1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. スポーツ総合

衝撃V5田中希実を慢心させないケニア合宿の衝撃 だから今、思う「限界がわからないから知りたい」

THE ANSWER / 2024年6月29日 6時43分

女子1500メートル決勝で力走する田中希実【写真:奥井隆史】

■陸上日本選手権

 今夏のパリ五輪代表選考会を兼ねた陸上・トラック&フィールド種目の日本選手権第2日が28日、新潟・デンカビッグスワンスタジアムで行われた。女子1500メートル決勝では、24歳の田中希実(New Balance)が4分01秒44で優勝。参加標準記録4分02秒50を突破し、5000メートルに続く2種目めの代表権を掴み取った。夏にピークを合わせる中で叩き出した好記録。闘争本能を呼び起こしたケニア合宿の成果が出る結果となった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 胸を張って笑える1500メートルになった。田中は序盤から後続を突き放すレースを展開。日本人選手はついていけない。ペースメーカーとオープン参加のケニア選手2人と先頭を争った。自身の持つ日本記録更新も狙えるペースで残り250メートルに突入。5連覇を奪い取り、ケニア選手と笑顔で抱き合った。

 いつもは見ている側が苦しくなるほど、とにかく自分に厳しい24歳。でも、今回は自力で五輪切符を掴み、表情は和らいだ。

「いつもほどフラストレーションが溜まらない走り。自分の中で一歩を踏み出すための地固めができたのかな。タイムも何か少し不思議な感覚と言いますか、今まで凄く苦しんでいた数年のことを思うと、跳び上がって喜んでもいいぐらいの記録に感じます。

 今日はペースメーカーの前に出るぐらいのレースをしたいと思っていたけど、それほどの余裕が自分の中で持てなくて。もっと圧倒的な力がないとタイムが出ないんだなとも思いました。ペースメーカーを抜くくらいの気持ちでいかないと」

 素直に喜びつつも、やっぱり自分を戒めるような言葉は忘れない。

 21年東京五輪で8位入賞した1500メートルは、五輪準決勝で出した日本記録3分59秒19が自己ベスト。しかし、ピークではない6月に4分01秒台を出せたことが夏の躍進を期待させる。「東京五輪の3分台さえなければ自己ベスト。そこは喜んでいいのかな。3分台までの壁は薄くなったという感覚は掴めたと思う」

 圧巻の5連覇。どれだけ大差をつけても慢心しない。そこには中長距離の大国ケニアで過ごした期間が関連している。

 ランナーの聖地・イテンで猛者に揉まれ、これまでは練習自体に「挑戦」の意味合いがあった。だが、幾度も足を運ぶにつれて変化。「ケニアが自分の中でホームのようなものに変わってきている」。国内外のレースを転戦し、身につけた実践力、タフさがどう通用するのか確かめる場になってきた。


パリ五輪2種目めの内定を決め笑顔を見せる田中希実【写真:奥井隆史】

■伸びしろを感じさせた取材エリアの言葉「とにかく自分の限界を…」

 ケニアはなぜ強いのか。最近では周囲のランナーからケニア情報に興味を持たれる。「飛び込んでみたいという興味を喚起できているのは凄く嬉しい」と歓迎するが、ちょっぴり複雑な感情も。「相反する感情ですが、自分の中の“秘境の地”みたいな部分がいろんな方に知られ始めてちょっと寂しい」。それだけ、第一人者として道を切り拓いてきたということだ。

 日本選手権前まで励んだ合宿中はケニア選手権を生観戦。「まず、どう感じるのか」。東京五輪で1500メートル連覇を果たし、パリ切符も掴んだ世界記録保持者フェイス・キピエゴンの強さに目を奪われた。

「刺激というより衝撃が大きい。まだ自分の中で消化できていません。そういう選手と肩を並べて勝負をしたいと口にするのは簡単だけど、やっぱりまだまだ自分にとって厳しい世界が広がっているのを目の当たりにした。タイムや動画で見るより、生で見たからこそ、実際にこういう走りをする人が生身でいることを実感できたし、だから衝撃だったと思う。見に行ってよかった」

 自身はU20世界選手権を目指すジュニア選手たちと練習。「バチバチやるような感覚。自分の眠っていた感覚を取り戻せた」。先輩たちの背中を無我夢中で追いかけた高校時代に似ていた。帰国したら再びたった一人で走る日々。しかし、アフリカで養った“争い”の嗅覚は日本選手権本番で蘇った。

「ケニアで練習してきた分、今日はケニア選手と野生の走りができることを楽しみながら走れた。(オープン参加を含む2人に)揉まれながら走れて凄く幸せなレースだったと思います。

 いつもなら外国人選手と走る時に少し焦ってしまったり、怖さが生まれてきてしまうのですが、逆に今回は直近までケニアで練習したり、バチバチのケニア人同士のレースを生で見たりしていたので、今日は抵抗がなかった。ケニアでの経験をここでもできることが凄く楽しみですし、普段ケニアで練習してきたままでいられることが嬉しかったです」

 29日に800メートル予選と5000メートル決勝、30日に800メートル決勝が行われる。5000メートルも勝てば3連覇(4度目)&3年連続の2冠だ。「自分の中でピリピリするだけの日本選手権じゃなく、ちゃんと楽しいと思いながら、3種目を走るからこそ得られる感触を改めて感じながら、あと2日間を過ごしたい。チャレンジャーの気持ちでいられる」。1500メートルの内定がさらに田中を強くする。

 数十人の報道陣でごった返した取材エリア。最後に残した言葉が伸びしろの大きさを示していた。

「目標をここだと決めるより、とにかく自分の限界を知りたい。限界がわからないから知りたい。そういった走りをパリ五輪でもしたい」(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください