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インターハイは運動部だけのものじゃない 同世代全員にエールを…総合開会式に臨む高校生たちの青春

THE ANSWER / 2024年7月24日 11時3分

インハイ総合開会式リハーサル、運動部とは異なる形で青春の1ページを刻む高校生たちの姿を追った【写真:松橋晶子】

■「北部九州総体2024」総合開会式リハーサル、出演者それぞれのストーリー

 高校スポーツ最高峰の大会である全国高校総体(インターハイ)が、今年も7月21日のソフトボール女子を皮切りに開幕した。「ありがとうを強さに変えて 北部九州総体2024」と銘打たれた今大会は、福岡、佐賀、長崎、大分の会場を中心に全30競技を実施。8月20日まで各地で熱戦が繰り広げられる。

 全国から日本一を目指し、各競技のトップクラスの選手が集結するインターハイは「運動部の真夏の祭典」だが、その裏では大会の成功に向けて多くの同世代の高校生が汗を流し、選手たちにエールを送っている。

 7月27日に福岡の久留米アリーナで開催される総合開会式にも、そんな想いを抱く地元の高校生たちが出演する。「THE ANSWER」は6月22日に、同会場で行われたリハーサルを取材。25分間に及ぶ「公開演技」の成功へ向けて、運動部とは異なる形で青春の1ページを刻む高校生たちの姿を追った。(取材・文=THE ANSWER編集部・谷沢 直也)

 ◇ ◇ ◇

 メインアリーナの中央に懐かしい光景が広がる。誰もが座ったであろう学校の椅子が並んだ教室をイメージした空間で、高校生による等身大のストーリーが展開されていく。

 出演する演劇部員は約30名。地元・久留米市にある明善高校と久留米大学附設高校、そして福岡市のキャンパスで活動するクラーク記念国際高校による合同チームだ。いずれも九州大会や全国大会に出場する強豪で、ライバル関係にある3校が今回のインターハイ総合開会式のためだけに集結した。

「私3年生なので、最初『受験やばい!』と思って(笑)。でもこんな機会、本当になかなかないじゃないですか。普通に生きていたら二度とない機会だから、これを蹴って受験するのも違うな、やらない理由はないなと思って、どちらも頑張ることにしました」

 こう語ったのは、中心メンバーの1人である金多員さん(久留米大学附設高校3年)。昨年12月に演劇部を一度引退したが、同部の顧問で、今回のインターハイ公開演技の脚本や演出を手掛ける岡崎賢一郎教諭に声をかけられると、「やります」と即答した。

「うちの演劇部はもともと他校との交流が少なくて、こうやって一緒に練習をするのが初めてなんです。一緒にできて嬉しいなと感じる一方で、実はまだ名前が分からない人もいる。友だちの役をやる上で難しさもあるのですが、本番までにはみんなの名前を完璧に覚えますよ(笑)」

 3校合同だからこそ、スケジュールを合わせるのも一苦労で、全体練習はまだ数回しかできていないという。それでも主演を務める山田衣純さん(明善高校2年)は、普段とは異なる環境に難しさを感じつつも「最近、みんな1つのクラスという感じになってきています」と笑顔を見せながら、公開演技のストーリーについてこう続ける。

「私たち自身にも、みんなにもエールを送ろうというテーマがあります。今回の公開演技を見てくれた人を元気づけられるような、そんな舞台にしたいと思います」


休憩時間にはインターハイ出場選手へのエールメッセージを記入した【写真:松橋晶子】

■「努力してきた君は強い!!」シールに込めた選手たちへのエール

 運動部や文化部といったさまざまな垣根を越えて、今、全力で頑張っている誰かを応援する――。今回の公開演技の脚本には、そんなメッセージが込められているが、リハーサルが行われた久留米アリーナにはこんな光景も広がっていた。

 ナショナルスポンサーとしてインターハイを特別協賛する大塚製薬は今年、本大会の試合会場で選手たちに提供する「ポカリスエット」の紙コップに、メッセージ入りのシールを貼って渡す「エールコップ」の取り組みを実施する。総合開会式のリハーサル会場にも、シールにメッセージを記入する専用ブースを設置。練習に参加した高校生たちはインターハイに出場する選手たちに向けて、「君なら絶対できる!!」「努力してきた君は強い!!」「最後まで全力で!!」など、それぞれの想いを乗せてペンを走らせた。

「元運動部として、応援される嬉しさはとてもよく分かる。僕は小中学校でたくさん応援されてきたので、今度はその応援をみんなに返せたらなと思っています」

 主演の山田さんの相手役を務める大場勇吹さん(クラーク記念国際高校3年)は、母や姉がバレーボール選手だったスポーツ一家に生まれ、自身も中学校までは野球一筋。運動部の一員だったからこそ、インターハイの規模の大きさや出場する選手の凄さを十分に理解している。

「インターハイに来る人たちって全国の猛者ばかり。運動に全力を注いでいる人たちはかっこいいし、本当に尊敬します」

 そう言う大場さん自身、高校進学とともに入った演劇部で、今やその魅力にすっかり取りつかれている。「僕はもう演劇1本なんで」と将来進むべき道も見据えて情熱を注ぐ姿は、高校日本一を目指してインターハイに出場する選手たちと同様に美しい。


【写真:松橋晶子】

■「私たち、もの凄いのに出るんだ」最後の夏に加わった大舞台

 総合開会式の公開演技は、演劇部によるストーリーをメインに展開しながら、そこに2つの部活が登場人物として参加する。

 リハーサル会場で、足の裏から体の芯まで響くような迫力ある音を出していたのが和太鼓部だ。久留米筑水高校と三潴高校の計22人が、一糸乱れぬ演奏を披露する。

「最初は入ろうとは思っていなかったんですけど、入学後に先輩方が演奏しているのを見てかっこいいなって。もう一目惚れです」と語るのは、部長を務める河津みつばさん(久留米筑水高校3年)。中学校では陸上部に所属していたが、高校入学と同時に和太鼓に挑戦し、今ではチーム全体をまとめる役割を担う。

 久留米筑水高校の和太鼓部は例年、8月に地元で行われる「水の祭典」での演奏を最後に引退するが、今年はその前にインターハイ総合開会式という大きな舞台が用意され、河津さんも「私たち、もの凄いのに出るんだって、もうびっくり。純粋に嬉しいですね」と笑う。

 演奏する「久留米水鏡」(くるめみかがみ)という曲は、久留米筑水高校で県大会のために作られたものだが、そこに今回は三潴高校の部員が加わり、インターハイ総合開会式だけの特別な音色が奏でられる。

「和太鼓に親近感がわかない人も多いと思うので、皆さんに良さを知ってもらいたいし、演奏を通して選手の方にエールを届けられるように頑張りたいと思います」(河津さん)

 もう1つ、公開演技に出演者として登場するのが福岡講倫館高校ダンス部だ。6月に行われた「DANCE CLUB CHAMPIONSHIP」九州地方大会で優勝し、8月に東京で開催される決勝大会への出場が決定している強豪チームで、7月に別の2つの九州大会を戦う合間を縫ってインターハイ総合開会式に出演する。

 部長の松田芽奈さん(3年)、副部長の大濱佑直さん(3年)は、ともに5歳からダンスを始め、福岡講倫館高校への進学も強豪ダンス部の存在が決め手になった。

 24人が2分30秒の演技にすべてを注ぐが、インターハイ総合開会式に向けて取り組むのはRADWIMPSの曲「大団円」に合わせたダンス。松田さんは「部員数が多いなかで、みんなで合わせるユニゾン(複数人で同じ振り付けを踊ること)のところや、私たちは表情が強みだと思っているので、歌詞に合った表情をみんなに見てもらえたら」と見どころを語る。

 同世代アスリートの姿は「一生懸命、部員全員で頑張る姿がめっちゃいいなと思うし、(自分たちのことを)応援してくれたりもしているので、自分たちも応援したいなって思います」(大濱さん)と刺激を受けている。

 勝負の夏へ、全力でトレーニングに励む姿は同じ。インターハイに出場する選手たちへ、松田さんは「熱い気持ちでやってほしい。後悔しないように、選手のみんなでぶつかっていってほしいなって。それと『感謝』は絶対に忘れないでほしいです。対戦相手に対しても、プレーできることに対しても」とエールを送った。


【写真:松橋晶子】

■「運動部と縁がない」主役が発する、高校生全員へのメッセージ

「インターハイはスポーツの祭典ですが、やっぱり高校生のベースは教室だろうなと。椅子に座って学校での1日が始まり、そこで終わっていく。高校生のかけがえのない日常を切り取って描きました。主役はあくまでも高校生。インターハイに出る選手だろうがなかろうが、運動部だろうが文化部だろうが、みんな頑張っている。そんな生徒たちの生き生きとした姿を見せられればなと思っています」

 久留米大学附設高校の演劇部顧問である岡崎教諭は、公開演技の脚本に込めた想いをそう語る。

<ありがとうを強さに変えて。駆け上がれ、夢の舞台へ>

 劇中でのさまざまな高校生との交流を経て、主演を務める明善高校演劇部の山田さんが発するこのセリフで、公開演技はフィナーレを迎える。

 インターハイは間違いなく、全国から集まり日本一を目指す運動部の選手のための大会だ。しかしその舞台を作り、運営を支える側にも多くの高校生が関わり、それぞれが青春の1ページを刻んでいく。

「私は運動部と縁がない人生なんです。中学も家庭科部で、ずっと文化部でやってきたから、運動部の人のことはもう遠くからただ凄いなって、あんなに一生懸命にできて凄いなって思っていました。運動部のキラキラとした感じには、今もすごく勇気づけられるものがありますね」

 しかし、そんな自称「万年文化部」の山田さんが、インターハイ総合開会式の舞台の中央でスポットライトを浴び、誰よりもキラキラと輝きながらエールを送る。

<だから私は、私たちは、みんなに、私たち自身にエールを送ろう。ここから始まる、みんなの夢の舞台のために――>

 日本一を目指す選手たちの裏で、大会の成功に向けて汗を流す多くの高校生たちがいる。会場で飛び交う声援やメッセージにそれぞれの想いを込めて、今年も爽やかなエールに包まれるインターハイの暑い夏が始まった。(THE ANSWER編集部・谷沢 直也 / Naoya Tanizawa)

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