学生トップを争うジャンパーは京大生 山中駿に聞いた「理系が走り高跳びに向く理由」【日本学生陸上】
THE ANSWER / 2024年6月18日 6時43分
■日本学生個人選手権、負傷明けの山中は走り高跳びで2位
陸上の2024日本学生個人選手権が16日までの3日間、神奈川県のレモンガススタジアム平塚で行われた。男子走り高跳びの決勝では原口颯太(順天堂大2年)がただ1人2メートル23を成功させ初優勝。そして最後の2人になるまで競り合ったのが、日本インカレ2連覇の実績を持つ山中駿(京大4年)だ。工学部で学ぶ異色のジャンパーが、理系の発想がハイジャンプに向く「深い理由」を教えてくれた。
予想された一騎打ちだった。2メートル23にバーが上がり、残ったのは山中と原口の2人だけ。原口が1回目で成功させる一方で、山中は失敗するとそのまま棄権した。この大会は春に痛めた左足首の回復を確認するのが大きな目的。その中で最後の2人に残ったのは、月末に行われる日本選手権へ大きな弾みとなった。
「原口が残るのはわかっていましたけど、今年は強かったですね。みんな」。2メートル19まで4人が残った。原口は2回目で成功させ、山中は3回目で成功。激しい争いを楽しむ余裕があった。
山中は、京大工学部で学ぶ理系ジャンパー。専門はシステム制御で、今後は卒論や大学院入試の準備を進める。学業と競技の両立で忙しい日常を送っているのかと思えば「1人暮らしをしている家とグラウンドが近いんですよ。夜まで使えますし、授業を受けて練習して……」とあまり意識はしていないという。
大学院への進学希望は、陸上を続けるという意味よりも、それが当たり前という学部の環境に影響されている。「もちろん授業もあるので、時間のやりくりはうまくなったかもしれません。ただ修士1年が1番しんどいと先輩は言うんですよね……」。研究生活と陸上の両立に悩むのは、これからのようだ。
一般に、数値や客観的な根拠を集め、分析しながら進めるのが理系の学びだ。日常的にこのような思考を繰り返すことは、競技と関係があるのだろうか。山中は突然の質問にも「あ、あると思います」と即答だった。
京大工学部で学ぶ異色ジャンパーが語る”理系の発想がハイジャンプに向く「深い理由」”とは【写真:中戸川知世】
■理系脳が走り高跳びに向く理由「理解しやすいのかな」
「高跳びって、思った以上に技術がいるんです。例えば100メートルや中距離は思い切り行く種目ですが、高跳びは思い切りだけじゃ飛べないんです」
助走路からしてそうだ。トラック種目のレーンのように、ここを走れと定められているわけではない。「まずどこを走るか自分で決めないといけませんが、これには根拠が必要なんです」。さらに体の動きをイメージするには物理を知ることも不可欠だ。
「回り込む時には遠心力を感じながらの動きになります。体をどう左右に使うかなどは、理系の方が理解しやすいのかなと思います」。日々の練習も、コーチに指示されてというよりは、自身で根拠を求めながら行っているという。
来季以降も、陸上を続けたいという希望を持っている。来年東京で行われる世界陸上への出場を目指し、ランキングを上げていくのが目標だ。現状での自らの課題を、どう見つめているのだろうか。
「2メートル20や30となると、日本人はなかなか跳んだこともない世界になります。コーチも経験したことがない。いろんな選択肢はあると思いますが、フィジカルをもう少し鍛えることが必要かもしれません」
大阪有数の進学校、三国丘高3年時は新型コロナ禍の真っ最中。陸上の練習をできない分受験勉強に打ち込み、京大合格を果たした。経験者が少なく、道が見えづらくなる記録へのチャレンジも、持ち前の思考術でクリアしてくれそうだ。(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
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