アルゼンチン混乱、今後の伏線になった日本バレーの配球 「相手も戦略練り直しに」殊勲は関田誠大【加藤陽一の目】
THE ANSWER / 2024年8月1日 9時18分
■「シン・オリンピックのミカタ」#37 男子バレーボール解説・加藤陽一
スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、4年に一度のスポーツの祭典だから五輪を観る人も、もっと楽しみ、もっと学べる“新たな見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値の理解が世の中に広がり、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。
大会期間中、各競技のスペシャリストによる試合解説を随時展開する。今回は男子バレーボール。31日、1次リーグC組が行われ、世界ランク5位の日本が同8位アルゼンチンに3-1(25-16、25-22、18-25、25-23)で勝利した。今大会初白星で1勝1敗。この試合を元日本代表主将・加藤陽一氏が分析する。見事に勝ち点3獲得となったが、その立役者にセッターの関田誠大を指名。「相手の嫌がるところへの配球が絶妙」と司令塔としての働きを高く評価した。(取材・構成=荻島 弘一)
◇ ◇ ◇
勝ち点3をとるために、3-0か3-1で勝てればと思っていましたが、期待していた通りの展開になりました。素晴らしかったのは、やはりセッターの関田選手。小野寺選手や山内選手のミドルを積極的に使い、クイックを中心にして攻撃に幅をもたせた。アルゼンチンの守りを混乱させた。見事なトス回し、攻撃の組み立てでした。
もちろん、関田選手にいいボールを返したレシーブも見事。初戦のドイツ戦では今ひとつだった高橋藍選手のサーブレシーブが改善されていました。この試合での安定感はリベロ並、いやそれ以上でした。正確なレシーブが、関田選手のテクニックをさらに引き出しました。
トスを上げる位置が絶妙でしたね。相手のサイドブロッカーを中央につり出せれば、石川選手らのサイドからの攻撃が有効になります。また、ミドルブロッカーがサイドに回れば、空いた中央からのバックアタックが効いてきます。自分で得点することは少ないセッターですが、相手の嫌がるところにトスを上げることで相手にプレッシャーをかけることができます。相手の嫌がるところへの配球が絶妙でした。
小野寺選手と山内選手も当たっていました。関田選手を信じてジャンプし、思い切り手をふる。そこに正確なトスがやってくるので、素晴らしいスパイクになります。石川選手や高橋藍選手ら他の攻撃陣は、ミドルの活躍でずいぶん楽になったと思います。
すべてを引き出したのは、やはり関田選手です。アルゼンチンは日本のミドルブロッカーの攻撃が少ないとみて、サイド攻撃に対してブロックを厚くしていました。2セット目からそれが効きだしてサイド攻撃が機能しなくなると、すぐに修正。ミドルブロッカーの攻撃を増やし、相手のブロックシステムを混乱させました。結果として、サイド攻撃が再び機能し始めたのです。
■東京五輪に比べて試合日程が空くことは「日本にとって有利に」
今日の試合を見て、これから対戦するチームもミドルブロッカーへのマークが必要だと思うはず。相手チームは日本に対する戦略や戦術をもう一度練り直さなければならなくなる。相手にとって、日本は厄介なチームになるわけです。
アルゼンチンはブロックが得意なチームですが、日本は8点に抑えました。初戦のドイツ戦では18点決められていましたから、いかにブロックを許さなかったかが分かります。アルゼンチンのセッター、デセッコ選手は世界的な名手で攻撃的なトス回しで知られています。ただ、この試合では関田選手の方が上。「セッター対決」でも勝っていました。
ブロックポイントが5点にとどまったことや、まだ大会に入り切れていない選手がいることなど課題はありますが、勝ち点3を獲得して4にしたことは大きい。これで、波に乗れるのではと期待します。
6チームずつ2組に分かれて5試合を戦った東京大会に比べて、今大会の1次リーグは3試合。次の試合までの時間があきます。相手を分析し、データをもとに戦略を立てるのがうまい日本にとっては、時間があることは有利に働くと思います。まずは、米国戦。準々決勝から先は、どこが勝ってもおかしくない試合が続きます。
世界から選ばれた12チームが、世界最高の戦略を駆使し、世界最高の技を競うのが五輪です。そこに日本代表がいることは、素晴らしいことだと思いますし、日本人にとっても誇らしい。テレビを通して五輪で戦う日本を応援できるのも、うれしいことです。
米国戦は未明の時間になりますが、多くの人に見てほしいし、応援してほしいですね。ポイントのたびに選手の顔がアップになり、その喜怒哀楽が見られるのがバレーボール。これほど、感情移入しやすい競技はないのでは。「推し」に声援を送るとともに、バレーボールの楽しさにも触れてほしい。パリでの素晴らしい試合を見ていて、心から思います。(THE ANSWER編集部)
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