグビー人生の厳しさを表した。

 4点を追った後半39分。埼玉の逆転トライに国立が沸騰した。しかし、レフェリーが取ったのはTMO(ビデオ判定)のジェスチャー。直前のプレーで堀江のパスがわずかに前へ流れていた。痛恨の反則でトライは幻に。28年のラグビー人生最後の年。レギュラーシーズンで16戦全勝しながら、無情にも敗戦を突きつけられた。

「全勝して、優勝して引退っていう漫画、ドラマみたいにいかないのが非常に僕らしい。そんなうまいこといかんなって神様に教えられたみたい」

 ノーサイド。相手主将のリーチ・マイケルと握手を交わし、駆け寄ってきた後輩のHO坂手淳史に告げた。「ナイスファイト。これからチーム、つくり直していかなあかんな」。場内を一周し、リーグ史上最多となった5万6486人の観客に挨拶。グラウンドを後にする直前、堪えていた涙が止まらなくなった。

「泣かずに出ていきたいなと思ったんですけど、めちゃくちゃお世話になった人と顔を合わせちゃうと安心した」

 小学5年で出会ったラグビー。2009年に代表初キャップを獲得し、11年からワールドカップ(W杯)に4大会連続出場した。15年イングランド大会は、“ブライトンの奇跡”と呼ばれた南アフリカ戦の歴史的金星に貢献。19年日本大会は全5試合に出場し、史上初のベスト8進出を支えた。昨年フランス大会はチーム最年長で4試合中3試合に先発。歴代6位の代表通算76キャップを誇る。

 最前線で体を張り続け、スクラムの屋台骨に。ドレッドヘアーをなびかせ、強烈な存在感が相手を恐れさせた。ついた異名は「ラスボス」

「死ぬほど嫌なプレッシャーを抱えていた」と桜のジャージを背負った一方、13年に南半球最高峰リーグ・スーパーラグビーのレベルズに挑戦。サンウルブズでは初代主将を務めた。世界で勝てなかった日本ラグビーを戦えるチームに押し上げた功労者の一人。ただ、本人は意外にも「個の成長」を大事にしていた。

■「日本ラグビーに何かしろよって言う前に…その思いでずっとやってきた」

「僕は必死すぎて『チームを引っ張ったろ』みたいな感じではなかった。スーパーラグビーに行ったのも『まずは自分が成長せんと』と思ったから。成長せんと、絶対に周りに良い影響を及ぼせない。『日本ラグビーに何かしろよ』って周りに言う前に、まずは自分が成長せんとそれは絶対にできない。

 その思いでずっとやってきた。そこらへんがチームのためになっていたら嬉しいなって。全く自分のおかげとか思ってないです」

 世界で得た経験を後輩たちに惜しげもなく伝えた。

 遠征以外で海外に行ったことはない。家族旅行中も「いつ練習を入れようかな」と常に頭のどこかにあった。全力で駆け抜け、人生を捧げてきたからこそ笑って言い切れる。「本当に悔いのないラグビー人生。生まれ変わってもラグビーしません」

 15年に首を手術するなど怪我は付きもの。それでも壁を乗り越え、W杯出場まで復活できたのは、30歳で出会った佐藤義人トレーナーから怪我をしにくい体づくりを学んだから。「もっと早く知っておけば怪我もなく、いいパフォーマンスを出せる選手がたくさんできる。それをいろんなスポーツ選手に伝えていきたい」。次の役割は明確だ。

「次のステージで自分がどう成長できるか。これから社会の荒波に揉まれると思う。ラグビーでは経歴が凄いかもしれないですけど、社会に出たら全然関係ない。そこらへんはしっかり自分を見つめ直して、変に偉そうにならずいろいろ勉強しながらいきたい」

 この日、ドレッドヘアーのカツラを被って盛り立てるファンもいた。最後の雄姿を届けた国立。痛恨のスローフォワードで優勝は遠のいた。ただ、直後のスクラムで相手の反則を誘い、土壇場で逆転の望みを繋いだのは唯一無二の経験がなせる業。

 埼玉でも、日本代表でも同じHOでポジションを争い、背中を追った30歳の坂手が試合後に放った言葉はラスボスの凄みを表していた。

「若い頃は『経験ってなんやねん』って思っていた。でも、あの経験はチームに必要。それを必要なタイミングで伝えてくれるのは大きな存在だった」

 ◇ ◇ ◇

○…堀江の国内最終戦は終わり、今後は埼玉のロビー・ディーンズHCが指揮を執るバーバリアンズの一員として6月22日のフィジー戦(英トゥイッケナム)にも招集される予定。現役最終戦になる見通しだが、「(HCに)ほとんど出なくていいよって言うてます。僕なんて戦力になってないでしょ。凄く光栄なことですが、凄い選手たちにおんぶに抱っこかなと思います」と笑った。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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