「10人いたら10人反対」超安定企業を辞め2軍球団へ オイシックス知念大成の熱すぎる思い「ドラフト30位でも…」
THE ANSWER / 2024年6月26日 7時43分
■激しすぎるプレーにズボンがピンチ「どんどん破れてきたので…」
今季からプロ野球の2軍イースタン・リーグに参加したオイシックスに、躍動感あふれるプレーでファンやNPBのスカウトにアピールしている選手がいる。24歳の知念大成外野手はチームトップ、リーグ3位の打率.286を残し、攻守でチームの核となっている。昨季までプレーした社会人野球の沖縄電力を退社し、プロ入りに懸けてオイシックスへ。周囲が猛反対したという決断の裏側を聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部 羽鳥慶太)
ワイルドすぎるアピールは、NPB球団に届くか。知念のユニホームの着こなしは独特だ。上衣は半袖をまくり上げ、パンツは膝上までしか見せずハーフパンツのようになっている。シーズンが始まってしばらくは、普通のロングパンツだった。それが「どんどん破れてきたので、切っちゃいました」。日焼けした顔に、白い歯がまぶしい。
沖縄尚学高時代は150キロ近いボールを投げる剛腕サウスポーとして知られた。甲子園出場こそ果たせなかったものの、社会人野球の沖縄電力に進むと外野手に転向し、昨季まで5年間プレーした。地元の超安定企業を飛び出て、初の2軍球団に身を投じたのはなぜなのか。
「どうしてもプロに行きたいんです。育成でも、ドラフト30位でもいいって言ったんですが……」
社会人野球、特に企業のチームに属する選手が、育成ドラフトで指名されることは事実上ない。育成選手という制度が、選手が学生生活を終えても野球を続けられる環境の拡大を目的として始まったため、社会人野球と選手の“奪い合い”は避けている。
そのため近年、安定した大企業のチームから、プロ入りへの勝負とばかりに独立リーグへ進む選手が増えている。知念もそのケースだった。「どこかの球団で勝負をかけたいと。会社にも迷惑をかけたと思いますけど、自分の夢を優先させてもらいました」。地元では超安定企業の職にも、未練はなかった。
知念は打っても走っても目立つ身体能力の塊だ【写真:羽鳥慶太】
■橋上監督が認める外野守備「理想的な走り方をしている」
最終的には会社も「ドラフトされるのを楽しみにしているからな」と送り出してくれた。ただ周りは「家族も含めて、10人いたら10人反対という感じでしたね…」。2つ上の兄、大河さんだけが「一度きりの人生だから、勝負したほうがいい」と後押ししてくれた。
50メートルを走れば5秒8、打球速度は最速176キロ。投手時代には最速150キロを誇った身体能力の塊だ。橋上秀樹監督は能力の高さを認めたうえで「今は走塁にしてもイチかバチかになってしまう、いい時はいいけど、悪い時はその反対。それだとNPBでは使うのが難しい選手になってしまう」と次の課題を突きつける。知念も「監督からは『考えて取り組め』と口酸っぱく言われています」とレベルアップにいそしむ日々だ。
外野守備では「捕れるボールは全部取るつもりでやっています、景色もいいし」と、猟犬のように右中間、左中間の打球をどこまでも追う。指揮官も「見えないファインプレーも多いんですよ。外野手としては理想的な走り方をしていますし」と高く評価する部分だ。走る時に体の上下動がなく、目線がぶれない。「忍者みたいな走りだよね」と、NPB入りへの大きな武器になると見ている。
挑む世界の、怖さを感じるできごとがあった。3月に日本ハムの本拠地エスコンフィールドで行われた教育リーグで、衝撃を受けた。オリックスからFA移籍した山崎福也投手の前に、バットを折られ遊ゴロ。「最初にあれを見られたのは良かったです。レベルが違う球でした。ボールを操っていたというか……。そこを打っていかないと」。
残してきた数字は、NPBの2軍でなら十分通用することを示している。ただ見なければならないのはその先だ。残り3か月ほどのシーズンで、どこまで進化できるか。(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
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