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初V・桑木志帆と歩き続けた66歳父の献身 脳梗塞で倒れ、痛み止めを飲み…記し続けた水色ノート

THE ANSWER / 2024年7月1日 10時33分

優勝トロフィーを手に、両親と撮影に応じる桑木志帆(中央)【写真:Getty Images】

■資生堂レディスで悲願のツアー初優勝

 女子ゴルフの国内ツアー・資生堂レディスは30日、神奈川・戸塚CC西C(6697ヤード、パー72)で最終日が開催された。1打差2位で出た桑木志帆(大和ハウス工業)が4バーディー、1ボギーの69で回り、通算11アンダー。ツアー初優勝を挙げた。悲願達成の裏には、毎試合18ホールを歩く父・正利さんの存在がある。「一番の味方」と語る2人は、ともに歩き続けてこの日を迎えた。(取材・文=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)

 ◇ ◇ ◇

 いつも一番近くで見届けてくれた父へ、遂に届けた。最終18番。ウイニングパットを沈めた桑木は2度ガッツポーズ。笑顔が弾けたが、最後まで争った堀琴音(ダイセル)と健闘を称え合うと、初優勝を実感。堪えきれず涙した。ホールアウト後、優勝インタビューでは声を震わせて両親への感謝を口にした。

「(初優勝を)まずは親に伝えたい。裕福な方ではないと思っているんですけど、その中でも一生懸命仕事をしてくれて、色々な会場に連れて行ってくれて、今もサポートしてくれてすごくありがたいと思いますし、何勝も重ねて親孝行をし続けたいと思います。ありがとう」

 4歳で始めたゴルフ。きっかけも正利さんだった。車で15分程度の練習場に連れて行ってもらったのが始まり。日に日に伸びる飛距離に取りつかれ、練習に明け暮れた。2021年6月、18歳でプロテストに一発合格。全国転戦だが正利さんも試合会場に足を運ぶ。66歳。暑い日も寒い日も、コースを回って娘のプレーを追い続けた。

 正利さんは2週前のニチレイレディス開幕前に転倒。両膝を負傷していたが、最高気温28度の暑さでも、痛み止めを飲んで歩き続けた。

■脳梗塞で倒れた父へ、口うるさく注意した娘との絆

「ジュニアの時からの癖じゃないですかね。それに仕事もあるんです」。

 そう言って見せてくれたのは、B5サイズの水色のキャンパスノート。正利さんがフリーハンドで各ホールの図面を作り、娘の打球方向などを確認して書き込む。その後に桑木が距離や番手を加え、マネジメント会社がデータ化している。

「何試合かやって振り返る感じ。ノートがあるのは大きい」と桑木が語るように、活躍に欠かせない大切な冊子。大本を作っている正利さんは「嫌がっても付いて歩かなければいけない」と言いつつ、ちょっぴり嬉しそうだ。

 そんな父がツアーに帯同できなかった時期がある。昨年、北海道での大会期間中、脳梗塞で倒れた。不安の中でも、ストイックな桑木は出場を続行。試合を終えて、病院に駆けつけた。

 いつも行動をしている父と21歳の娘。誕生日も父の日も、特別なことはしない。正利さんが「普段はしゃべらない」と表現する関係性も納得だが、この時ばかりは違った。「口うるさく『気を付けろ』と言われました」。親子の絆を確かに感じるひと時でもあった。

 幼い頃、厳しかった父の指導でゴルフが嫌になったこともある。でも、紆余曲折を経た桑木は今、「一番の味方」と感謝する。1年前にはPOの末に敗れた大会。今季は7度のトップ10入りも優勝には届かず、何度も悔しさを味わっていた。「(父は)早く初優勝してほしいなと思ってたと思う。一番はホッとしていますね」。最高のプレゼントを贈り、贈られた親子の挑戦はこの先も続いていく。(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)

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