日本、金メダル世界1位 恒例の開幕メダルラッシュの裏に日程の妙 今大会は「少し内容が違う」
THE ANSWER / 2024年7月31日 18時12分
■「シン・オリンピックのミカタ」#36 「OGGIのオリンピックの沼にハマって」第7回
スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、4年に一度のスポーツの祭典だから五輪を観る人も、もっと楽しみ、もっと学べる“新たな見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値の理解が世の中に広がり、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。
今回は連載「OGGIのオリンピックの沼にハマって」。スポーツ新聞社の記者として昭和・平成・令和と、五輪を含めスポーツを40年追い続けた「OGGI」こと荻島弘一氏が“沼”のように深いオリンピックの魅力を独自の視点で連日発信する。
◇ ◇ ◇
日本選手のメダルラッシュが続く。30日までで金7個、獲得数の国別ランクで、米国や中国を抑えて1位だという。ただ、五輪序盤で日本がメダルを量産するのは恒例。日本の得意な競技が、前半に集中しているからだ。
前回の東京大会まで、日本が獲得したメダルは499個。最も獲得しているのが体操で金33個を含む103個、次ぐのが金48個の柔道で銀、銅を合わせて96個、3番目が金24個の競泳で83個。この3競技が大会序盤に行われるから、日本が開幕ダッシュするのは当然ともいえる。
五輪の日程は大会組織委員会が決める。有力選手がいる種目を序盤に持ってきたり、人気種目を観客動員が期待できる週末に実施したり。もっとも、IOCとの調整は必要で、競泳の前半と陸上の後半など大枠はほぼ決まっている。
64年東京大会では、新たに実施された柔道が終盤に行われた。「体操ニッポン」が金メダルを量産した体操も後半。バレーボール女子の「東洋の魔女」と合わせて、大会後半の金メダルラッシュで盛り上がった。
その後、体操が前半に移動し、柔道も92年バルセロナ大会から前半に固定された。日程が変わった背景には、日本の「力」もあったと言われる。五輪ムードを盛り上げ、テレビ視聴率を上げるために、メダル獲得が有力な競技を前半にまとめたわけだ。
92年大会以降、日本人の五輪の見方が固まった。前半は日本選手を応援し、後半は陸上100メートルなど世界のスーパースターに酔う。そんな「日本人にとっての五輪」が続いてきた。
■今大会のメダルラッシュは「少し内容が違う」
もっとも、今大会のメダルラッシュは少し内容が違う。前回東京大会からの新競技スケートボードのストリートで男女とも金メダル。フェンシングも個人種目で初の金メダルを獲得した。
さらに、総合馬術団体の銅メダルにも驚かされた。「初老ジャパン」の愛称も初めて知ったが、確かにスケートボード女子のお父さんたちの世代。32年ロサンゼルス大会金メダルの「バロン西」以来92年ぶりのメダル獲得だから、その偉業ぶりが分かる。
柔道の活躍は素晴らしい。前回東京大会の金メダル9個はホームアドバンテージもあったが、16年リオデジャネイロ大会の3個、12年ロンドン大会の1個と比べても躍進している。体操の団体も見事。大逆転での金メダル獲得は、日本中を沸かせた。
そんな有力競技とともに、メダル量産に貢献している競技があるのが今大会の特徴だ。すべての団体球技の予選を突破したように、どの競技でも日本勢が活躍している。パリで実施される32競技のうち、日本はテコンドーを除く31競技に出場。開催国枠などで全32競技に選手を出すフランスに次ぐ数字だ。
16年10月、当時のスポーツ庁鈴木大地長官が発表した競技力向上の国の支援方針「鈴木プラン」では、実績のある特定の競技だけでなく幅広く競技の競技力を上げることが「持続可能」な強化だとした。
単にメダルの数だけを目指すのであれば、有力な競技に資金を投入して強化すればいい。実際に、東京大会の前には「重点競技」に強化費も重点配分していた。ただ、東京大会以降も続く日本スポーツ界のことを考えれば、より幅広い競技が国際的に活躍し、子どもたちの選択肢が広がることも重要。タレント発掘、競技間の交流、強化支援の充実などの施策が、今大会で成果をみせているともいえる。
後半には総数で4位ながら金メダル数では柔道に次ぐレスリングもある。陸上にも期待できる。ブレイキンなど新しい競技も有力だ。前半のメダルラッシュが終盤まで続きそうなのが、今のチームジャパン。まだまだ、寝不足の日は続きそうだ。
【前回東京大会までの競技別メダル獲得数】
競技 金 銀 銅 計
(1)柔道 48 21 27 96
(2)レスリング 37 21 18 76
(3)体操 33 34 36 193
(4)競泳 24 27 32 83
(5)陸上 7 10 10 27
(6)バレーボール 3 3 3 9
(7)スケートボード 3 1 1 5
(8)ボクシング 3 0 5 8
(9)重量挙げ 2 3 10 15
(10)ソフトボール 2 1 1 4(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)
荻島 弘一
1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。
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