1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. スポーツ総合

高校全国3位の秀才ジャンパーは大学院進学へ 靭帯2本断裂し、筑波大・柾木拓が応援席最前列で知ったこと

THE ANSWER / 2024年5月30日 11時14分

応援団長として指揮を執り、部員を盛り上げる筑波大・柾木拓(前列中央)【写真:中戸川知世】

■陸上・関東インカレで輝いた選手たち 筑波大・柾木拓(4年)

 9日から4日間、行われた陸上の第103回関東学生競技対校選手権(関東インカレ)。2年ぶりに国立競技場で開催された熱戦を取材した「THE ANSWER」は文武両道で部活に励む選手や、怪我や困難を乗り越えた選手など、さまざまなストーリーを持つ学生を取り上げる。今回は応援団長としてチームを盛り上げた筑波大・柾木拓(4年)。高校で走り幅跳び全国3位の実力を誇るロングジャンパーは、昨年7月に左足の靭帯を2本同時に断裂し、歩くことすらできなくなった。大学ラストシーズン、主将に託された役割は応援団長。大学院に進学し、競技復帰を目指す4年生には試練の1年に得た価値観があった。(取材・文=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)

 ◇ ◇ ◇

 薄暗くなった国立競技場がざわつき始めた。大会最終日、残す種目は男子1部・4×400メートルリレーのみ。各校の陸上部員が客席のそれぞれのエリアに陣取り、熱気に包まれた会場のボルテージが、一段と高まった。

 午後4時42分号砲――。

 フューチャーブルーの筑波大最前列に応援団長・柾木の姿はあった。両手を上げて声援を煽り、手拍子で部員を盛り上げる。隣り合った青学大や東学大などの他校もまとめての大応援。活気に満ちたスタジアムは、母校のプライドを背負って競う対校戦の関東インカレを象徴していた。

 神奈川の名門・法政二高出身のロングジャンパー。高校3年で走り幅跳び全国3位に入るなど大舞台で結果を残した。大学2年時には日本学生対校選手権(全日本インカレ)に出場。7メートル59の自己ベスト更新に手応えを感じていた矢先の昨年7月、悲劇が襲った。

「調子が良くて、自己ベストは優に超えられると思っていた時の怪我だった」

 六大学対校戦で左足の靭帯を2本同時に断裂した。


柾木にとって応援席最前列が陸上への考えも変えてくれた【写真:中戸川知世】

■応援団長として「集団でやっている意味を再確認」

 10月に手術し、リハビリの毎日。それでも「やれることをやるだけ」と心が折れそうになったことはなかった。

 もともと研究熱心な性格。自身の怪我は特殊なケースで、通常のリハビリでは不十分だった。「画像検査のデータや皮膚機能、筋力などパフォーマンスに関わるデータを取ってきた」とデータをまとめて変化を研究。論文を出すことも視野に入れている。

 大学最後の関東インカレ。軽く走れる程度は回復したが、跳躍できるまでには至っていない。「今年の関東インカレは暇だな」と思っていた時、入学以来、苦楽を共にしてきた二見優輝主将、堀内律子副将(ともに4年)から託されたのが応援団長だった。

「ずっと自分は出る側だったのでチームでやっている意識は少なかった」。応援席最前列が陸上への考えも変えてくれた。

「集団でやっている意味を再認識できた。自分では考えの及ばないようなことを考えている人がたくさんいる。技術や体力的なアドバイスもそうだけど、モチベーションを保つ上でもいろいろな考えに触れることは有効だと思った」

 怪我をしたからこそ見えたもの。ガラガラに声を嗄らした21歳は、新たな価値観を知った。

 卒業後は大学院に進学し、博士課程を履修する予定。「競技と研究を並行しながら『どうやったら人は高く遠くに跳べるのか』を考え続けたい。競技では自己ベストを更新すれば、また日本のトップで戦えると思う。競技と研究の両方でトップを目指したい」

 試練を乗り越えた秀才ジャンパーの可能性は無限に広がっている。(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください