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スポーツを地域連携と社会課題解決のツールに…「オール青山スポーツコミュニティ」が目指すこと

THE ANSWER / 2024年7月22日 13時3分

地域との交流を生み出す「オール青山スポーツコミュニティ」の様子

■青山学院大・宮崎純一教授とラグビー元日本代表主将・菊谷崇氏が対談

 東京・渋谷で歴史を紡いできた青山学院が、スポーツを通じた地域社会との連携、社会課題の解決を目指し、活動している。2022年から始まった中学部、高等部、大学の教職員らを発起人とするボトムアッププロジェクトで「オール青山スポーツコミュニティ」と名付けられた。青山キャンパスと相模原キャンパスで子どもから高齢者まで幅広い層の人々が参加できるイベントやクラスを実施し、地域住民との交流を生み出している。

 この活動を牽引する一人が、青山学院大学経営学部マーケティング学科の宮崎純一教授だ。体育会サッカー部で監督・部長を歴任し、2017年にはユニバーシアード台北大会で男子日本代表監督を務めた。宮崎教授が築いたネットワークを生かし、これまでサッカーに関連する企画を中心に展開してきたが、今年5月から新たに小中学生を対象としたラグビークリニックがスタート。運営を担当するのは、(株)ブリングアップアスレチックソサエティー代表で元ラグビー日本代表主将の菊谷崇氏だ。

 社会のデジタル化が進み、人と人との直接的な繋がりが希薄になっていると言われる中、最近のスポーツ界で重要視されているのが「地域密着」というキーワード。スポーツは社会や地域にどのような価値をもたらすことができるのか、宮崎教授と菊谷氏が語り合った。

 ◇ ◇ ◇

宮崎「青山キャンパスには幼稚園から大学院までありますが、そこに通う人たちは通り過ぎたりすれ違ったりしても、なかなか一堂に会することがない。一方で『青山学院』というコミュニティの中でまとまってしまう傾向もあると感じていました。渋谷という場所柄、地域には外国人の方も数多くいらっしゃるし、外資系の会社もたくさんある。もっと言えば、LGBTQの方々が集まる文化がある街でもある。『オール青山スポーツコミュニティ』はそういうダイバーシティ社会でもある地域と繋がるツールの一つとして『スポーツ』を使ってみるのがいいのでは? というところから始まった活動なんです。社会が持つ課題を解決したり、地域との連携・貢献を図ったり、大学が持つ資源を社会や地域のために使いましょう、と」

菊谷「地域社会と繋がろうという考えは最近出てきたものなんですか?」

宮崎「学校を卒業し、社会に出れば様々な人たちと繋がる環境に置かれる。そうであれば、青山学院にいる間に地域コミュニティの人たちとコミュニケーションが取れたり、繋がれたりするようになった方がいいんじゃないか。そういう考え方になったのは、ここ3、4年のことだと思います」


小中学生対象のラグビークリニックは今年5月から始まった

■2022年から青山・相模原キャンパスでサッカーを中心にイベント開催

菊谷「オール青山スポーツコミュニティは2022年から本格的に活動するようになったそうですね」

宮崎「はい。2022年夏に、東京五輪でサッカー女子日本代表監督を務めた高倉麻子さんに協力していただき、子どもたちに女子サッカーを広めるためのイベントを開きました。そこからサッカーを中心に、年齢や性別、経験などを問わずにイベントをいくつか開催しました。

 障害者の方ともスポーツを介して繋がれるのでは、と高等部の生徒たちに障害者サッカーのクリニックを体験してもらったり、『キッズスポーツチャレンジ』というイベントでは大学の体育会で活動する学生に協力してもらい、子どもたちが色々なスポーツを体験する場を作ったり。一つのスポーツで行き詰まった時、スポーツをやめるのではなく進路変更したり、複数のスポーツに並行して取り組んだり、スポーツを続ける道を作ってもらえたらと」

菊谷「学生も巻き込みながらイベントを運営できるのがいいですね。単発イベントに加え、現在は定期開催されるクラスもあり、そこに僕たちブリングアップとして青山学院大学ラグビークリニックに参加させていただいています」

宮崎「月曜日の夜は年齢制限なし、スキルレベルや経験年数も関係なし、誰でも参加してください、という『グラスルーツスキルアップクラス』、火曜日は主に仕事を持つお母さんが参加する『JFAなでしこひろば』を開催。お子さんを一緒に連れてきたり、中学生の娘の送迎に来たお父さんが参加したり、楽しくやっています。木曜日は本気でサッカーをやりたい中高生が集まる『フットサルクラス』で、渋谷シティFCに所属するサッカー部OBが指導をしてくれる。金曜日には相模原キャンパスで『相模原スポーツ健康ひろば』と題してアリーナを開放。近隣の子どもたちやお母さん方が毎回30人くらい集まって、バドミントンやフットサル、バレーボールなどをして賑わっています。

 土曜日は青山キャンパスでゴールキーパーに特化した『GK教室・指導者研修』を開催したり、5月からは菊谷さんのラグビークリニックが始まったり。初回は中学生、6月の第2回は小学生が対象でしたが、参加した子どもたちはとても楽しんでいたようです。ありがとうございました!」

菊谷「こちらこそお声掛けいただき、ありがとうございました。中等部でラグビーを指導なさっている竹内隆太郎先生が、実際にブリングアップラグビーアカデミーを見学しに来てくださったんです。2022年にリーグワンが始まり、チーム参入要件の一つとして下部組織を持つことが加わった。そこで各チームが子どもを対象としたアカデミーを開校したので、関東圏だけでも10以上のアカデミーがありますが、竹内先生が各所を見て回った中で僕たちの方針に共感してくださったようです」

■「ラグビーやスポーツをしていれば人間が育つ」という考えではない

宮崎「ラグビーを通して、子どもたちのリーダーシップを刺激したり、コミュニケーション能力を高めたりすることが目的だと聞きました。興味深い」

菊谷「引退後の2018年に、日本代表で一緒にプレーした箕内拓郎さん、小野澤宏時さんと、アイスホッケー日本代表での監督経験を持つ鈴木貴人さんの4人でブリングアップを立ち上げ、ラグビーアカデミーとアイスホッケーアカデミーの運営を始めました。僕たちは『ラグビーやスポーツをしていれば人間が育つ』という考えではなく、『人間が育つ過程でラグビーボールを使う』という考え方。ラグビーのチームトークを通して『主体的に学ぶこと』『仲間と一緒に活動すること』を身に付けてほしい。その思いに共感してくださったのはうれしいですね」

宮崎「これまで2回クリニックを開催していただきましたが、いかがでしたか?」

菊谷「アカデミーは入会した子どもたちを継続的に指導するわけですが、今回の青山学院大学ラグビークリニックは都度募集なので、どういう状況で子どもたちがやってくるか分からない。初回の中学生は15人が参加し、運動会を終えた後にやってきた子、一日中ラグビーの練習をしてから来たという子、朝からずっと塾でしたという子、本当に色々で『これは僕らの腕の見せ所が半端ないな』と(笑)。いきなり動いたら怪我をするので、まずは子どもたちの足ではなくボールを動かすメニューから始め、徐々に運動強度を上げる形をとりました。2回目も似た状況でしたが、僕たちにとって魅力がある、やり甲斐のあるチャレンジだと感じています」

宮崎「菊谷さんにお会いしたかったのか、ラグビーの得意そうなお父さん方がグラウンドの周りにたくさん集まっていたのが印象的でした」

菊谷「ラグビー部OBでもある保護者の方が多く、部活動にも積極的に関わっていると聞きましたが、青山学院大学ラグビークリニックではグラウンド外からの見学をお願いしました。『どういう意図を持って練習をプランしているのか』『練習の中で発言力や理解力を伸ばしながら、仲間・チームでの共同問題解決に繋げていきます』という狙いも説明させていただいて」

宮崎「なるほど。説明を聞いていたから、練習の様子をしっかり見ようとしていたんですね。グラウンドの横にはハンドボールコートがあるので、保護者用に使ってもらってもいいかもしれません」

菊谷「僕らは指導者研修もやるので、保護者も楽しく学べる場も作りたいと考えています」

宮崎「それは面白いですね。保護者の中にはコーチとして教えている人もいるでしょうし、職場でチームをまとめたり指導したりするポジションに就く方もいるでしょうし、そういう学びの場を欲している可能性はありますよね。選手としても指導者としても実績のある菊谷さんに教えてもらったら、言葉が沁みるんじゃないかな」

■色々な人たちが集まり生まれる「予定調和ではない」面白さ

菊谷「実はラグビーには色々な種類があること、ご存じですか? 15人制や7人制以外にも車いす、ブラインド、デフ、ビーチ……本当に色々あるんです。そこで、僕の次に日本代表主将になった廣瀬俊朗と一緒に『One Rugby』という社団法人を立ち上げて、日本ラグビー協会が手をつけない、色々なラグビーが一丸となって取り組む普及活動もしています」

宮崎「『One Rugby』、いいネーミングですね」

菊谷「ありがとうございます。ただ、初回の体験イベントはカオスでした(笑)。笛を鳴らしても『あ、聞こえない人もいるんだ』。目で見て分かるように手を振ったら『あ、見えない人もいるんだ』。これはどうすればいいんだ?って」

宮崎「障害者サッカーの講習会でも、同じような状況に突き当たったことがあります」

菊谷「実際にやってみて初めて分かることもあるので、体験イベントの回数を重ねながら学び、改良を加えている状況です。設立して5年目になりますが、徐々に活動が認められ、リーグワンの試合前イベントや、6月には日本代表戦のファンイベントとしても開催されました」

宮崎「素晴らしい。今度ぜひ拝見したいですね」

菊谷「One Rugbyの活動もそうですが、オール青山スポーツコミュニティの活動も、スポーツを通して新たに社会や人との繋がりが生まれることが面白いですね」

宮崎「色々な人たちがコミュニティになってスポーツをすることで、予定調和ではない、ビックリすることばかり起こるなと実感しています(笑)。様々な考え方に触れることができたり、年代によって全然違う反応が面白かったり、子どもたちとシニア層が混じることで面白反応が生まれたり、本当にビックリすることだらけです」

菊谷「産みの苦しみはありながら、想像できない何かが生まれる面白さがありますね」

宮崎「オール青山スポーツコミュニティとしての活動は3年目ですが、この先も続けていく中で『小学生の時、相模原でバドミントンをやっていました』という子が入学してきたり、今度は活動を運営する側に加わったりしても面白いと思うんです。社会・地域という横の繋がり、年齢層的な縦の繋がりができて、もう少しすると時空をまたいだ繋がりができるかもしれない。そのきっかけとなる活動を、ぜひ一緒に続けていきましょう」

菊谷「宜しくお願いします!」(THE ANSWER編集部)

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