春夏連覇の横浜高とも「重みが違った」 松坂世代の名コーチャーが驚く日産野球「そんなところまで…」
THE ANSWER / 2024年7月6日 7時43分
■横浜高OBの鳥海健次郎さん、日産野球部で受けた衝撃とは
社会人野球の頂点・都市対抗で2度の優勝経験がある日産自動車の野球部が、来季から復活する。2009年末の休部から16年ぶりの復活だ。アマチュア野球の頂点を争う世界でも屈指の緻密さを誇ったチームでは、どんな野球が行われていたのか。横浜高で松坂大輔投手とともにプレーし、1998年に甲子園で春夏連続優勝したチームで三塁コーチャーとして力を発揮した鳥海健次郎さんは、両チームの野球を経験している。神奈川のアマ球界を代表する2チームを比較してくれた。(取材・文=THE ANSWER編集部 羽鳥慶太)
日産自動車の社内では、元主将の伊藤祐樹氏の監督就任が決まり、選手集めや環境整備といった再始動への準備が進んでいる。強さと伝統を誇ったチームが休部したのは2009年の冬。企業チームがここまでの活動停止期間を乗り越えて、再び動き出すのは異例中の異例だ。
5月12日にはその一環として、横浜市にあった合宿所に眠っていた「お宝」の発掘が行われた。今はマンションになってしまった合宿所には、日産野球部の歴史を示すトロフィーや写真などが大量に保存されていた。これらは休部後、横須賀市の同社工場の一角にある体育館で長い眠りについていた。それらをキレイにして、新たな歴史につなげていこうというのだ。
そこに姿を見せたのが鳥海さんだ。横浜高3年だった1998年には、エース松坂大輔とともに甲子園で春夏連覇の喜びを味わった。鳥海さんは背番号「16」で、三塁コーチやマウンドへの伝令役として当時の渡辺元智監督に重宝された。関東学院大を経て、日産には2003年にマネジャーとして入社し、選手兼任で登録された。そこで強烈な思い出があるという。
「日産は常に、結果に対して厳しいんです。1球へのこだわりがすごくて……。例えば二塁けん制の練習です。ただ刺すんじゃない、なんのためにしているのかといえば、スタートを遅らせるため。じゃあそのためにどうするのかというところまで突き詰めるんです」
大量250個に及ぶトロフィーを発掘した日産OBたち。1球にこだわる野球が再スタートする【写真:羽鳥慶太】
■強い理由はここにあった「本当に1球1球ミーティングを…」
入社1年目、チームは激戦区の神奈川予選で敗れ、都市対抗本戦への出場を逃してしまう。そこで記憶に残っているミーティングがあった。
「本当に1球1球ミーティングするんです。なんでこう投げたのか、こう動いたのか。マネジャーとしては『なんでこういう手配をしたのか』というところまで。なぜ、なぜと分析して、突き詰めるんです。そんなところまで……と驚きましたよ」
鳥海さんが高校時代にプレーした横浜高も、小倉清一郎部長を中心にプレーの細かさには定評があった。相手校を徹底的に分析し、勝ちに結びつけていた。ただ鳥海さんに言わせれば、日産のそれは「重みが違った」という。
「野球でメシを食うという意味では、日産の方がはるかに重みがありました。高校野球も負けたら終わりのように思っていましたけど、チームは続いていきます。でも日産では、負けたら部がなくなる可能性があると思ってやっていましたから」。実際に2000年代の日産野球部は、負けたら部が消えてしまうという危機感が強かった。会社で進んでいた、カルロス・ゴーン氏による“コストカット”が社会的にも注目されていたころだ。
この宝探しでは、実に250個におよぶトロフィーや優勝旗、記念写真が発掘された。当時のマネジャーがつけていたスコアブックには、先攻後攻を決める試合前のジャンケンで何を出したか、勝ち負けはどうだったかまでが記されていた。勝ち負けの理由を徹底的に突き詰める日産野球の痕跡だ。当時を知る伊藤さんが監督となる新たなチームにも、その魂は確実に受け継がれる。
「鳥海」と大書されたプラカードも発掘された。スタンドの応援団が、応援の声出し指示をするのに使っていたものだ。軍港の街、横須賀にちなんだ応援道具のデッキブラシも出てきた。笑いながらプラカードを担いだ鳥海さんは「チームがなくなってからも、仲間がたくさんできたことは本当に仕事に役に立ちました」。神奈川のアマ球界にまた、伝統が刻まれていく。(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
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