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隙なし最強米国に屈した女子バスケ日本の教訓 3P成功率40%超へ「それを実現させるには…」【渡邉拓馬の目】

THE ANSWER / 2024年7月30日 12時36分

バスケットボール女子日本代表【写真:ロイター】

■「シン・オリンピックのミカタ」#29 女子バスケットボール解説・渡邉拓馬

 スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、4年に一度のスポーツの祭典だから五輪を観る人も、もっと楽しみ、もっと学べる“新たな見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値の理解が世の中に広がり、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

 大会期間中、各競技のスペシャリストによる試合解説を随時展開する。今回は女子バスケットボール。1次リーグC組の初戦が29日に行われ、前回大会で銀メダルの快進撃を演じた世界ランク9位の日本が、同1位で五輪7連覇中の米国に76-102で完敗した。この試合を男子元日本代表・渡邉拓馬氏が分析する。世界最強軍団に屈したが、この試合からどんな教訓を得たのか。世界の強豪との戦いの鍵を挙げ、馬瓜エブリン・ステファニー姉妹の奮起に期待を寄せた。(構成=藤井 雅彦)

 ◇ ◇ ◇

 男子と女子のバスケットボールに競技性の違いはほとんどありません。ただ体格やスピード、運動能力にはどうしても差があるので、それがスケール感に表れてくる部分はあります。身体的な違いは、使用しているボールが男子は7号球なのに対して女子は6号球で、大きさと重さが異なる点に集約されていると思います。

 対世界という観点では、男子以上にサイズの面で難しさがあるかもしれません。この試合でもアメリカは日本よりも平均身長が11.6cm高く、最終的なリバウンド数も日本が27本だったのに対してアメリカは56本で、実に2倍以上の差がつきました。インサイド主体に攻めてくる相手を抑えきれず、オフェンスリバウンドからの二次攻撃を許してしまう展開は仕方ない部分でもあります。

 サイズだけの差なら封じる手もありますが、アメリカは選手個々のバスケットIQが高く、パス能力やキープ力にも秀でている。加えて、日本対策をしっかりと行ってきた点も見逃せません。日本は強みであるシューター陣を生かすためにフリーの選手を作りたかったのですが、アメリカはディフェンスのところでスイッチにしっかりと対応してきました。試合を通してオープンな状態で3Pシュートをほとんど打てなかったのが敗因の1つでしょう。

 アメリカは五輪7大会連続優勝中の絶対王者ですが、今大会の入りをすごく大切にしていた印象で、さらに研究や対策を施してきたあたりに日本をリスペクトしていたことがうかがえました。もともとの絶対能力に加えて、前回の東京五輪では決勝を戦った相手への警戒を怠らない。そうなると隙が見つけるのは難しかったのが正直なところです。

 前半は50-39と11点差で食らい付いていましたが、後半に入ってからは徐々に差が開いていきました。ビハインドの状況ではディフェンス時にプレッシャーをかけないと勝ち目はありませんが、しっかりと対応されたうえにフィジカル勝負を抑えきれずにチームファウルも増えていってしまうと難しくなる。

 インサイドでほとんど自由を与えてもらえなかったことでオフェンス全体が息詰まり、結果的にアウトサイドからの崩しに頼る形になってしまいました。3Pシュート39本中15本を決めて成功率38%は悪くない数字ですが、アメリカのような強豪チームを上回るには最低40%以上が必要になります。

■3P成功率40%を超えるには「インサイドの頑張り」

 それを実現させるには、インサイドの頑張りが欠かせません。アメリカ戦では馬瓜エブリン選手と馬瓜ステファニー選手の姉妹が本来のパフォーマンスを見せられなかった。彼女たちがピック&ロールから相手を引っ張り、仲間にオープンなショットを決めさせる展開を作らないと、山本麻衣選手や林咲希選手といった優れたシューター陣も良さを発揮できない。

 チームの生命線を生かすために、第2戦以降もインサイドでのパフォーマンスが重要になります。アメリカ戦では大会初戦ということで少なからず緊張もあったでしょうし、なかなか得点に絡めていないことも本人たちが一番理解しているはず。気持ちをしっかりと切り替えて、次のドイツ戦ではチームに活力をもたらすプレーを期待したいです。

 まだ大会は始まったばかりですし、アメリカはさすがの強さでした。予選リーグと決勝トーナメントでは同じ対戦でも試合の質は変わるので、この敗戦の教訓を次につなげることが何よりも重要。前回大会で銀メダルを獲得した事実があっても、彼女たちは謙虚な姿勢を忘れずに最後までプレーできていたので大丈夫です。

 宮崎早織選手や高田真希選手に笑顔が見られるなど、五輪を楽しんでいる雰囲気にも好感が持てます。男子でも八村塁選手や富永啓生選手は常に楽しそうにプレーしているように、緊迫した試合でも良い意味で余裕を持ってプレーできているのは日本の力が世界に近づいている証拠。僕たちの世代は必死に食らいつくのが精いっぱいで、どこか重苦しい雰囲気の中で戦っていた記憶があります。

 国の威信をかけて戦っている試合を楽しめるのは本当に素晴らしいことです。今までの試合やパフォーマンス、それと初戦のアメリカ戦を見るかぎり、予選突破の確率は高いはず。プレッシャーを楽しみながらエネルギーに変えて、再びメダル獲得を目指してもらいたいです。(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)

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