東海大相模・原俊介監督が明かす“涙の裏側” 自身初の甲子園決めついに満面の笑み「演技といえど…」
THE ANSWER / 2024年7月25日 6時33分
■第106回全国高校野球選手権・神奈川大会
第106回全国高校野球選手権の神奈川大会は24日、横浜スタジアムで決勝を行い、東海大相模が6-4で横浜に逆転勝ち。2019年以来、5年ぶり12回目となる夏の甲子園出場を決めた。自身もOBで、2021年秋に就任した原俊介監督にとっては、3年目の世代でつかんだ自身初の甲子園出場だ。23日の準決勝では勝って涙を流したものの、この日の胴上げでは満面の笑み。時には“ウソ泣き”することもあるという演技派の一面で、選手を後押ししてきた。
1回、2回……。原監督は選手たちの手で5回胴上げされたものの、巨体は思うように宙を舞わなかった。大会前に6キロやせたというが、大会中に戻ってしまったという。さらに3回の“おかわり”を経て、ようやく終了。「重くて持ち上がるかなと……」という心配が的中する一方で「そっから見る景色はね、生徒の笑顔と、応援してくれたみんなと、なんかもう、味わったことのない景色でした」。まさに夢見心地だった。
神奈川の高校野球を代表する黄金カードが決勝で実現したとあり、横浜スタジアムのスタンドは上段のウイング席までファンで埋まった。その中で東海大相模は苦しい戦いを強いられる。初回に横浜の「3番・捕手」の椎木卿五(3年)の適時二塁打で先制され、3回にも椎木の右越えソロで0-2とリードを広げられた。一度は追いついたものの2-4と劣勢で、8回の攻撃を迎えた。
ここで打線が驚異のつながりを見せる。「1番・右翼」の三浦誠登(2年)が中前に2点適時打を運び同点とすると、さらに1死満塁から「3番・左翼」の中村龍之介内野手(2年)が左中間を破る二塁打を放ち2者が生還。この回5安打を集め4点を奪い6-4とすると、9回の横浜の攻撃をしのぎ、悲願の甲子園行きを決めた。
優勝の瞬間、マウンドに駆け寄り歓喜する東海大相模ナイン【写真:中戸川知世】
■準決勝、決勝と連続で逆転勝ちできた理由「それが何より尊い」
6-4というスコアは、23日に向上と戦った準決勝と一緒。8回に逆転したところまで同じだ。2日続けての粘り腰は、決して偶然ではない。「やはり昨日のゲームで、生徒自身が強くなり、私も強くなったんじゃないかと。それで今日に臨めたのが逆転を生み出したんじゃないか」と原監督。準決勝の試合後には、勝ったにもかかわらず涙を流したのを振り返り「昨日はヤバいと思いました。うわ、やられると思った瞬間がありました。それを跳ね返してくれたのは生徒」。選手たちの成長スピードには、驚かされてばかりだという。
「たった2年3か月しかない高校野球です。“夢中”という言葉がありますが、まさに夢の中で彼らは一生懸命やっている。この一生懸命さが高校野球では大事なんじゃないか、それが何より尊いものだと思います」
その一生懸命な空気を引き出しているのが、原監督が時に見せる演技だ。この大会では勝っての涙が注目されたが、時には“わざと泣く”こともあるという。「たとえば春に、夏に向けてやろうという時は、ちょっとこう悔しさを出してもいい」。生徒の心を動かす一方で、過酷な監督業を乗り切るためのテクニックでもあった。
「負けたら切り替えないといけない。切り替えられない監督は難しい。やってみないとわからないと思いますが、他の人じゃ感じない心境がすごくある。これをひとりで処理しないといけないわけですよ。演技といえど、それで吹っ切れることもあるんですよ。そんな役者みたいなことはないんですが」
東海大相模のOBでもある原監督は、1995年のドラフト1位で巨人に入団。2006年限りで現役引退したのち、2016年から東海大静岡翔洋で監督に就任した。さらに2021年秋からは名門・東海大相模の監督に。前任は春夏通じて4度の甲子園優勝を誇る門馬敬治監督で「中々うまくいかなかったときは、周りからいろいろ言われることも多いですけど」と、プレッシャーも並大抵のものではなかった。もう涙はいらない。胴上げで見せた心からの笑顔で、甲子園に乗り込む。(THE ANSWER編集部)
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