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超異例、下級生への主将交代で「見返してやる」 サイクル達成も気付かず…横浜・椎木卿五になかった“諦め”

THE ANSWER / 2024年7月25日 6時3分

サイクルヒットを放ち一塁で吠える横浜の椎木卿五【写真:中戸川知世】

■第106回全国高校野球選手権・神奈川大会

 第106回全国高校野球選手権の神奈川大会は24日、横浜スタジアムで決勝を行い、横浜は東海大相模に4-6で敗れ2年ぶりの甲子園出場を逃した。昨夏は慶応に逆転負けし、リベンジを誓った決勝の舞台。1年秋から主力として活躍し、最後の夏に挑んだ椎木卿五捕手(3年)はサイクル安打を達成するも、チームを甲子園に導くことはできなかった。昨秋からは主将を任されたが、5月に異例の下級生への交代。それでもチームの皆が信頼を寄せる“影の主将”として存在感は絶大だった。

 意地とプライドを見せ続けた。決勝の序盤は椎木の一人舞台。「3番・捕手」で先発すると、初回1死三塁から左中間へ先制の適時二塁打を放ち、3回には右越えソロでリードを2-0と広げた。7回の打席では右中間を破る三塁打。そしてチームが8回に東海大相模に逆転を許し、4-6とされた9回、2死無走者で打席が回ってきた。

 最後まで、諦めはなかった。中前へゴロで抜ける安打で出塁し、塁上で雄叫びを上げた。この一打でサイクル安打を達成したが、快記録を知ったのは試合後の取材。ひたすらに、甲子園だけを見ていたからだ。さらに為永皓内野手(2年)が左前打で続いたが、得点にはつながらず試合終了。「監督を甲子園に連れて行くという思いは一番強く持っていた。本当に甲子園に行きたかった」。試合後の椎木は、ゆっくりと言葉を絞り出した。

 忘れられない夏がスタート地点だった。1年前、慶応との決勝で9回に逆転3ランを浴び、甲子園出場を逃した。「1球で試合の流れが変わる」。捕手として野球の怖さを痛感し、一段と意識を高く取り組んできた。夏の敗退後は体づくりにも目の色を変え取り組んだ。目標体重を85キロに設定しみごと到達。77キロだった昨夏から大幅増を果たした。


3回にソロ本塁打を放ちガッツポーズする椎木【写真:中戸川知世】

■異例の下級生への主将交代…本音は「見返してやる」

 新チーム発足後、椎木が託された役割は主将。しかし、準決勝で東海大相模に敗れた春季県大会後の5月、全体ミーティングで告げられたのは主将交代だった。2年生の阿部葉太が主将を任される異例の事態。村田浩明監督から伝えられたのは「プレーに専念してほしい」という言葉だった。「ものすごく悔しかったけど、引きずっていても仕方ない。見返してやる」。キャプテンマークが外れても、姿は変わらなかった。目配り気配りは、チーム全体に及んだ。

 最後の夏にベンチ入りが叶わず、スタンドから全力で声援を送った仲間たちも、その存在を誇らしげに話す。ふだんは一発芸を披露するなどおちゃめな一面もあるというが、「オンオフの切り替えがすごい」と一目置かれている。さらにこの日の先発を任されるなど、バッテリーを組んできた奥村頼人投手(2年)も「一番頼りがいのある先輩。キャプテンは阿部かもしれないけど、チームを引っ張ってくれたのは椎木さん」と絶大な信頼を寄せている。

 中日やロッテでプレーした元プロ野球選手の父・匠さんに言わせれば「基本的にはおっとりしている子」。一方で最後の夏が近づくにつれ「カッコつけているのか分からないけど、『俺が打って勝たせる』とか言葉に責任感が出てきた」と変化も感じていた。高校ラストゲームとなったこの試合、何度も掲げた拳と、雄叫びを上げた気迫あふれる表情は、名門・横浜を背負った1年で強くなった証だった。

「チームで負けられない戦いをやってきて、勝負の緊張感を自分の中では楽しめた。この高校野球人生でよかった」と振り返る高校野球の2年半。今後はプロ志望届を提出する予定で、さらに上のステージでの活躍を思い描く。「この負けをきっかけに、さらに成長したい」。何度跳ね返されても立ち上がった高校野球。最後まで前を向き続けた経験は、次の舞台で何よりの強さとなる。(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)

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