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五輪で問われる「メダル至上主義」の是非 日本は47個予想も…語り継がれるのは「数ではなく、その中身」

THE ANSWER / 2024年7月26日 20時33分

パリ五輪、世界王者に惜しくも敗れたサッカーなでしこジャパン【写真:Getty Images】

■「シン・オリンピックのミカタ」#5 連載「OGGIのオリンピックの沼にハマって」第2回

 スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、4年に一度のスポーツの祭典だから五輪を観る人も、もっと楽しみ、もっと学べる“新たな見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値の理解が世の中に広がり、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

 今回は連載「OGGIのオリンピックの沼にハマって」。スポーツ新聞社の記者として昭和・平成・令和と、五輪を含めスポーツを40年追い続けた「OGGI」こと荻島弘一氏が“沼”のように深いオリンピックの魅力を独自の視点で連日発信する。

 ◇ ◇ ◇

 なでしこジャパンが初戦で敗れた。相手はW杯優勝チームとはいえ、その1次リーグで快勝しているスペイン。W杯の時は徹底した「弱者のサッカー」で勝ったが、今回は「主導権を握りたい」と臨んだ。かつて日本が世界を凌駕したパスサッカーで相手に上回られて敗れたが、正面から世界王者に挑んだのは素晴らしかった。「試合後感」はW杯以上だった。

 下を向くことなどないし、選手たちは向いていないはず。昨年のスペインは日本に敗れた後優勝したし、11年W杯の日本も1次リーグでイングランドに敗れながら優勝している。まだ1試合。そう、パリ五輪は開幕さえしていない。祭りは、これからなのだ。

「日本の金メダルはいくつ?」。五輪が近づくと、決まって同じことを聞かれる。「メダル至上主義」の是非が問われるようになり、メディアもメダル争いの焦点を絞りづらくなっている。それでも、多くの人の五輪での関心事は「メダル」。選手が頑張ってメダルを獲得すれば、最近はやりの言葉で言えば「元気がもらえる」。

 もちろん、多くの選手も金メダルやメダル獲得を目指す。家族や友人はもちろん、所属企業やスポンサー、さらに選手強化に使われる公金。選手たちは「支えてもらった感謝」を成績で表そうとする。「メダル至上」がいいとは思わないが、すべてを否定することもできない。

 では、いくつ? 日本チームは東京大会で過去最多27個の金メダルを獲得した。3年前の出来事だけに、再現を期待する人は多いだろうが、現実はそう甘くない。新型コロナ禍で行われた東京大会は、他の大会以上にホームのアドバンテージがあったはず。もちろん、目標は「前回以上」だろうし、そうなってほしいとは思うが、予想をするとすれば冷静な考えも必要だろう。

■グレースノートは日本47個を予想しているが…

 東京大会では、ホームの利を最大限に活用。選手たちが選手村の厳しい制限のもとで生活する中、村外のホテルに滞在し、普段使っているトレーニング施設で練習した日本選手も少なくない。出入国がストレスになる時期だったが、日本勢はそれとも無縁だった。心身ともにコンディションは海外の選手とは比べ物にならない。無観客で地元の声援を受けられなかったことを差し引いても、好成績は当然の結果だった。

 競技種目の違いもある。東京で金メダルを獲得した野球・ソフトボールと空手は今大会では実施されない。それだけでも3個減。金メダル9個を獲得した柔道も「出来すぎ」というのが正直なところだし、競泳など大会前から苦戦が伝えられる競技もある。

 もちろん、東京大会の巻き返しを狙う競技もあるし、東京以上の成績を残す競技もあるはず。競技によってはロシアの不在で順位が上がるものもありそうだ。JOCの「海外で行われた大会で最多だったアテネ(16個)を超える金20個」という目標は妥当なところ。アテネと比べてスケートボードやサーフィン、スポーツクライミング、さらにブレイキンなど日本が得意とする競技が増えていることも「海外大会最多」の後押しにはなる。

 米国のデータ会社「グレースノート」は五輪各大会の前にメダル予想を発表している。23日に発表された直前予想では、日本の金メダルは13個、総数は47個。東京大会で9個の金メダルを獲得した柔道を2個、金メダル有力とされる阿部詩を銀に予想するなど厳しめだが、個数だけを見るとこれが意外なほどよく当たる。

 東京大会直前の同社の予想は金26個、総数60個。正直、少し甘めではと思ったが、実際には金27個、総数58個とほぼ的中。16年リオデジャネイロ五輪の時は金14個、総数36個の予想で、実際は金13個、総数41個でかなり近い数字だった。同社の数字は世界選手権や選考会の成績などで出しているというが、冷静に考えれば、金12~15個、総数40個代後半というところか。

 ただ、五輪はメダルの数だけではない。92年バルセロナ大会の金メダルは3個。戦後では52年ヘルシンキ大会の1個に続いて少なかった。それでも「今まで生きてた中で」の14歳の競泳岩崎恭子、ケガから奇跡の優勝を果たした「昭和の三四郎」柔道の古賀稔彦、古賀を献身的に支えて自らも頂点に立った柔道の吉田秀彦、その活躍は今も語り継がれる。数ではなく、その中身。金メダル獲得の前や後のドラマだ。

 今大会も多くの金メダリストが誕生するし、多くの選手の胸に輝く金メダルを見たい。そして、メダル以上に後世まで語られるようなドラマを見せてほしい。世界最大のスポーツの祭典が、いよいよ開幕する。8月11日の閉幕まで、オリンピックの沼にどっぷりとはまりたい。(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

荻島 弘一
1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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