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たった一人で勝利校の校歌を聞いた補助員の1年後 グラウンドで憧れを現実にする姿に見た“成長”

THE ANSWER / 2024年7月11日 7時3分

敗れた選手の気持ちもよく分かる薩美は大切に、晴れやかな表情で勝利の校歌を歌い上げた(中央)【写真:中戸川知世】

■THE ANSWER編集部カメラマン「夏の高校野球神奈川大会フォトコラム」

 第106回全国高校野球選手権の神奈川大会は、7日から熱戦を展開中。「THE ANSWER」では、168チームが参加するこの大会にカメラマンが密着し、フォトコラムを連日掲載していく。第3回で取り上げるのは、湘南工科大附の背番号「2」。薩美賢仁郎捕手(3年)だ。10日に藤沢市八部野球場で行われた2回戦で、県商工を4-1で下し3回戦へ。昨夏は補助員として、相手の校歌をカメラマン席から見守った球児が1年後、グラウンドに立って自分たちの校歌を歌った。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)

 喜びがあふれた表情で、校歌を歌った。試合中は、笑顔で投手の球を受ける背番号2の姿があった。グラウンドの左翼側にあるブルペンで「低く低く」、そう投手に声を掛けていたのが薩美。試合中、球を受けてはベンチへ戻り、声援を送る。最後に勝利の校歌を歌うまで、足にレガースをつけたままだった。

「かっこいいなって」。グラウンドで校歌を歌う姿が憧れだった。1年前はなかった背番号をつけてベンチ入り。夏の初戦を勝利で飾り、念願をかなえた。

 昨夏の姿を思い出す。実は1年ぶりの再会だった。

 横浜に3-13のコールドで敗れた4回戦では、試合運営の補助員としてブルペン捕手を務めた。薄暗いカメラマン席でたった一人、横浜の校歌を直立して聞いていた。敗退直後、グラウンドからは見えない場所。私以外、周囲には誰もいない。にもかかわらずだ。

 試合後、本人に聞くと「相手あってこその野球。最後まで見届けるのがスポーツ」と明かしてくれた。相手校へのリスペクトから取った行動。しかし、本心は「悔しい思いでいっぱい」だった。先輩の力になりきれなかった不甲斐なさで涙があふれ、最後の夏に懸ける想いに胸を打たれた。

 あれから1年。「負けた時の悔しさを知っているので、相手の分まで頑張ろうと」。敗れた選手の気持ちもよく分かる薩美はこの日、大切に、嬉しさが伝わるような晴れやかな表情で勝利の校歌を歌い上げた。


グラウンドの左翼側にあるブルペンで笑顔で投手の球を受ける薩美【写真:中戸川知世】

 自分の世代となり、秋春の大会ではスタメンマスクをかぶってきた。ただ守備の調子が上がりきらず、今大会はベンチスタート。悔しい気持ちももちろんある。しかし、見えないところでまっすぐ“筋を通す”姿勢は変わっていなかった。

 試合前のシートノックのタイミング、この日の薩美はブルペンにいた。「今日の先発(投手)は、自分が秋春と受けてきたので。一番良い所を引き出せれば」と最後までコンディションの把握に努め、チームの勝利に尽くそうとしていた。

 昨年と変わって、最上級生として引っ張っていくという自覚があふれ、どっしりと構えていた。高校2年生から3年生へ。伸び盛りのひとりの球児の成長を目の当たりにした。(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)

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