100m高校生女王だった自分に勝利 海を渡り着実に進歩した御家瀬緑の胸中「不甲斐ないというか…」【陸上日本選手権】
THE ANSWER / 2024年6月29日 10時40分
■陸上日本選手権
今夏のパリ五輪代表選考会を兼ねた陸上・トラック&フィールド種目の日本選手権第2日が28日、新潟・デンカビッグスワンスタジアムで行われた。女子100メートル決勝では、23歳の御家瀬緑(住友電工)が11秒64(向かい風0.5メートル)の2位。高校3年以来5年ぶりの日本一はならなかったが、3週間前に当時の自己ベストを更新するなど大目標の世界大会出場へ着実に成長している。
レース直前の選手紹介では小さく微笑み、落ち着いていた。日本一決定戦のピストル音が響く。御家瀬は中盤で抜け出したが、最後は君嶋愛梨沙に突き放された。「まだまだだなっていう感じです。なかなか上手くいかない。技術が安定していない」。スタートから理想のフォームが崩れ、昨年に続く2位。高校3年だった2019年以来の優勝はならず、君嶋に3連覇を許した。
「まだ安定していないし、焦っているなと感じます。まだ自信がないんだなと。全く目標には届いていないし、不甲斐ないというか納得できていない。(3週間前に)自己ベストは出せたけど、まだ技術を大きい大会で出せないのが課題。技術トレーニングをやって走りを固めていきたい」
2019年大会では、100メートルで29年ぶりの高校生女王に。福島千里に続く「逸材」と呼ばれ、一躍注目を浴びた。北海道・恵庭北高卒業後、上京して住友電工入り。20年3月から東京五輪を見据えて新生活を始めたが、コロナ禍の影響で練習施設が閉鎖されるなど苦労した。それでも殻を破り、22年日本選手権は19年9月に出した自己ベストに並ぶ11秒46をマークした。
御家瀬緑はレース後「まだまだだなっていう感じ」と語っていた【写真:奥井隆史】
■昨季は肉離れでシーズン後半を休養
男子100メートルで自己ベスト9秒98の小池祐貴ら所属先の先輩のもとで試行錯誤。昨季から米国に拠点を移した小池とともに、自身も海を渡る道を選んだ。だが、昨夏のアジア選手権で左太もも裏を肉離れ。苦難は続き、シーズン後半は休養に費やした。「去年は無理をしないで目先の結果を求めずにやってきた」。見据えたのは2025年東京世界陸上だ。
冬場は地道に筋力アップ。「体は強くなっている。パワーはついているのでそれを生かした効率のいい走りをすれば……」。海外転戦を重ね、今月7日には11秒37でついに自己ベストを更新。高校時代の自分に打ち勝った。「海外の格上選手とレースを重ねてリミットを外せる機会があったのは凄くよかったです」。質の高い指導を求め、今大会は直前まで米国で調整。勢いをもって日本一決定戦に臨んだ。
今夏のパリ五輪には届かないが、2028年ロサンゼルス五輪も見据える元高校生女王。「そこに向けて実力を上げて、参加標準記録が見えるところまで成長したい。東京世界陸上が一番の目標。焦らずいきつつ、間に合わせたい」。女子100メートルは、福島千里の日本記録11秒21が14年破られていない。一歩抜け出し、世界と戦うのは誰になるのか。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)
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