女子バスケ日本3P不発の裏に…世界に練られる対策と研究「サイズ差を突かれる以上の要因」【渡邉拓馬の目】
THE ANSWER / 2024年8月1日 22時15分
■「シン・オリンピックのミカタ」#40 女子バスケットボール解説・渡邉拓馬
スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、4年に一度のスポーツの祭典だから五輪を観る人も、もっと楽しみ、もっと学べる“新たな見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値の理解が世の中に広がり、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。
大会期間中、各競技のスペシャリストによる試合解説を随時展開する。今回は女子バスケットボール。1次リーグC組第2戦が1日に行われ、世界ランク9位・日本は同19位ドイツに64-75で敗れた。米国戦に続き開幕2連敗。この試合を元日本代表・渡邉拓馬氏が分析。「走り勝つシューター軍団」を掲げるが、生命線の3ポイントシュート(3P)成功率は31.03%で不発に終わった。この背景にサイズ差を突かれる以上の課題があると渡邉氏を指摘した。その内容とは。(構成=藤井 雅彦)
◇ ◇ ◇
淡々としたテンポで時計の針だけが進み、日本がなかなか良さを出せずに終わった試合でした。宮崎早織選手の鋭いドライブや高田真希選手の3Pといった見せ場はあったものの、どれも単発で終わった印象は否めません。良いプレーが連続しなかったために良い時間帯を作れず、得点差が詰まらなかった。
いろいろな要素が重なって自分たちのリズムではありませんでした。選手たちには少なからず焦りがあったでしょうし、それはシュート成功率にも表れていたと思います。楽しむことを強調している恩塚亨ヘッドコーチに険しい表情が目立っていたのも気になりました。
相手のドイツは攻守ともにやるべきことが徹底されていて、前後半通じてしっかりとタスクを完遂していました。具体的には3Pを簡単に打たせないタイトなディフェンスと得意とするインサイドで攻め切るオフェンスです。平均身長では日本173.6cmに対してドイツ186.3cmと10cm以上も差があり、日本は高さのディスアドバンテージを埋めきれませんでした。
するとリズムを掴みきれない展開で、目に見えるミスが増えてしまった。ターンオーバーが多かったですし、普段なら決めているようなオープンな状態での3Pを落とす場面がありました。ディフェンスでもスイッチでのコミュニケーションに問題があってフリーな選手を作ってしまった。このレベルの相手にやってしまうと命取りになるようなミスと言わざるをえません。
■痛かった山本麻衣の不在
得点源である山本麻衣選手の不在も非常に痛かった。彼女は替えの見つけるのが難しいスコアラーですし、チャンスクリエイトの部分でも味方にフリーで3Pを打たせることのできる選手。相手のディフェンスを引きつけられる選手なので、オフェンス面でチーム全体に及ぼす影響は大きかったと思います。
初戦のアメリカ戦もそうだったように、インサイドがもう少し粘り強く戦えないと厳しい展開が長くなってしまいます。高田選手と赤穂ひまわり選手はアベレージ高くプレーできているので、あとは馬瓜エブリン選手と馬瓜ステファニー選手が本来の力を発揮できれば日本の時間帯を作りやすくなる。自分たちのパフォーマンスに納得していない表情をしている2人の奮起が待たれます。
サイズ差は突かれるのが仕方ない部分ですが、それ以上に研究と対策を練られているのが良さを出しきれていない要因でしょう。日本が世界のトップクラスに仲間入りしている証拠で名誉なことではありますが、超えていかなければいけない壁です。前回大会での銀メダル獲得がプレッシャーに変わって、知らず知らずのうちに硬さが出てしまっているのかもしれませんし、連続して結果を出すのは本当に難しいと痛感させられます。
苦しい状況ですが、まだ決勝トーナメント進出の可能性は残っています。3戦目で対戦するベルギーは世界ランキングで日本よりも上の6位と強豪だからこそ、思い切ったプレーでぶつかっていってほしい。山本選手の脳震とうの状態が気がかりですが、吉田亜沙美選手のようなベテラン選手もいますし、きっかけを作れる選手をスターターとして起用するのも有効かもしれません。とにかく迷いなくプレーしてほしい。
もしシュートが入らなくてもディフェンスのミスを減らして、自分たちの良さを出せるような展開を粘り強く作ることが大切です。五輪本番ではどのチームも強い気持ちで臨んでくるので勝つのは本当に難しい。でも、だからこそ勝利の価値は一層増していくはず。原点に戻って、自分たちのバスケットを楽しんでもらいたいです。(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)
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