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那須川天心が置き去りにした実力懐疑論 外野の声は聞こえない、圧倒TKOを生んだ6か月の没頭

THE ANSWER / 2024年7月21日 6時53分

デビュー4連勝でコーナーにのぼった那須川天心【写真:高橋学】

■那須川天心がデビュー4連勝

 ボクシングのWBA世界バンタム級7位・那須川天心(帝拳)が20日、東京・両国国技館でボクシング転向4戦目として120ポンド(約54.43キロ)契約10回戦に臨み、同級4位ジョナサン・ロドリゲス(米国)に3回1分49秒TKO勝ちした。初めての世界ランカー対決で圧勝。課題克服を楽しみ、外野の声を振り切りながらデビュー4連勝で進化を見せた。戦績は25歳の那須川が4勝(2KO)、25歳のロドリゲスが17勝(7KO)3敗1分け。観衆は8000人。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 ◇ ◇ ◇

 契約体重、対戦相手のレベル……。何かと比較しなければ、実力を見極められない人間にはわからない。神童は確かな成長を見せつけた。

 最初の見せ場は2回終了間際だ。一瞬を逃さない。那須川は左を突き刺した。顎を貫き、よろめいた相手に猛ラッシュ。ゴングに逃げられたが、3回も同様に左ストレートを叩き込んだ。続けざまにボディー、アッパー、アッパー、右フック。最後はガードの上から再び左を突き刺した。ダウンでTKO勝ち。圧勝だ。

「やっとやりましたよ! やっとKOしましたよ! KOできないと言っていたのは誰ですか!? 誰ですか!?」

 1月の3戦目は3回終了TKO勝ちで世界ランカーを圧倒したが、相手の棄権による決着だった。今回は初回からジャブ、フック、ボディーと散りばめ、相手の攻撃は抜群のスピードで無効化。格闘技戦績を51戦全勝に伸ばした。「効かせたパンチの手応えはなかった。スコンと抜けた、倒した人がよく言う感じ」。感覚を知ったのもまた成長だ。

 元世界2階級制覇王者・粟生隆寛トレーナーも「冷静に状況判断をしてパンチを選んで打っている。ただ単に打つのではない」と評価。「相手に攻撃の隙を与えなかったのが凄くよかった。それは流れを切らなかったから。切れるとトップに行けば良くほどそこを狙われる。普通に合格点」と労った。

 日々の鍛錬が実る一戦だった。前戦からの6か月。「間(ま)」を支配する術を学ぶため、呼吸法を見直し、武道の動きを取り入れた。「相手が意識していない、見えないところで打つ」。複数の技術に目移りせず、一つひとつに集中。納得のいくまで向き合った。

 4戦目のテーマは「自分の世界で場を支配する」。これまでスピード、ステップワークを生かした遠距離を得意としていたが、近距離、中間距離の駆け引きも意識してスパーリング。パートナーにはバンタム級でWBO3位、IBF4位の24歳クリスチャン・メディナ(メキシコ)らを招聘してもらった。

「めちゃくちゃ強い。粟生さんには『スパーは試合より全然きついよ』と言われた。それを信じてみようかなと」

 バリバリのランカーとの日々は世界戦線のレベルを知るにはいい機会。それを乗り越えてほしいという陣営の願いもある。


パンチを打ち込む那須川【写真:高橋学】

■試合2週間前にぶつかった壁「逃げるのか、自分で越えていくのか」

 激闘型のスパー相手。「毎日、安心できないスパー。毎日、成長を感じる。試合以上の経験ができている」。ガードの上からパンチをもらい、グラブの革が擦れて目の下に傷ができた。「顔で売っているので台無しですね」。笑った横顔には充実感。実戦で課題を知れることを喜んだ。そんなスパー数は100回を軽くオーバー。ラウンドごとに遠近を使い分け、引き出しを増やしていった。

 陣営の本田明彦会長は言う。「練習のために(芸能関係の)多くのオファーを断っています。練習が楽しくて仕方ないから。ボクシングの奥深さが面白くて仕方ないようです」。拳を振り、没頭した。

 試合2週間前には壁にぶち当たった。イメージした動きができず、近~遠距離それぞれの技術を組み合わせられない。「なんでできないのかな」。迷いが生まれた。ただ、好きになったボクシングから逃げないと決めている。

「生きていて壁にぶち当たることは絶対にある。そこから逃げるのか、しっかりと突き詰めて自分で越えていくのか。それで人としての厚みの違いが出ると思う」

 仲間の手を借り、疲労が溜まる難しい時期に繰り返した修正。「バシッとハマった」。試合に間に合わせた。ロドリゲスは昨年11月に元WBA世界スーパーフライ級王者でWBA世界バンタム級4位だったカリド・ヤファイ(英国)に初回KO勝ち。前戦は敗れているとはいえ、死角からの右フックは脅威だった。

「こっちは頭の位置を真っすぐにせず揺らしたり、ワンツーをしなかったり。自分の動きをして相手を動かす。相手に合わせない。自分が場を支配する。進化を見せられたと思う」

 世界バンタム級王座はWBAに井上拓真、WBCに中谷潤人、IBFに西田凌佑、WBOに武居由樹が就き、日本人が独占中だ。那須川は同級でWBA7位、WBC12位、WBO10位。東洋太平洋は3位、WBOアジアパシフィックは1位につける。規定では日本、東洋太平洋など地域タイトルを獲らないと世界挑戦できない。

 ボクサーの体づくりの真っ最中。「飛び級はしない」。まだ4戦目、契約体重は仕方ない。ネット上の誰かが言う通り、世界王座まで成長が必要なのは事実。それは本人が最も理解している。

「型が完成したと思うと、進化が止まってしまう。皆さんも何かしら闘っていると思うんですよ。僕はボクシングという場所で闘っているだけ。その中で表に立って評価されるのは一瞬しかない。だけど、見られないところで日々頑張って、誰でもできることを誰にもできないところまでやる。それが本当に大事だと思います」

 努力も、成長もわかる人にはわかる。無用な外野の声を超速で置き去りにし、神童は高みに上っていく。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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